「日本の自立」カテゴリーアーカイブ

百田尚樹氏をアメリカが「非常識だ」と批判─対米自立覚悟の時

 2014年2月8日の共同通信の報道によると、百田尚樹氏が都知事選応援演説で、アメリカによる東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」とした上で、東京裁判を批判したことについて、同日、在日米大使館報道担当官は「非常識だ」と批判した。これは、アメリカ政府の公式の統一見解としている。
「安倍首相は戦後レジームからの脱却を断念?─対米自立派と対米追従派の分岐」(2014年1月31日)で、「日本が戦後レジームから脱却することをアメリカは許さない」というメッセージが、再び強く発信されようとしているのだろうかと書いたが、もはやそれは確実と見なければならない。
いまこそ、戦後レジームからの脱却を目指す者は、アメリカからの圧力をはねのけて対米自立に突き進む覚悟を決めるときではなかろうか。

忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか はじめに

はじめに
平成二十二年のクリスマスの日、漫画「タイガーマスク」の主人公の名義で、群馬県の児童相談所にランドセルが届けられた。これをきっかけに、全国で続々と施設などへランドセルや文房具などを贈る人々が現れた。この間、鳥取県琴浦町では大晦日から降り続いた雪によって、車千台が国道九号線に立ち往生した。このとき、付近の住民たちは「トイレ」という看板を作って家のトイレを開放したり、ありったけの米を炊き、おにぎりを作って配って回ったりしたという。
小泉政権時代に強まった新自由主義路線により、わが国の共同体は破壊され、互いに助け合って生きていくというわが国の美風が失われたと批判されてきたことを考えると、こうしたニュースはせめてもの救いと感じられる。
新自由主義路線は一旦頓挫したかに見えたが、いま環太平洋パートナーシップ協定(TPP)をめぐって、再び息を吹き返そうとしている。TPPは、決して第一次産業に限定された問題ではなく、アメリカの「年次改革要望書」による規制緩和要求と同様に、国民生活に直結する制度変更の危険性を孕んでいる。市場の拡大、経済効率、国際基準を旗印にして、再び規制緩和が叫ばれようとしている。しかし、こうした動きに対する警戒感が強まらないのは、わが国本来の経済観自体が過去の遺物として見失われているからではなかろうか。皇道経済論の発想を理解することは、わが国本来の経済観を再認識する契機となるだろう。
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安倍首相は戦後レジームからの脱却を断念?─対米自立派と対米追従派の分岐

「日本が戦後レジームから脱却することをアメリカは許さない」というメッセージが、再び強く発信されようとしているのか。「強い日本」を望む勢力がアメリカにも存在するのだと淡い期待を抱くことは、もはや無理だということなのか。
安倍政権は、アメリカとの摩擦を覚悟した上で、戦後レジームからの脱却に突き進むのか、アメリカとの摩擦を避けて戦後体制の継続に甘んじるのか。
平成25年末の安倍首相の靖国参拝に対して、アメリカは「失望」したと表明したが、CSISパシフィック・フォーラム事務局長のブラッド・グロサーマン氏の発言は、正面から安倍政権の姿勢にNOを突き付けたものだ。
『東洋経済オンライン』(2014年1月28日)に載ったインタビューの中で、グロサーマン氏は次のように語っている。
「安倍首相は東京裁判(極東国際軍事裁判)判決や憲法など、戦後秩序の見直しに狙いを定めている。米国はその裁判に多大の責任を負い、憲法にも特大の役割を担ってきた。そのため安倍首相の挑戦は日米関係を政治化させることになる。それは日米関係および安全保障同盟のあり方についての議論にも変換を迫るものだ。明らかに米国を安倍首相の議論とは反対の立場に立たせることになる。
安倍首相の立論は、その根底において、戦後レジームの合法性について問題を提起している。安倍首相や閣僚、さらに彼の政治的支持者たちは、日本における戦後レジームの妥当性をどの程度まで信じているのか。
日本の人々がそういう疑問を呈するのは結構だが、それは国論を統一するというよりも、分裂させる可能性があるということを理解しておくべきだ。その議論に米国が引き込まれる度合いにもよるが、日米関係は非常に混乱することになる」
こうしたシグナルに直面した安倍政権は、戦後レジームからの脱却を断念するのか。
すでに、安倍首相を支持してきた保守層が、東京都知事選で、安倍首相が推す舛添要一氏に挑む田母神俊雄氏を熱烈に支持し、「戦後レジームからの脱却が東京から始まる!」と叫んでいる。
いずれにせよ、安倍首相の靖国参拝以来のアメリカの対日シグナルは、対米追従派と対米自立派の分極化を早めることになるだろう。

