チャールズ・マレー(Charles Murray)氏が1月に刊行した『Coming Apart: The State of White America, 1960-2010(分断:アメリカ白人社会の状況─1960~2010年)』が注目を集めている。
マレー氏が同書で示す統計は、格差社会アメリカの驚くべき姿をはっきり示している。彼は「1960年に、30~49歳のブルーカラー層の84%が結婚していたが、2010年に48%に低下している」「1970年に、高卒の白人女性でシングルマザーである比率は6%に止まっていたが、2008年には44%に急上昇した」といった事実をつきつける。
名門大学の学位を取得した、弁護士、医師、エンジニア、教授、メディアのプロデューサーといった高度スキルのホワイトカラー層が、富を独占している。エリート層は、彼らだけでコミュニティを築いている。エリート層は特定の地域に集中して住むようになっている。エリートだけが特定の郵便番号に住めることになる。マレー氏は、それを「スーパージップ(SuperZIPs)」と呼ぶ。
同書のエッセンスは、彼が1月21日付のWSJに書いた「The New American Divide(アメリカ社会の新たな断層)」に示されている。
わが国でも、新自由主義の導入によって格差が拡大しつつある。いまこそ、アメリカ社会の現状を直視し、彼らがこのような状況に陥った原因を改めて考える必要がありそうだ。