徳川義直『軍書合鑑』(名古屋市蓬左文庫所蔵)

 尾張藩は徳川御三家筆頭であり、明治維新に至る幕末の最終局面で幕府側についてもおかしくはなかった。ところが尾張藩は最終的に新政府側についた。この決断の謎を解くカギが、初代藩主・徳川義直(敬公)が『軍書合鑑』の末尾に書いた「王命に依って催さるる事」である。
 事あらば、将軍の臣下ではなく天皇の臣下として責務を果たすべきことを強調したものであり、「仮にも朝廷に向うて弓を引く事ある可からず」と解釈されてきた。この遺訓は第四代藩主・吉通によって明文化され、その後尾張藩で脈々と継承された。

 『軍書合鑑』は名古屋市蓬左文庫に所蔵されている。

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