2010年3月17日に開催された東アジア共同体に関する討論会での山下英次氏の発言が、たちばな出版から刊行された『東アジア共同体白書2010』に収められている。ここで山下氏は次のように語っている。
「アメリカとの関係というのは重要ですけれども、いつまでもいまのような日米関係を続けるべきかどうか、深く考えなければなりません。日米関係を絶対視し、それにしばられていると、いつまでたっても、日本人には、アジア地域統合の意味が分からないということになってしまいます。実際、ほとんど多くの日本人は、なぜアジア地域統合が必要なのか、まったく分かっていない。したがって、東アジア共同体評議会の文書で、目的をもう少しはっきり書く必要があるのではないでしょうか。……東アジア共同体の建設を通じて、日本の真の意味での独立を実現していく、ということではないかと考えます。……そもそも、日本の安全保障のあり方自体が、日米同盟すなわち国際条約を大前提にしているわけですが、私は、それは非常に危うい態勢であると考えます。一国の安全保障政策として、このような形のものはそもそもあり得ないはずです。国際条約というのは、そもそも守られなかった歴史なのですから。主要国の中で、これまで国際条約を一回も破ったことがない国など、おそらく一つも存在しないでしょう。アジア地域統合を、日本がこれまでのようないわばフィクションの上に構築されている安全保障政策から抜け出るための極めて重要なツールとして考えるべきだと私は考えます。……最後になりますが、地域統合を日本の国家戦略として位置づけるかどうかについてですが、私は可能だと思います。すでに、私は、『月刊日本』の二〇〇九年十二月号に、「東アジア共同体構想こそ日本の長期的国家戦略だ」というタイトルの文章を書いて、私なりに、東アジア共同体の日本にとっての長期的な意義を明確に示しています」