著者 |
タイトル |
出版社 |
刊行年 |
備考 |
佐藤信淵 |
『復古法概言』 |
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1845年刊行 |
(『日本経済大典』第19巻、啓明社、昭和4年) |
大国隆正 |
『本学挙要』 |
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1855年 |
(『日本思想大系 50』岩波書店、昭和48年) |
佐藤信淵 |
『経済要録』 |
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1859年刊行 |
(滝本誠一編纂『日本経済大典』第18巻、啓明社、昭和4年) |
福住正兄記 |
『二宮翁夜話』 |
報徳社 |
明治17-20年 |
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遠藤無水 |
『財産奉還論』 |
遠藤友四郎 |
大正8年 |
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水野満年 |
『現人神と日本』 |
霊響社 |
昭和5年 |
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長沢九一郎 |
『生産権奉還』 |
先進社 |
昭和7年 |
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永井了吉 |
『皇道経済概論』 |
日本主義評論社 |
昭和8年 |
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神野信一 |
『日本主義労働運動の真髄』 |
亜細亜協会出版部 |
昭和8年 |
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昭和神聖会 |
『皇道経済我観』 |
昭和神聖会 |
昭和9年 |
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作田荘一 |
『経済生活に於ける創造者としての国家』 |
日本文化協会 |
昭和10年 |
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栗原白嶺 |
『金銀為本経済の世界的行詰りと皇道経済』 |
青雲荘 |
昭和10年 |
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山口鋭之助 |
『世界驀進の皇道経済』 |
本学会 |
昭和13年 |
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難波田春夫 |
『国家と経済 第三巻』 |
日本評論社 |
昭和13年 |
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田辺宗英 |
『皇道経済の確立』 |
報国新報社 |
昭和13年 |
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田村謙治郎 |
『日本主義経済学』 |
東風閣東京事務所 |
昭15年 |
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石川興二 |
『新体制の指導原理』 |
有斐閣 |
昭15年 |
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古川義春 |
『報徳生活の実践 : 肇国の精神に基く勤労・分度・推譲』 |
少国民社 |
昭和17年 |
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皇道経済研究所 |
『日本主義労働』 |
目黒書店 |
昭和17年 |
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岡本広作 |
『日本主義経済新論』 |
増進堂 |
昭和19年 |
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茂木清吾 |
『皇道経済学』 |
文松堂書店 |
昭和19年 |
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田崎仁義 |
『皇道経済』 |
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(『史蹟叢談』大阪染料商壮年会、昭和19年) |
五 生きる力としての「みこと」意識
市場原理主義の信奉者たちは、競争原理によって社会は発展するのであり、競争のないところに進歩はないと主張する。確かに、社会主義的な平等分配の思想は、人間の意欲を奪いとるという欠陥があった。だが、一方で競争社会の弊害も無視できるものではない。そこで注目されるのが、「人との競争ではなく、自らの存在価値を高めようとすることによって生じる意欲こそが重要だ」と考える皇道経済論の発想である。「四、成長するための生産=『むすび』」で書いた宇宙の創造に参画という考え方が意識されるとき、人間の生きる力は大きく変化する。岡本廣作は、日本経済とは、日本国民全てが、生まれて生み、生まれて生みの生成発展の永遠飛躍の生命力である「むすび」の道に参じて、各人がその分に従って、そのつとめを尽くすことだという[一]。
一方、永井了吉は、「みこと」(一人一人の人間)が、それぞれの生命を最も充実させることが奉仕にほかならないとする。しかも、「みこと」それぞれが全宇宙過去未来に亘つて唯一無二の個性を持つことが、個性が尊貴である理由であり、その綜合によって全体としての大創造が可能だと説いた[二]。 続きを読む 忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 五/おわりに →
二、神からの贈り物と奉還思想
「君臣相親みて上下相愛」する国民共同体を裏付けるものは、わが国特有の所有の観念である。皇道経済論は、万物は全て天御中主神から発したとする宇宙観に根ざしている。皇道思想家として名高い今泉定助は、「斯く宇宙万有は、同一の中心根本より出でたる分派末梢であつて、中心根本と分派末梢とは、不断の発顕、還元により一体に帰するものである。之を字宙万有同根一体の原理と云ふのである」と説いている。
「草も木もみな大君のおんものであり、上御一人からお預かりしたもの」(岡本広作)、「天皇から与えられた生命と財産、真正の意味においての御預かり物とするのが正しい所有」(田辺宗英)、「本当の所有者は 天皇にてあらせられ、万民は只之れを其の本質に従つて、夫々の使命を完ふせしむべき要重なる責任を負ふて、処分を委託せられてゐるに過ぎないのである」(田村謙治郎)──というように、皇道経済論者たちは万物を神からの預かりものと考えていたのである。
念のためつけ加えれば、「領はく(うしはく)」ではなく、「知らす(しらす)」を統治の理想とするわが国では、天皇の「所有」と表現されても、領土と人民を君主の所有物と考える「家産国家(Patrimonialstaat)」の「所有」とは本質的に異なる。 続きを読む 忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 二 →
『維新と興亜』編集長・坪内隆彦の「維新と興亜」実践へのノート