「ナジブ・ラザク」カテゴリーアーカイブ

マハティール 92歳の闘い

ナジブ首相の汚職疑惑
 「マレーシアの父」と呼ばれ、国民に慕われるマハティール氏は、権力にしがみつくことなく、2003年に惜しまれながら引退した。それから15年。92歳の高齢となったマハティール氏がいま野党連合・希望同盟の首相候補として出馬するのは、一体なぜなのか。
 それは、ナジブ政権を打倒しなければならないからである。いまナジブ首相の汚職疑惑に対する国民の不満が高まっている。そして、ナジブ政権はマハティール氏が築き上げた自主独立の外交から遠ざかろうとしている。さらに、マハティール氏が日本企業の協力を得て発展させてきた、国産自動車会社プロトンの株式を中国の自動車大手、吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団に売却してしまった。
 しかも、政権批判する人々に対して、ナジブ首相は極めて強権的な姿勢を強めている。2018年4月3日にはフェイク・ニュース対策法が成立した。悪意を持って間違ったニュースを流したら、最高50万リンギ(約1390万円)の罰金か6年以下の禁錮刑、または両方を科すという法律だ。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は「政府が好まないニュースの拡散を止めるための露骨なたくらみであり、表現の自由を正面から攻撃するものだ」と批判している。
 姑息なことに、ナジブ首相は解散を表明する直前に、与党に有利とされる選挙区の区割り変更を行った。
 しかもナジブ首相は4月5日には、マハティール氏が率いる「マレーシア統一プリブミ党」(Parti Pribumi Bersatu Malaysia)に対して、30日間の活動停止を命じたのだ。
 ナジブ首相の汚職疑惑とは何か。2009年にナジブ首相の肝いりで設立された政府系ファンド「1MDB」から、不正資金が同首相の個人口座に振り込まれたとの疑惑である。
 『ウォールストリート・ジャーナル』(2016年3月1日付、以下WSJ)の報道によると、ナジブ首相の口座に、2011年から13年の間に10億ドル(約1136億円)を超える入金があった。資金は数カ国の複雑な取引網を通じてナジブ首相の口座に送金された。送金にはアラブ首長国連邦アブダビ首長国の元当局者が関わっていた。
 「1MDB」のアドバイザーを務め、莫大な利益をあげてきたのが、米金融大手ゴールドマン・サックスである。マネーロンダリング(資金洗浄)が行われた疑いがあり、米当局だけではなく、世界的な捜査が展開されています。アメリカ、マレーシア、シンガポール、スイスなどが協力して調査をしている。 続きを読む マハティール 92歳の闘い

「ナジブ新首相とマハティール路線 明日のアジア望見 第77回」『月刊マレーシア』503号、2009年4月30日

 二〇〇三年一〇月にマハティール首相が引退してから、まもなく六年が経とうとしている。
 この間、マハティール元首相は、自らが後継者に指名したアブドラ首相に対する不満を強めていた。それは、アジアの復権と団結、西洋近代とは異なる独自の発展モデルの追求、自主独立外交の貫徹というテーマについてのアブドラ政権の立場が鮮明ではないと感じていたからだと筆者は見ている。
 昨年三月の下院選挙で、与党連合・国民戦線(BN)が大幅に議席を減らすと、マハティール元首相は、アブドラ首相辞任を迫るようになった。昨年五月一九日には、与党統一マレー国民組織(UMNO)を離党し、アブドラ首相が辞任しなければ復党しないと表明するに至った。当初、アブドラ首相は二〇一〇年半ばの政権委譲計画を明らかにしたが、マハティール元首相らの早期辞任論に押され、今年三月に党総裁を辞めると表明、三月の党役員選挙でナジブ・ラザク(Najib Razak)副総裁が総裁に選出された。 続きを読む 「ナジブ新首相とマハティール路線 明日のアジア望見 第77回」『月刊マレーシア』503号、2009年4月30日