「外交」カテゴリーアーカイブ

衛藤晟一補佐官、アメリカ批判の発言を撤回─安倍政権は対米追従を続けるのか

 平成26年2月16日、衛藤晟一首相補佐官は「ユーチューブ」に投稿した動画で、安倍晋三首相の靖国神社参拝に「失望」を表明した米政府を「むしろわれわれのほうが失望だ」と批判した。ところが、菅義偉官房長官は2月19日の記者会見で「政府の見解ではない」と述べ、衛藤氏に動画削除を命じた。その結果、衛藤補佐官は、「政府見解だと誤解を与える」として発言を撤回、動画も削除してしまった。
 2月8日のノート「百田尚樹氏をアメリカが『非常識だ』と批判─対米自立覚悟の時」で「いまこそ、戦後レジームからの脱却を目指す者は、アメリカからの圧力をはねのけて対米自立に突き進む覚悟を決めるときではなかろうか」と書いたが、結局安倍政権はアメリカからの批判を恐れて、対米追従を続けることになるのか。

アメリカは自主核武装阻止へ動くか─エネルギー基本計画で現行施策維持

 毎日新聞の報道で、政府が近く閣議決定するエネルギー基本計画で、プルトニウムの増殖と放射性廃棄物の減容化を目指す現行の施策を維持する案をまとめたことが、平成26年2月21日に分かった。
 アメリカはどう反応するだろうか。日本の自主核武装阻止のために圧力を強めるだろうか。平成26年1月27日のノート「安倍政権は、自主核武装の選択肢を放棄するのか」で書いた通り、アメリカが日本政府に対し、冷戦時代にアメリカなどが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが、共同通信の報道で1月26日に判明した。これは、アメリカの対日政策の転換である。藤野光太郎氏は、「PRESIDENT Online」(2014年2月20日)で次のように指摘している。
 〈これまで米側は日本側の「表向きは原発、裏は核兵器準備」という擬装を黙認してきた。だが、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を謳って米国から独立した軍備増強と右傾化に邁進するのであれば、米国としては日米関係を見直すことになる、というのが今回の通告であろう。もはや「偽装」は“公然の秘密”であり、米側は公認できないぞ、ということだ〉
 安倍政権は、アメリカからの圧力に屈することなく、自主核武装の選択肢を維持することができるだろうか。

東京裁判史観は在野の興亜論者の行為も否定した

 平成25年末の安倍首相の靖国参拝以来、東京裁判批判を許さないというアメリカの意志が明確になってきた。もはや、戦後レジームからの脱却を目指すためには、アメリカとの思想闘争は避けられなくなった。
 以下、『アジア英雄伝』の「はじめに」の関係箇所を引用する。

〈占領期のアメリカによる日本の言論統制の目的は、戦前の日本の行為を全て悪、連合国の行為を全て善とする、一方的な考え方を日本に浸透させることにあったのではなかろうか。日本政府の行為も、在野の興亜論者の行為も、アメリカに不都合なものは、悪とされたのである。
 この占領期に行われた言論統制は、徹底したものであった。昭和二〇(一九四五)年九月一〇日、GHQは「新聞報道取締方針」を出した。さらに、GHQは同年九月一九日に「プレス・コード(新聞規約)」を発令、一〇項目の禁止事項を明示して言論統制を強化しようとした。プレス・コードは一九四六年一月二四日付で、一般の出版物だけでなく、国会を含む官庁の出版物にも準用されている。 続きを読む 東京裁判史観は在野の興亜論者の行為も否定した

百田尚樹氏をアメリカが「非常識だ」と批判─対米自立覚悟の時

 2014年2月8日の共同通信の報道によると、百田尚樹氏が都知事選応援演説で、アメリカによる東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」とした上で、東京裁判を批判したことについて、同日、在日米大使館報道担当官は「非常識だ」と批判した。これは、アメリカ政府の公式の統一見解としている。
「安倍首相は戦後レジームからの脱却を断念?─対米自立派と対米追従派の分岐」(2014年1月31日)で、「日本が戦後レジームから脱却することをアメリカは許さない」というメッセージが、再び強く発信されようとしているのだろうかと書いたが、もはやそれは確実と見なければならない。
いまこそ、戦後レジームからの脱却を目指す者は、アメリカからの圧力をはねのけて対米自立に突き進む覚悟を決めるときではなかろうか。

