「コンセッション方式」カテゴリーアーカイブ

「安倍政権はグローバル企業の奴隷か」

以下『月刊日本』平成26年9月号に載せた「安倍政権はグローバル企業の奴隷か」を転載する。

 
〈安倍政権の成長戦略に盛り込まれた法人税減税、「残業代ゼロ」制度、農業改革、混合診療拡大、水道などの公共サービスの民営化加速──などは、いずれもグローバル企業の利益拡大に結び付くものばかりだ。
 雇用、健康、安全など生命に深く関わる分野で国民を保護してきた法律を破壊して、新たな市場を形成し、グローバル企業の利益を拡大しようとしている。
 こうした新自由主義政策の旗を振っているのが、産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議、規制改革会議などだ。こうした会議には、グローバル企業の代弁者やそれに連なる財界人たちが多数送り込まれている。
 産業競争力会議には、秋山咲恵(サキコーポレーション)、岡素之(住友商事)、榊原定征(東レ)、坂根正弘(コマツ)、竹中平蔵(パソナグループ)、新浪剛史(ローソン)、長谷川閑史(武田薬品工業)、三木谷浩史(楽天)が民間議員として名を連ねている。 続きを読む 「安倍政権はグローバル企業の奴隷か」

NPO法人 万年野党の正体─新自由主義者の圧力団体

 NPO法人 万年野党とはいったい何なのか。竹中平蔵、宮内義彦、髙橋洋一、八田達夫、八代尚宏といった名だたる新自由主義者が名を連ねている。モルガン・スタンレーMUFG証券㈱・チーフエコノミストのロバート・フェルドマンも入っている。
 活動内容として、「政策の監視と対案の提示」が挙げられているが、新自由主義に反する政策を監視し、さらなる新自由主義的対案を提示するということなのか。また、国会議員の評価をするというが、これまた新自由主義に忠実かどうかを尺度にして評価するということなのか。なぜわが国の国会議員が外国人に監視されなければいけないのか。
 まさに、万年野党の正体は竹中平蔵を中心とする新自由主義者の圧力団体である、といっていいだろう。
 5月26日に設立記念イベントを行ったというが、その場所がなんとスターライズタワー。ここはパソナが所有する施設だ。

水道民営化の危険性を考えるための映画

 
 『月刊日本』2014年7月号(6月21日発売)で、安倍政権が推進する水道民営化の危険性についての記事を作成するため、水道民営化に関わるDVDを2本観た。
 1本は、モード・バーロウとトニー・クラークによる告発本『「水」戦争の世紀』をベースとしたドキュメンタリー映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』。深刻化する水不足の状況からはじまり、水紛争にまで発展したボリビアの水道民営化や、水ビジネスに関わる利権を告発している。多くの証言が映画の主張に説得力を与えている。
 もう1本は、イシアル・ボジャイン監督の『ザ・ウォーター・ウォー』。新大陸を発見したコロンブスの映画を撮影するためにボリビアへ赴いた映画撮影クルーが、コチャバンバでの水紛争に遭遇するというストーリー。現在の水道民営化に対する抵抗運動が、スペインによる植民地支配に対する抵抗運動とオーバーラップして描かれる。欧米列強による支配が、形を変えつつもなお続いている現実を意識させられる。

『顔のない独裁者』が描く近未来─新自由主義の結末は地獄だ(『月刊日本』平成26年5月号)

以下、『月刊日本』平成26年5月号に掲載した「『顔のない独裁者』が描く近未来─新自由主義の結末は地獄だ」を転載する。

国民の統合を破壊する道州制
 3月28日、政府は国家戦略特区諮問会議を開き、国家戦略特区の第一弾として、東京都を中心とした東京圏、大阪府を中心とした関西圏、沖縄県、新潟市、兵庫県養父市、福岡市の6区域を指定した。東京圏は国際ビジネス、イノベーションの拠点、関西圏は医療などのイノベーション、チャレンジ人材支援の拠点とするという。
 この特区も、アメリカが推進するTPPも、グローバル企業の利益拡大こそが最優先されている。しかし、グローバル企業が理想とする社会は国民にとってはまさに地獄そのものである。新自由主義による「改革」を推し進めた後に到来する社会はどのようなものなのか、それを具体的に示してくれるのが、三橋貴明氏の企画・監修で、さかき漣氏が著した『顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い』(PHP研究所)が描く社会である。同書はフィクションだが、極めて具体的かつリアルにわが国の近未来が描き出されている。
 物語は、「顔のある独裁者」が支配する大エイジア連邦の一員となった日本が、抵抗組織「ライジングサン」のリーダー駒ヶ根覚人のもとに革命に成功し、日本を奪還したところからスタートする。駒ヶ根は圧倒的な国民支持を受けて総理に就任する。まず、駒ケ根政権は太平洋連合(Pacific Union=PU)への参加を決める。PUはTPPのような協定と考えていい。そして同政権は道州制を導入。日本は北海道、奥羽州、東京州、越陸州、東海州、中央日本州、瀬戸州、伊予州、筑紫琉球州の9道州に分けられ、それぞれが独立採算制を義務づけられた。道州制導入によって、各種公共サービスの権限は、中央政府から各道州政府に移管された。
 だが、この道州制導入が悲劇をもたらすことになる。それを象徴するのが本書にある「道州制が社会に浸透し、いつの間にか日本国民は他道州の住民について、同じ日本国民であることを忘れるようになっていた」という記述だ。
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悪魔の民営化 コンセッション方式

 平成26年4月9日に、大阪市は水道事業の民営化についての基本方針案を決定したが、『顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い』(三橋貴明氏企画・監修、さかき漣著)には、コンセッション方式(公共インフラの資産保有者は政府のままとし、運営権を民間の株式会社に委譲する方式)の危険性が見事に描き出されている。新自由主義の旗を振る竹中平蔵氏が次のように書いているのを思い出し、さらに恐ろしくなった。
 〈成長戦略のもう一つの柱は、インフラの運営権民間売却、いわゆるコンセッションだ。これについてもいま、実現の方向に向かっている。官が独占しているインフラ運営に民間が参入することで、サービスの中身が向上する。かつ少なくとも数十兆円といった大きな規模で改善に貢献することが期待される。
 コンセッション方式は、海外の主要国で一般に行われているにもかかわらず日本で極端に遅れてきた政策分野だ。例えば欧州の主要空港の多くは、いまや所有形態に関わりなく民間が運営している。オーストラリアの主要空港も、コンセッション方式で民間が運営する。米国でも、シカゴの有料道路の運営権を民間企業に売却し成功している事例が知られている。隣国韓国も、コンセッションに積極的だ。理論的に考えて、キャッシュフローを生むインフラについては、その流列の割引現在価値で、運営する権利を民間に売却することができるはずだ。道路、空港、上水道、下水道などが、コンセッションの対象となる。 続きを読む 悪魔の民営化 コンセッション方式