佐藤清勝は『世界に比類なき天皇政治』緒言冒頭で、西洋人の不幸な歴史は、彼らが理智ばかりを重視し、感情を軽視してきた結果だと断じる(二頁)。
西洋人の歴史は、佐藤によれば、苦難の連続だった。まず、教権全盛時代には法皇僧侶などの人情なき抑圧に苦んだ。そして、君権全盛時代には、君主貴族などの愛情なき虐政に苦んだ。民権全盛となってからも、政党者や金権者の恩恵なき強圧に苦しんできた。
西洋人は「理智的反抗心」により、信仰の自由を叫んで僧侶の暴圧を絶呼し、天賦の人権を叫んで君主権の非理を主張し、階級争闘を叫んで資本家の専横を怒号するというように、絶えず現状を打破して、新しい境遇を得ようとして、大声で激しく叫んできた。佐藤は、それこそが西洋の政治思想だと説き、次のように書く。
「彼等は常に現状を打破し、現社会を改造して新正面を開かんとする努力は、益々彼等を躯つて奈落の底に沈淪せしむるものである、而して、今や彼等は国家を否認し、民族を忘却し、政治を嫌悪し、而して、世界主義に傾きつつあることは、即ち、彼等民族自滅の深渕に向つて急ぎつつあるのである」(四頁) 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート①
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佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』コンテンツ
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緖論 1
第一篇 西洋政治の論評 8
第一章 西洋政治学に対する批判 8
第一節 総説 8
第二節 国家観に対する批判 10
第三節 法律説に対する批判 12
第四節 君主政治説に対する批判 17
第五節 民主政治説に対する批判 22
第六節 共産政治説に対する批判 25
第七節 批判の綜合 30
第二章 西洋政治学の欠点 31
第一節 総説 31
第二節 政治反抗の思想 33
第三節 権力統制の思想 36
第四節 為政者人格無視の思想 40
第五節 法律統治の思想 43
第六節 道德感情無視の思想 46
第七節 理智偏重の害 49
第三章 西洋政治の実際 50
第一節 総説 50
第二節 西洋政治史の梗概 52
第三節 英国憲法の成立過程 61
第四節 議会政治の実際 71
第五節 議会政治の本質 75 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』コンテンツ