安倍首相は戦後レジームからの脱却を断念?─対米自立派と対米追従派の分岐

「日本が戦後レジームから脱却することをアメリカは許さない」というメッセージが、再び強く発信されようとしているのか。「強い日本」を望む勢力がアメリカにも存在するのだと淡い期待を抱くことは、もはや無理だということなのか。
安倍政権は、アメリカとの摩擦を覚悟した上で、戦後レジームからの脱却に突き進むのか、アメリカとの摩擦を避けて戦後体制の継続に甘んじるのか。
平成25年末の安倍首相の靖国参拝に対して、アメリカは「失望」したと表明したが、CSISパシフィック・フォーラム事務局長のブラッド・グロサーマン氏の発言は、正面から安倍政権の姿勢にNOを突き付けたものだ。
『東洋経済オンライン』(2014年1月28日)に載ったインタビューの中で、グロサーマン氏は次のように語っている。
「安倍首相は東京裁判(極東国際軍事裁判)判決や憲法など、戦後秩序の見直しに狙いを定めている。米国はその裁判に多大の責任を負い、憲法にも特大の役割を担ってきた。そのため安倍首相の挑戦は日米関係を政治化させることになる。それは日米関係および安全保障同盟のあり方についての議論にも変換を迫るものだ。明らかに米国を安倍首相の議論とは反対の立場に立たせることになる。
安倍首相の立論は、その根底において、戦後レジームの合法性について問題を提起している。安倍首相や閣僚、さらに彼の政治的支持者たちは、日本における戦後レジームの妥当性をどの程度まで信じているのか。
日本の人々がそういう疑問を呈するのは結構だが、それは国論を統一するというよりも、分裂させる可能性があるということを理解しておくべきだ。その議論に米国が引き込まれる度合いにもよるが、日米関係は非常に混乱することになる」
こうしたシグナルに直面した安倍政権は、戦後レジームからの脱却を断念するのか。
すでに、安倍首相を支持してきた保守層が、東京都知事選で、安倍首相が推す舛添要一氏に挑む田母神俊雄氏を熱烈に支持し、「戦後レジームからの脱却が東京から始まる!」と叫んでいる。
いずれにせよ、安倍首相の靖国参拝以来のアメリカの対日シグナルは、対米追従派と対米自立派の分極化を早めることになるだろう。

内田樹氏「安倍政権は一気に崩壊する可能性があります」

 4月に予定されているオバマ大統領の来日が、国賓待遇ではなく、宮中晩餐会も行われない方向であることが、1月20日、JNNの取材で明らかになった。安倍総理の靖国参拝の影響か。

 『月刊日本』2月号(1月22日発売)のインタビュー記事で内田樹氏は次のように語っている。
〈── アメリカの制止を無視して靖国に参拝した安倍首相は、これまでの路線を変えたということですか。
内田 安倍首相の変化に注目すべきです。昨年、安倍首相はアメリカの指示で村山談話見直しを撤回しました。それは安倍氏には極めて不本意なことでした。だが、今や安倍首相は全能感の中にあるようです。現在の安倍氏と、昨年5月の安倍氏は全くの別人です。
 年末の靖国参拝は、「そちらの要請は受け入れたのだから、あとは好きなようにやらせてもらうぜ」という意志表示だと見るべきです。参拝の直前に、沖縄の仲井真弘多知事は唐突に、普天間基地移設に向けた名護市辺野古沿岸部の埋め立てにゴーサインを出しました。県内の支持を失う覚悟で知事は決断したわけですから、そうとう強圧的な手段を使って知事を動かしたのだと思います。とにかくこの「手みやげ」をアメリカに与えておいて、いわばバーターとしてアメリカのいやがる靖国参拝を強行した。 続きを読む 内田樹氏「安倍政権は一気に崩壊する可能性があります」

今こそ興亜論に目覚めよ!─『大東亜論 巨傑誕生篇』刊行の意義

 年明け早々に、小林よしのり氏の『ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇』を入手、一気に読んだ。
 戦後の言論空間で封印された興亜論、大亜細亜主義思想を漫画にした意義は極めて大きい。特に、不平等条約に反対して命を捨てた来島恒喜烈士の壮絶な生きざまは、史実に基づきつつ、巧みなイマジネーションをも駆使して描かれていると感じた。頭山満翁についても同様だ。
 若い世代の人が本書をまず読み、この問題に関心を抱くことを期待する。

『愛媛新聞』、「日米地位協定の見直しは急務」と

 2013年8月5日、米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)所属の救難ヘリ・HH60ペイブホークが、米海兵隊キャンプ・ハンセン(同県宜野座村にまたがる区域)で墜落・炎上した事件について、『愛媛新聞』2013年8月8日付社説は、「米軍ヘリ墜落 日米地位協定見直しが急務だ」と題して、次のように書いた。
 「今回も、県警や消防は基地敷地内への立ち入りすら許されていない。沖縄県民をはじめ、国民の一層の不信と反発を招くのは必至だ。日米地位協定の見直しは急務。議論に背を向けてはならない」

山下英次氏「東アジア共同体の建設を通じて、日本の真の意味での独立を実現していく」(『東アジア共同体白書2010』収録)

 2010年3月17日に開催された東アジア共同体に関する討論会での山下英次氏の発言が、たちばな出版から刊行された『東アジア共同体白書2010』に収められている。ここで山下氏は次のように語っている。
「アメリカとの関係というのは重要ですけれども、いつまでもいまのような日米関係を続けるべきかどうか、深く考えなければなりません。日米関係を絶対視し、それにしばられていると、いつまでたっても、日本人には、アジア地域統合の意味が分からないということになってしまいます。実際、ほとんど多くの日本人は、なぜアジア地域統合が必要なのか、まったく分かっていない。したがって、東アジア共同体評議会の文書で、目的をもう少しはっきり書く必要があるのではないでしょうか。…… 続きを読む 山下英次氏「東アジア共同体の建設を通じて、日本の真の意味での独立を実現していく」(『東アジア共同体白書2010』収録)