佐藤清勝は、君主政治、民主政治、共産政治のいずれの根本思想も、個人主義であり、強力主義だと批判した。彼はまず、③「君主政治説に対する批判」として、西洋政治思想においては、権力の起源を、神学的に解釈したり、自然科学的に解釈したり、あるいは法理的に解釈したりと、様々な変遷があったが、いずれにせよ政治を君主の権力行使の作用であると見てきたことには変わりがないと指摘し、次のように説明する。
西洋思想においては、君主の権力は最高であり、無制限であり、絶対であると主張した。このような思想は、市民や農民を眼中に置かず、君主の個人的権力だけを強唱するものであって、例えばルイ一四世などは「朕は国家なり」と主張するに至った。つまり、欧州の君主政治の根本思想は権力主義であり、君主の個人主義である。
個人主義の君主政治は覇道であり、中国の春秋戦国時代における諸侯諸王の行った政治に比すべきものであり、わが国における武人の幕府政治もまたこれに近いものである。これに対して、わが国古来の歴代天皇の政治は国家主義であり、国家本位であった。
歴代天皇は自己の宮殿御服、御常膳を節約されて人民を賑恤された。疫病の流行に際しては、医薬を提供して人民をお助けになり、天災地変には使者を派遣して犠牲者の霊を弔われた。国家の大難に際しては、身を以て国に殉ぜんと宣うた。このような事実は、実に天皇が自己を歿却して、国家のため、人民のために尽くそうという大御心である(十七~二十二頁)。
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