戦勝国の論理でわが国を断罪した極東国際軍事裁判(東京裁判)の最終判決に対しては、インド代表のパール判事だけではなく、フランス代表のアンリ・ベルナール判事が異議を唱えていた。ところが、これまでベルナールの主張は注目されてこなかった。この忘れられたフランス判事の実像に迫ったのが本書である。
東京裁判において、多数派判事たちは、わが国が満州での権益とそれを守る権利を持つことまでは認めながらも、わが国の行動は明らかにそれを逸脱していたと主張した。これに対してベルナールは、日本が条約で手に入れた満州の地を自らの「生命線」とみなしていたのは何ら不法なことでもなく、既得権を脅かされた日本軍がその防衛のためにしばしば起こした騒動のいくつかは当然の権利として起訴されるに値しないと擁護したのである(168頁)。
さらに注目すべきは、東京裁判には正当で公正な判断を下すために必要な信用できる証拠が圧倒的に足りず、その採用の仕方にも偏りがあると、ベルナールが考えていたことである。 続きを読む 書評─『東京裁判 フランス人判事の無罪論』(『月刊日本』平成25年3月号)
「外国人」カテゴリーアーカイブ
興亜思想で結ばれた志士のネットワーク
筆者が『アジア英雄伝』で取り上げた二五人の志士たちの多くは、日本に亡命するか、日本が設立した訓練機関などに所属し、興亜の理想を日本人と共有していた。
彼らが信頼した日本人とは、頭山満に代表される、列強の植民地支配に抵抗し、アジア諸民族の独立に手を貸そうとした興亜陣営であった。以下、アジアの志士たちと興亜陣営の結びつきを列挙してみたい。
朝鮮開化派のリーダー金玉均が来日する前年の明治一四(一八八一)年、朝鮮から派遣され視察団の一員として日本に来た魚允中は、副島種臣に招かれて興亜会の宴に列し、アジアの興隆を志す副島に刺激を受けていた。金玉均は、魚允中から副島の興亜思想を伝え聞いたに違いない。金は、訪日直後に興亜会主催の会合に参加し、日本、清、朝鮮三国間の平和、協力を目指した三和主義に基づく「興亜之意見」を発表していた。 続きを読む 興亜思想で結ばれた志士のネットワーク
ビルマの志士ウ・オッタマ僧正の写真
フィリピンの大亜細亜主義者ピオ・デュラン博士
TPPに反対するマハティール元首相
マレーシアでのTPP交渉を3日後に控えた2013年7年12月、マハティール元首相がついにTPP反対論を唱えるに至った。
マハティール元首相は、同日の『New Straits Times』に「TPP will be another bad pact」と題して寄稿した。以下に転載する。
UNEQUAL PARTNERS: The Trans-Pacific Partnership Agreement will allow big economies to plunder smaller ones
THE secretary-general of the International Trade and Industry Ministry avers that trade negotiations must be done in secret, I suppose by the officers concerned. There should apparently be no public debate, even within the government.
I don’t think it is such a good practice, if indeed that is the practice. Let us see the record of trade and other agreements negotiated by the Malaysian government. They do not seem to favour Malaysia much. In fact they seem to result in Malaysia accepting unfavourable terms. 続きを読む TPPに反対するマハティール元首相
「日満支の統一」は共通の原理で!─山田光遵『東洋国家倫理の原理と大系』
山田光遵は昭和16年に刊行した『東洋国家倫理の原理と大系』(中文館)において、「興亜論」の一節を割いて、以下のように主張した。
