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佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート④

佐藤清勝は、君主政治、民主政治、共産政治のいずれの根本思想も、個人主義であり、強力主義だと批判した。彼はまず、③「君主政治説に対する批判」として、西洋政治思想においては、権力の起源を、神学的に解釈したり、自然科学的に解釈したり、あるいは法理的に解釈したりと、様々な変遷があったが、いずれにせよ政治を君主の権力行使の作用であると見てきたことには変わりがないと指摘し、次のように説明する。
西洋思想においては、君主の権力は最高であり、無制限であり、絶対であると主張した。このような思想は、市民や農民を眼中に置かず、君主の個人的権力だけを強唱するものであって、例えばルイ一四世などは「朕は国家なり」と主張するに至った。つまり、欧州の君主政治の根本思想は権力主義であり、君主の個人主義である。 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート④

佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート③

原理的な西洋政治学批判を展開した佐藤清勝は、①「国家観からの批判」に続いて、②「法律説の観点」から西洋の政治の在り方を批判した。彼は、神法説、自然法説、歴史法説、功利法則説など、法律に関する学説の変遷を見た上で、次のように述べる。
「法治は法律によりて政治を施行することである、即ち、法治国は統治権により法律を発布し、この法律を実行せしめて、人民を治むる国家である。即ち、法律は統治の権力をその泉源として、人民をこの権力に服従せしむるのである。……法律はその背後にある主権者の権力によつて施行せらるゝのであるから、法治は即ち権力政治である力を万能とする政治である」(十四、十五頁)
佐藤は、このような法治に対して、わが国古来の政治は道徳を根底とする政治であったと主張し、概要次のように説いた。
わが国でも、多少の法令規則はあったが、それは政治の補助手段であって、その実質は道徳政治であった。道徳政治は、為政者がまず道徳を実践し、模範を示し、これを実行させる政治である。この点で全く法律政治とは異なる。わが国上古、中古の歴代天皇は、道徳を実践されただけではなく、よく人民を愛撫し、人民に恩恵を施し、刑罰を寛大にされ、仁慈の政治を行われたのである。
このように説いた上で、以下のように結論づけている。
「欧米国家の政治は、その法律思想に於て権力主義である。是に反し、我国古来の政治思想は道徳主義であつた。権力主義の思想は道徳主義の思想と相容れざる思想である」(十六、十七頁)

佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート②

佐藤清勝著『世界に比類なき天皇政治』の特徴は、単に天皇政治を称揚するだけではなく、西洋政治学の問題点を具体的に指摘した点にある。
戦後わが国においても、「政党政治の行き詰まり」論をはじめとして、民主主義批判はあるが、佐藤は西洋政治を、より原理的に批判しようとした。
同書第一編「西洋政治の論評」第一章「西洋政治学に対する批判」において、佐藤は西洋政治学の展開を概要次のように説明する。
欧州における政治学はギリシア時代から登達し、ソクラテス、プラトン、アリストテレスのような哲学者は、いずれも道徳を論ずるとともに政治を論じた。彼らは政治の理想を道徳に置いていた。 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート②

佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート①


佐藤清勝は『世界に比類なき天皇政治』緒言冒頭で、西洋人の不幸な歴史は、彼らが理智ばかりを重視し、感情を軽視してきた結果だと断じる(二頁)。
西洋人の歴史は、佐藤によれば、苦難の連続だった。まず、教権全盛時代には法皇僧侶などの人情なき抑圧に苦んだ。そして、君権全盛時代には、君主貴族などの愛情なき虐政に苦んだ。民権全盛となってからも、政党者や金権者の恩恵なき強圧に苦しんできた。
西洋人は「理智的反抗心」により、信仰の自由を叫んで僧侶の暴圧を絶呼し、天賦の人権を叫んで君主権の非理を主張し、階級争闘を叫んで資本家の専横を怒号するというように、絶えず現状を打破して、新しい境遇を得ようとして、大声で激しく叫んできた。佐藤は、それこそが西洋の政治思想だと説き、次のように書く。
「彼等は常に現状を打破し、現社会を改造して新正面を開かんとする努力は、益々彼等を躯つて奈落の底に沈淪せしむるものである、而して、今や彼等は国家を否認し、民族を忘却し、政治を嫌悪し、而して、世界主義に傾きつつあることは、即ち、彼等民族自滅の深渕に向つて急ぎつつあるのである」(四頁) 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート①

