佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート①


佐藤清勝は『世界に比類なき天皇政治』緒言冒頭で、西洋人の不幸な歴史は、彼らが理智ばかりを重視し、感情を軽視してきた結果だと断じる(二頁)。
西洋人の歴史は、佐藤によれば、苦難の連続だった。まず、教権全盛時代には法皇僧侶などの人情なき抑圧に苦んだ。そして、君権全盛時代には、君主貴族などの愛情なき虐政に苦んだ。民権全盛となってからも、政党者や金権者の恩恵なき強圧に苦しんできた。
西洋人は「理智的反抗心」により、信仰の自由を叫んで僧侶の暴圧を絶呼し、天賦の人権を叫んで君主権の非理を主張し、階級争闘を叫んで資本家の専横を怒号するというように、絶えず現状を打破して、新しい境遇を得ようとして、大声で激しく叫んできた。佐藤は、それこそが西洋の政治思想だと説き、次のように書く。
「彼等は常に現状を打破し、現社会を改造して新正面を開かんとする努力は、益々彼等を躯つて奈落の底に沈淪せしむるものである、而して、今や彼等は国家を否認し、民族を忘却し、政治を嫌悪し、而して、世界主義に傾きつつあることは、即ち、彼等民族自滅の深渕に向つて急ぎつつあるのである」(四頁)
佐藤は、このような西洋の状況とは異なり、わが国においては、三千年来、万世一系の皇統を仰ぎ、天壌無窮の宝祚を履み給った天皇の下に、国民は至善至幸の生活を営んできたと説き、天皇政治こそが理想の政治だと主張する。そして、天皇政治の根本思想について、佐藤は次のように書いている。
「人の道徳感情を重んじ仁愛を以て民を治め、敬虔を以て神に仕へ、而して、天皇の大御心を国家全体に拡充推及して行ふ、君民一体の政治である」(五頁)

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