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アメリカにとって日本語は脅威である

 
 TPPによって、「日本語自体が非関税障壁である」と言われかねないと指摘されるようになっているが、もともとアメリカにとって日本語ほどの脅威はなかった。彼らの本音は日本人から日本語を奪うことだった。
 江藤淳は、『日米戦争は終わっていない―宿命の対決 その現在、過去、未来』(昭和61年)に、次のように書いていた。

 〈人間は、たしかにものがなければ生きていけないけれども、同時に、ものをつくる技術を発展させるためにも、人間は、ことばがなければ一瞬たりとも生きることができない。
 ことばというものは、いわば人間をおおい、同時に吸う息と吐く息によって生命を維持させている空気のような、不思議なものです。このことばの世界にも、アメリカの占領者は、二重三重の掣肘を加えようとしました。
 ここで見逃せないのは、まずアメリカ人には、日本語ということばそのものが「脅威」と感じられていた、という事実です。
 日本語という言語は、アメリカ人から見ると、非常に習得しづらく、しかも見慣れぬ言語です。アメリカ人が日本人に対して抱く基本的な違和感は、日本人が東洋人であり、皮膚の色の黄色い異人種であるという感覚から発生すると考えられますが、それとほとんど表裏一体のものとして、不思議な言語をあやつる国民である、という違和感が存在する。……占領軍当局は、もし可能ならフィリピン統治に当たってそうしたように、英語を日本人に強制したかったに違いありません。 続きを読む アメリカにとって日本語は脅威である