ある書棚から

書籍

著者 書籍写真 書名 出版社 出版年 備考
片岡鉄哉 “黒船待ち”の日本―ゴーリズム国家をめざして 日本教文社 1982年1月
田中正明 アジア独立への道 展転社 1991年7月
竹内好 日本とアジア 筑摩書房 1993年11月
ムハンマド・バーキルッ=サドル著、黒田寿郎訳 イスラーム経済論 未知谷 1993年12月
マハティール、石原慎太郎 「NO」と言えるアジア―対欧米への方策 光文社 1994年10月   続きを読む ある書棚から

ドキュメンタリーDVD(歴史・戦争)

写真 タイトル 価格(円) 枚数 時間(分) 販売元 発売日 内容
NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 DVD-BOX 8,777 3 251 NHKエンタープライズ 2012/03 日本海軍のエリートたちによる告白とは――1980(昭和55)年から11年、130回余りにわたり、かつての日本海軍の参謀たちが密かに集い、議論を重ねていた。「海軍反省会」
NHKスペシャル 映像の世紀 SPECIAL BOX 64,328 12 873 NHKエンタープライズ 2005/11 激動の20世紀を映像で記録したロングセラー作品が、豪華解説書とDVD別巻を加えてリニューアル!
東京裁判 3,135 2 277 キングレコード 2004/08 小林正樹監督。昭和23年、東京都市ヶ谷の旧陸軍省参謀本部において開かれた「陸軍国際軍事裁判」の模様を収めた米国防総省の記録フィルムを基にしたドキュメンタリー映画 続きを読む ドキュメンタリーDVD(歴史・戦争)

祖国自己確認の歴史における『中朝事実』

 わが国の歴史は、国体論の確立を目指した持続的な営みであった。その中で、国際情勢の変化、特に対外的危機意識の高まりは、常に祖国日本の自己確認を促してきた。
永安幸正は、「何れの国民でも同じであるが、国民集団としてある種の危機が迫っていると感づく秋には、祖国あるいは民族を世界の中に位置付け、他国と比べて祖国自民族の歴史、実力、可能性を確かめなければならぬものである」と指摘する。
山鹿素行の『中朝事実』もまた、繰り返されてきたわが国の自己確認の歴史の一時代として位置づけられる。永安は、『中朝事実』執筆の目的を、①国家創設及び創設後の政治における要点の解明、②国際関係において、日本列島上のわが国こそが中朝・中華・中国(なかつくに)であることの主張──に整理した上で、次のように『中朝事実』を、繰り返されてきた祖国自己確認の試みの歴史の中に位置づける。 続きを読む 祖国自己確認の歴史における『中朝事実』

『中朝事実』の評価①

昭和八年に文部省社会教育局が「日本思想叢書第八編」として刊行した『中朝事実』の解題には、次のように書かれている。  「…儒学の主張する名分や祭祀の義は我が国に於て完全に実現されてゐる。国典と儒学とを並び究むれば此の事が分明して、我が国を以て世界無比の国体となし、天皇の尊厳なるを覚るのである。先生(素行=引用者)は徳川初期に生れ、国学尚ほ未だ勃興せす、水戸学尚ほ未だ興起せざる以前、我が国体の美を称揚し、我が国を中華中国といつた識見の高邁には驚くではないか。是れ先生が大に我が国民道徳に貢献した所以である」(同書二十二頁) 続きを読む 『中朝事実』の評価①

佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』コンテンツ

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緖論 1

第一篇 西洋政治の論評 8
第一章 西洋政治学に対する批判 8
第一節 総説 8
第二節 国家観に対する批判 10
第三節 法律説に対する批判 12
第四節 君主政治説に対する批判 17
第五節 民主政治説に対する批判 22
第六節 共産政治説に対する批判 25
第七節 批判の綜合 30
第二章 西洋政治学の欠点 31
第一節 総説 31
第二節 政治反抗の思想 33
第三節 権力統制の思想 36
第四節 為政者人格無視の思想 40
第五節 法律統治の思想 43
第六節 道德感情無視の思想 46
第七節 理智偏重の害 49
第三章 西洋政治の実際 50
第一節 総説 50
第二節 西洋政治史の梗概 52
第三節 英国憲法の成立過程 61
第四節 議会政治の実際 71
第五節 議会政治の本質 75 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』コンテンツ