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『青年日本の歌史料館図録』書評(令和8年7月)

『青年日本の歌史料館図録』の書評が『維新と興亜』令和8年7月号に掲載された。

 「青年日本の歌史料館」は令和五年二月、岐阜護國神社境内に開設され、同年五月十五日に一般公開された。「青年日本の歌」(昭和維新の歌)は、三上卓海軍中尉が五・一五事件で蹶起する二年前、「民族的暗闇を打開し、開顕しうるものは、青年的な情熱以外にはない」との確信に基づき佐世保の軍港で作ったものだ。史料館開設は、三上氏の戦後の門下で、昨年元旦に急逝した花房東洋氏の尽力によって実現した。
 「青年日本の歌史料館」は、関連史料・文献の収集・展示を通じて、三上氏をはじめ、昭和維新運動に挺身した先人たちを顕彰することを目的に設立された。戦後の歴史観においては、五・一五事件をはじめとする昭和維新運動の正しい姿が描かれていない。昭和維新運動に挺身した先人たちの精神と行動の軌跡を検証するためには、昭和維新運動の真実を伝える史料の収集、分析を進めなければならない。そうした思いから史料館は開設されたという。
 蹶起した三上卓氏に焦点を当てた研究はそれほど多くない。以前は、僅かに花房東洋氏の『「青年日本の歌」と三上卓 民族再生の雄叫び』と江面弘也氏の『「青年日本の歌」をうたう者』があったぐらいだ。
 こうした中で、令和二年に帝京大学教授の小山俊樹氏が『五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」』を出版され、三上氏の生涯が一般にも知られるようになりつつある。同書は第四十二回サントリー学芸賞に輝いている。同書に基づいて、令和六年にはドキュメンタリー映画「五・一五事件~君に『青年日本の歌』が聴こえるか~」(製作統括:花房東洋氏、歴史考証:小山俊樹氏、脚本・監督:坂下正尚氏、案内人:大和田伸也氏)が完成している。
 展示された史料、特に維新者たちの書画や作品からは迸る維新者の情熱が感得される。三上氏のほか、頭山満氏、井上日召氏、片岡駿氏、堀川秀雄氏、坂元兼一氏、四元義隆氏、中村武彦氏、齋藤兼輔氏、野村秋介氏ら維新者たちの書も展示されている。
 本書は史料館に展示された史料を掲載し、解説を付している。刊行によせて、小山俊樹氏は「資料を写真に収めた図録があれば、展示を理解する助けとして、また居ながらにして資料と触れた際に得た感銘を味わい、思い起こすための価値ある記録とすることができる。そして本図録を手に取ることで、実際の資料を閲覧したいと希望する人が今後あらわれるであろう。維新の先駆者たちの個性を示す品々が、紙媒体に圧縮された形で、多くの方の手に触れることの意義は計り知れない」と評している。
 図録に収められた作品には、維新者たちの人となりが示されている。三上氏の書、画、作品からは、秀でた芸術家の一面を感じることができるに違いない。中村武彦氏は三上氏を追悼し、「茶をたて、俳句をよみ、書を書き、時に尺八を吹き、風流三昧の中で、三上さんは黙々として人生を楽しんでゐた」と書き残している(「荘厳なる大往生」)。毛呂清輝氏もまた、次のように三上氏を追悼した。
 「才能は全く豊かで、一種の達人であった。昔、愛郷塾へ行かれた時、稲刈りを手伝われたが、百姓より早いので皆感心して居た。/ともかく器用だった。草のパイプやお茶を入れるなつめなどは自分で作られたし、私などは戦後の洋傘が貴重品の頃、柄に名前を刻って下さいと頼むと気さくに直ぐ刻って下さった。/尺八なども竹を探して自分で作り仏像なども彫ってゐられた。そのころ私は例のクセが出て、未完成品だったが、観音像を失敬して今でも愛蔵してゐる」(「大夢山人」)
 本書を手に取り、維新者の息吹を感じとってもらいたい。そして、岐阜護国神社に参拝し、史料館を訪れてもらいたい。
(古賀隆)

『維新と興亜』令和8年7月号