「この都知事選挙の真の争点は戦略特区だと思います」「神州の泉」より

国家戦略特区に関して、「神州の泉」に掲載されたポッキー氏のコメントの一部を以下転載させていただきます。
〈私には小泉と安倍が対立しているようには見えません。
小泉の登場は争点を原発推進か反原発にすることだと思います。
しかし、この都知事選挙の真の争点は戦略特区だと思います。
すなわち、反原発票が宇都宮一択に流れるのを防ぐために、細川を担いだのではないかとみます。
舛添に入れようが、細川に入れようが、どちらも戦略特区を活用して構造改革路線であり、現安倍政権の新自由主義で規制緩和のグローバル化路線を強力に後押しするものです〉

安倍政権は、自主核武装の選択肢を放棄するのか


 アメリカが日本政府に対し、冷戦時代にアメリカなどが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが、共同通信の報道で1月26日に判明した。このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロ。
 すでに2013年5月に原子力規制委員会が、兵器級プルトニウムを生産できる高速増殖炉「もんじゅ」の使用停止命令を出していたが、2014年1月15日に同事務局は保守管理体制をさらに厳しく監視する必要があるとの報告書を規制委の定例会合に提出し、了承された。
 一方、1月8日にはアメリカのシンクタンク「核脅威削減評議会(NTI)」は、日本が過去4年間、イギリス、インド、パキスタンと並びプルトニウム保有量を増加させていると懸念を表明していた。
 安倍政権は、もんじゅを放棄し、このアメリカの要求に屈し、自主核武装の選択肢を放棄するのか。
 以下、2009年8月に書いた「アメリカは『もんじゅ』再稼働に沈黙を保つのか? 明日のアジア望見 第78回」(『月刊マレーシア』505号、2009年8月30日)を転載する。

 JR敦賀駅から車で約四十分。日本海に突き出た敦賀半島の北端に、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」はある。平成七年に起きたナトリウム漏れ事故で運転を停止していたが、再稼働に向けた準備が着々と進んでいる。
 「もんじゅ」は、発電しながら自ら燃料を生み出す「究極の原発」といわれる。原発の燃料となるウランのうち、燃えるウランは〇・七%に過ぎないが、「もんじゅ」は残りの燃えないウランを、燃えるプルトニウムに変えて燃料にできる。 続きを読む 安倍政権は、自主核武装の選択肢を放棄するのか

新国際経済秩序(NIEO)

グローバル企業による世界支配の動きが強まっている。TPPや国家戦略特区もその手段である。
いまこそ、各国の主権、伝統文化の維持という視点から、あるべき国際経済秩序を考えるときではないか。その際極めて示唆に富むのが、新国際経済秩序(NIEO) である。もともとNIEOは、先進国とグローバル企業の横暴に憤った途上国が結束を強め、国際経済システムの変革を求めてまとめた考え方。
1974年4月、「資源と開発に関する国連特別総会」(第6回特別総会)が開催され、「新国際経済秩序樹立に関する宣言」(Declaration on the Establishment of a New International Economic Order)と行動計画が採択された。

「新国際経済秩序樹立に関する宣言」
1、諸国家の主権の平等、全人民の自決、力による領土獲得の不承認、領土の不可分および他国の内政不干渉
2、公平を基礎とする国際共同体の全構成国の広範な協力
3、全国家が共通の関心を持っている世界的な経済問題を解決するにあたって、全国家間の平等の基礎の上に立った完全かつ効果的な参加 続きを読む 新国際経済秩序(NIEO)

佐々木実氏「国家戦略特区は『1%が99%を支配するための政治装置』だ」

『日刊ゲンダイ』(2014年1月21日付)「構造改革派が支配 竹中平蔵が牛耳る『国家戦略特区』の実態」に、佐々木実氏のコメントが載っている。以下、『月刊日本』2月号に掲載された佐々木氏インタビュー記事の一部を転載する。

〈いよいよ今年から国家戦略特区が動き出します。『市場と権力』(講談社)で竹中平蔵氏の実像に迫ったは、特区法の成立と特区諮問会議の設置によって構造改革派が政策決定を牛耳る仕組みができあがってしまったと警鐘を鳴らしています。特区の危険性について、佐々木氏に聞きました。

