東南アジア料理論⑦

馴鮓
鮒ずしの危機(7日目)
食文化を維持するには、材料がなくては話にならない。
ところが、鮒ずしの材料ニゴロブナが、絶滅の危機に瀕している。ニゴロブナは、琵琶湖にしか生息しない魚で、体長二十―四十センチ。幅が厚いのが特徴だ。
骨が軟らかく、鮒特有の臭みが少ない。しかも、産卵期のメスは腹にぎっしり卵を抱えている。「鮒ずしにはこれ以外使えない」と、老舗専門店は口をそろえる。 
四―七月、降雨後の増水時に群れで湖岸にやって来て産卵する。特定の時期に、大量に捕獲されるわけだ。もともと鮒ずしはこの大量の鮒を保存して蓄える手段の一つとして発達したのである。
この鮒ずしに欠かせないニゴロブナが減ったのは、水質悪化に加え、外来肉食魚のブラックバスやブルーギルが異常繁殖したためである。
かつては、年間五百―六百トンの漁獲量があった。だが、一九八八年に百九十八トンを記録して以降みるみる減りはじめる。九三年には百六十六トン、九五年には三十四トンにまで落ち込んだ。
この間、滋賀県が手をこまねいたいたわけではない。一九九〇年には、県の補助を受けて琵琶湖栽培漁業センターができ、稚魚の放流が開始され、九四年には本格的な放流事業が展開されるようになった。
九六年一月から水揚げされた体長二五センチ前後のニゴロブナを調査した結果、放流魚が平均して北湖で二六・二%、南湖で一七・二%占めていた。稚魚の生残率は北湖のヨシ群落で最高の三五・六%を記録したところもあり、ヨシ群落がニゴロブナの生育に大切な環境になっていることもあらためて確認できたという。
県は、九六年には九七年度予算として三千七百万円余を計上して、さらに大規模な放流事業に乗り出し、七年がかりで漁獲量の倍増を目指している。

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