〈日満支三国が精神を同じうする事の為にはこの三国を通ずる精神の把握に先立つて、この三国を通ずる教の問題を考察せねばならぬ。精神は教から浸み出るものであるからである。日満支の文化の交流はすでに数千年の古に始まる所である。就中孔子教は支那をして支那たらしめたると共に日本をして日本たらしめた中枢的精神文化である事を思ふ時、日満支を通ずる精神を論ずるに当つて、先づ儒教に注目せねばならぬ。……然しながら現代我が国教学の中枢精神は儒教倫理そのまゝのものではなく、況んや全体主義の如き国家的利己主義ではなく、儒教倫理が中枢となりながら、而もそれが世界人類の不動の平和を目標とする所の八紘一宇の倫理にまで積極化、大乗化せられたものである事は刮目して見なければならぬ点であつて、アジヤの倫理は正にかゝる意味に於ける八紘一宇の倫理なる事を確信しなければならぬ。而してこの八紘一宇の同家倫理は結局興亜の原理として、日満支の統一原理として働くべきものであるが、それは各三国を離れた、或はそれらを超越してそれらを總括すると謂つたやうな原理ではなくて、各三国の内に内在し、それらを貫く枢軸であり、而もそれらに共通の原理たるべきでありて、彼の国際公法的な、外的強制的結合原理であつてはならぬのである。……即ち支那は支那として、満洲国は満洲国として、日本は日本として生々発展しつゝ而も一となつてアジヤ精神の中に活きて行かねば合体の意昧をなさぬのである。 続きを読む 「日満支の統一」は共通の原理で!─山田光遵『東洋国家倫理の原理と大系』
人類文明と儒家─杜維明の志
杜維明については以前に「杜維明の思想」で言及したが、中村俊也氏は『新儒家論―杜維明研究』において、以下のように結論づけている。
〈杜維明は、論著における結論として次のように述べる。それは、「共同して奮闘し、共同して価値を創造する」という観点の導く方向である。(三九五─一〇)
「西洋文明が突出しているところは、まさしく、中国の伝統、儒家を以つて特色とする文明が有しないところにある。彼等の法律、個人主義、科学技術……これらはすべて、私達が学ばなければならない。しかし、百五十年以来、この文明は今度は私達の文化伝統となった。この文化伝統は、私達をして自己の伝統文化に対し断絶せしめた。(三九五─一一) 続きを読む 人類文明と儒家─杜維明の志
アジア的価値の現代的意義─黄心川氏の主張
中国の思想家、黄心川氏は、アジア的価値観の意義について次のように説いている。
〈東西の倫理観には集団意識と個人主義、家族本位と個人本位、内聖外王と自己完成、理想主義と現実主義、義を重んじ利を軽んじることと利のみを図る……等々の違いがある。
東洋の倫理観は人間本位を重んじ、人間の活動を価値判断の基準とすることを強調するなどの特徴と、調和的な人間関係をもっているなどの長所を有している。しかし、専制主義であって民主的精神に欠けるという欠点もある。西洋の倫理観は現実と科学を重視し、実証性を強調するという特徴をもっているが、個人本位で、利のみを図るという欠点もある。
東洋社会の改革と発展においては、西洋の倫理モデルを踏襲することはできないし、数千年の伝統的倫理観をそのまま保持するわけにもいかない。東洋の伝統的な倫理思想の集団意識、理想主義、調和的な人間関係を広げる基礎のうえに、西洋の倫理思想のなかの科学と現実を重んずるという長所を受け入れ、伝統的な倫理思想の家族本位や専制主義などの弊害を克服し、東洋社会の改革と発展をうながすことが必要である。このことはすでに世界の多くの学者たちの共通認識となっている〉(『東洋思想の現代的意義』(本間史訳、農山漁村文化協会刊)の「二 東洋哲学の起源と発展およびその現代的変容と社会的意義」)
英語版『柳子新論』
Bob Tadashi Wakabayashiは、1995年に「Japanese Loyalism Reconstrued: Yamagata Daini’s Ryushi Shinron of 1759」を刊行している。
第1部には山県大弐の評伝、第2部には『柳子新論』の英訳が収められている。
以下は、『柳子新論』冒頭部である。
安倍政権の姿勢は、わが国が属国であることを認めることになる
元CIA職員エドワード・スノーデン氏による暴露をきっかけに公になった米国家安全保障局(NSA)の諜報活動が、同盟国にも及んでいたことが、極めて深刻な問題として受け止められつつある。
「同盟」とは名ばかりで、わが国はアメリカの監視対象であることが暴露されたわけである。にもかかわらず、日本政府はアメリカの姿勢を問いただそうともしない。わが国がアメリカの属国であることを、自ら認めているようなものである。
こうした中で、『琉球新報』社説(7月3日)が、「米の大使館盗聴 傲慢さ批判し究明求めよ」と題して、明確な主張を展開した。以下、その一部を転載させていただく。
〈「同盟」や「友好国」の呼称が空虚に響く所業である。米国は事実関係を全て明らかにし、盗聴活動を即刻やめるべきだ。
メールや携帯電話の通話などの個人情報収集への批判が高まると、米国は「対テロ対策」と言い張り、沈静化に躍起となっていた。
自国の欲望をむき出しにし、大使館などを標的にした組織的で大掛かりな盗聴が明らかになるに至っては、「対テロ」の“大義”は完全に失われたと言えよう。 続きを読む 安倍政権の姿勢は、わが国が属国であることを認めることになる



