評者・杉原志啓氏/『欠陥政党民主党』(撃論+、オークラ出版、3月28日)ブックレビュー
硬軟織り交ぜた良書3冊
「(前略)いまひとつ、逆に若い知識青年へ大推薦の坪内隆彦『維新と興亜に駆けた日本人』は、幕末から明治・大正期にかけて活躍した愛国者たち二十人の、いわばコンパクトな評伝選とでもいうべき硬派一徹の著作だ。ポイントは、当該期における誰でも知っているビッグ・ネームが西郷南州(隆盛)ひとりで、他は松村介石、荒尾精一等、一般にあまりなじみのない顔触れが採りあげられていること。そして、それぞれの源泉に「国学、陽明学、崎門学、水戸学」など「国体思想」の通貫を明らかにしていることで、最新資料を駆使しているところは学術的にも◎だ。
例えば自由民権連動の理論家として知られる植木枝盛の項で著者はいう。かれの評価は「一面のみが強調されてきた」。しかし、植木が「民権論と国権論を同時に唱え、かつ独自の興亜論を展開したことを忘れてはならないと。「興亜論」が実にしかりだ」