竹中平蔵氏の復活が意味するもの
── 国家戦略特区諮問会議の民間議員に竹中平蔵氏が就任しました。
佐々木 特区を実質的に主導してきたのが竹中氏であることは明白です。特区構想は、2013年5月10日に開催された「第1回国家戦略特区ワーキンググループ」から本格的に動き始めましたが、その1カ月ほど前の4月17日の産業競争力会議で、竹中氏が「立地競争力の強化に向けて」と題するペーパーを用意しました。そこには、「経済成長に直結する『アベノミクス戦略特区』(仮称)の推進」が打ち出されていたのです。
新藤義孝・地域活性化担当大臣が5月10日の会合のために用意した「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」というペーパーは、まさに竹中氏の主張に基づくものだったのです。新藤氏は、これまでとは次元の違う特区を創設し、総理主導の下、強力な実行体制を構築すると明記し、総理を長とし、民間有識者が参画する諮問会議の設置などを提案したのです。しかも、新藤氏が用意した資料には、参考として竹中氏の「アベノミクス戦略特区」構想がわざわざ添付されていたのです。 続きを読む 佐々木実氏「国家戦略特区は『1%が99%を支配するための政治装置』だ」

内田樹氏「安倍政権は一気に崩壊する可能性があります」

 4月に予定されているオバマ大統領の来日が、国賓待遇ではなく、宮中晩餐会も行われない方向であることが、1月20日、JNNの取材で明らかになった。安倍総理の靖国参拝の影響か。

 『月刊日本』2月号(1月22日発売)のインタビュー記事で内田樹氏は次のように語っている。
〈── アメリカの制止を無視して靖国に参拝した安倍首相は、これまでの路線を変えたということですか。
内田 安倍首相の変化に注目すべきです。昨年、安倍首相はアメリカの指示で村山談話見直しを撤回しました。それは安倍氏には極めて不本意なことでした。だが、今や安倍首相は全能感の中にあるようです。現在の安倍氏と、昨年5月の安倍氏は全くの別人です。
 年末の靖国参拝は、「そちらの要請は受け入れたのだから、あとは好きなようにやらせてもらうぜ」という意志表示だと見るべきです。参拝の直前に、沖縄の仲井真弘多知事は唐突に、普天間基地移設に向けた名護市辺野古沿岸部の埋め立てにゴーサインを出しました。県内の支持を失う覚悟で知事は決断したわけですから、そうとう強圧的な手段を使って知事を動かしたのだと思います。とにかくこの「手みやげ」をアメリカに与えておいて、いわばバーターとしてアメリカのいやがる靖国参拝を強行した。 続きを読む 内田樹氏「安倍政権は一気に崩壊する可能性があります」

電力自由化がもたらす悲劇

 脱原発を掲げて都知事選に立候補した細川護熙氏と、それを支援する小泉純一郎氏が話題になっているが、細川陣営の田中秀征氏は「電力自由化・原発ゼロ」を掲げるみんなの党を支持してきた人物。
 いま、電力自由化に向けた動きが着実に進められていることに注意すべきなのだ。2014年1月15日、茂木経済産業大臣は、政府が進める電力システム改革について、「限られた供給の中で効率的な電力消費が行われる社会を作りたい」と述べ、政府として新規参入を促し、電力小売りの全面自由化を推し進める考えを示した。
 電力自由化がいかなる状況を招くかはすでに先進国で実証済みだ。英米の電力自由化の問題点を取材したシャロン・ビーダー氏は『電力自由化という壮大な詐欺─誰が規制緩和を望んだか』(草思社、2006年)で次のように指摘している。
 
 「電力自由化が実施された地域の大半では、家庭用、小企業用の電気料金が上がり、それも劇的な値上げとなることもしばしばあった。なかでも、取引市場が整備され、有力な大手電力会社が多数存在する地域で市場操作がおこなわれており、日本でも、ひとたび取引市場が始動すれば、こうした現象が起こらないと考える理由はない。…自由化され、民営化された電カシステムのなかでは、世界的に見ても、サービスと信頼性が低下してきた。というのも、規制下にあった電力会社の負っていたサービス責任が、短期的な営利目標に取って代わられたからである。…競合する民間企業が達成できると思われた効率向上は、多くの場合、短期のコスト削減によってもたらされた。それには、サービスの質やレベルを落とすことも含まれており、より安い費用で同一レベルのサービスを提供するわけではなかった。サービスの料金を値上げすることで投資収益率を上げることもあった。しばしばコスト削減は、従業員にたいする報酬と労働条件の切り下げによって達成され、何千という電気労働者が解雇された。…コスト削減のもうひとつの安易な方法は、近視眼的ではあるものの、安全、保守管理、トレーニング、開発研究などにかかる費用を切りつめることである。古くなった設備でも、定期整備したり、故障が起こるまえに交換したりしない。その結果、事故や設備に関連した停電が増加したし、配送電網の保守点検と開発の計画立案と責任は市場優位性を与えられなかった」