坪内隆彦 のすべての投稿

田中角栄の外交とアメリカ

独自の資源外交を展開

 資源小国日本にとって、資源の確保は最も重要な外交課題の一つである。だが、資源外交を基軸にし、主体的な外交を展開した政権は少ない。こうした中で、田中角栄政権は異色だった。
田中首相は、1973年頃から、独自の資源外交を展開していた。まず同年秋、仏、英、西独、ソ連を次々と訪問し、石油、ウラン鉱石、天然ガス等の共同開発について議論している。 続きを読む 田中角栄の外交とアメリカ

田中清玄とアジア連盟構想

橘孝三郎と三上卓を尊敬

 田中清玄は、明治39年3月5日に北海道亀田郡七飯町で生まれた。東京帝国大学在学中に日本共産党に入党、後に書記長に就いた。だが、昭和5年に治安維持法違反容疑で逮捕され、無期懲役となる。母の自殺などを経て獄中で転向する。
 戦後は、興亜思想に基づいて、タイの復興に尽力したほか、インドネシア等に人脈を築く一方、尊敬する民族派は橘孝三郎と三上卓と語っていた。 続きを読む 田中清玄とアジア連盟構想

辻政信とアメリカの対日心理戦略

独自の興亜論を展開
戦後のアメリカの対日政策の基本は、日本弱体化であった。だが、米ソ冷戦の開始によって、事態は180度変わった。「逆コース」といわれた通り、アメリカは、日本を反共の防波堤にすべくそれまでの日本弱体化政策を棚上げし、日本の復興を急いだ。
アメリカの矛盾は、ソ連封じ込めと興亜論封じ込めの両立を試みることから必然的にもたらされた。当時のアメリカの苦悩は、公開されたアメリカ政府文書でも裏づけられている。 続きを読む 辻政信とアメリカの対日心理戦略

キャノン機関

G2直轄の秘密工作機関
 キャノン機関とは、GHQ参謀第2部(G2)のチャールズ・ウィロビー少将が情報将校としてのジャック・Y・キャノン(Jack Y. Canon)の能力を買い、G2直属機関として組織した秘密工作機関で、本郷の旧岩崎邸に本部を構えていた。
 1951年には、作家の鹿地亘を拉致監禁した。ウィロビー少将は、米女流作家アグネス・スメドレーがゾルゲ・スパイ事件に連座しているとにらみ、鹿地からスメドレーに関する情報を得たいとも考えたという(春名幹男「対日工作の系譜・その1(4)」『熊本日日新聞』1997年11月21日付朝刊)。 続きを読む キャノン機関

占領期の言論統制関連文献

関連書籍類

著者 書籍写真 書名 出版社 出版年 備考
ジョージ・ウェラー著、アンソニー・ウェラー編、小西紀嗣訳   GHQが封印した幻の潜入ルポ ナガサキ昭和20年夏 毎日新聞社 2007年7月  
浦田義和   占領と文学 法政大学出版局 2007年2月  
山本武利編   占領期文化をひらく―雑誌の真相 早稲田大学出版部 2006年8月   続きを読む 占領期の言論統制関連文献

占領期の言論統制

戦争犯罪宣伝作戦

 アメリカによる日本の言論統制の目的は、戦前の日本の行為を全て悪、連合国の行為を全て善とする一方的な考え方を日本に浸透させることにあったのではなかろうか。
日本政府の行為も、在野の興亜論者の行為も、アメリカに不都合なものは、全て悪とされたのである。この占領期に行われた言論統制は、徹底したものであった。現在、興亜論者の正義の行動が容易に受け入れられないのも、この言論統制の後遺症なのか。 続きを読む 占領期の言論統制

三木清の思想

 ロゴスとパトスの統合、理性・言語と感情・イメージの統合を目指した思想家・三木清が見直されつつある。
アジア伝統社会の原理と西洋近代の自由主義、アジアの神秘的「知」と西洋近代の合理的「知」の対立を超えて、新しいアジア社会、新しいアジア的「知」を形成するための思想として、いまなお三木の思想から学ぶべき点が少なくないからである。中村雄二郎氏ら日本を代表する哲学者たちは、西田幾多郎とともに三木の問題意識に触発された部分が小さくない。
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高山岩男関連文献

書籍

著者 書籍写真 書名 出版社 出版年 備考
高山岩男著、花澤秀文編 超近代の哲学 燈影舎 2002 (京都哲学撰書 / 大峯顯, 長谷正當, 大橋良介編 ; 第20巻)
高山岩男著、齋藤義一編 文化類型学・呼応の原理 燈影舎 2001 (京都哲学撰書 / 大峯顯, 長谷正當, 大橋良介編 ; 第15巻)
高山岩男著 ; 花沢秀文編・解説 世界史の哲学 こぶし書房 2001 (こぶし文庫 ; 29 . 戦後日本思想の原点) 続きを読む 高山岩男関連文献

折口信夫のアジア統一論

産霊とマナによる統一

安藤礼二氏は、折口信夫が北一輝・大川周明・石原莞爾ら「超国家主義者」たちがアジアの統一・協同させる政治的・経済的な革命を志向したのに呼応するかのように、信仰上の、精神的な革命を断行しようとしたと捉えた(安藤礼二『神々の闘争 折口信夫論』講談社、2004年、111頁)。そうした折口の試みは、日本の古道を普遍宗教として提示し、イスラームを含めた他の宗教との融合を模索した田中逸平の試みとも通じている。安藤氏は、次のように折口の信仰上の革命をまとめる。 続きを読む 折口信夫のアジア統一論