「日本の自立」カテゴリーアーカイブ

「わが国の自立」の視点がないマスコミ─プルトニウム返還報道に思う

 日米関係も核不拡散も、わが国にとって重要なテーマであることは間違いない。
 しかし、日本が対米従属から脱却して自立した国家になることは、さらに重要なテーマなのではないか。アメリカからのプルトニウム返還要求も、その視点で考えたい。
 ところが、マスコミの報道に「わが国の自立」の視点は皆無と言わざるを得ない。
 昨日(平成26年2月25日)の報道を受けて、日経が本日報じた内容を読んで、その感を強くした。
 〈政府は冷戦時代に米国から研究用として提供を受けていたプルトニウムを返還する方向で調整に入った。対象は日本が保有するプルトニウム約44トンのうちの約300キログラム。高濃度で核兵器にも転用可能な核物質だ。
 米国や旧ソ連が各国に研究用燃料として提供したプルトニウムや高濃縮ウランなどについて、米国は2001年の同時テロ以降、テロリストに渡ることを防ぐために各国に返還を求めている。
 政府は3月24~25日にオランダ・ハーグで開く核安全保障サミットで発表する方針。核不拡散への積極的な姿勢を示すとともに、日米関係の強化にもつなげたい考えだ〉

自主核武装の選択肢放棄か?

 安倍政権は自主核武装の選択肢放棄に向かうのか。『北海道新聞』の報道(平成26年2月26日)によると、日本政府は、アメリカからの要求を受け入れ、プルトニウムを返還する方向で最終調整に入った。
 一方で、平成26年2月23日のノート「アメリカは自主核武装阻止へ動くか─エネルギー基本計画で現行施策維持」で書いた通り、エネルギー基本計画では、プルトニウムの増殖と放射性廃棄物の減容化を目指す現行の施策を維持する案をまとめている。

安部政権の対中外交にダメ出しも?─『ブルームバーグ』報道の意味

 オバマ大統領が平成26年4月下旬にアジア歴訪の一環としてわが国を訪れるが、わが国の対中強硬姿勢がやり玉にあがる可能性が出ている。
 『ブルームバーグ』(平成26年2月17日)が「日本のナショナリスト的愚行、米国は強い語調で叱責を」と題した社説を掲載し、次のように主張しているからだ。
 「米国は反論すべきだ。それも通常より強い言葉で切り返すべきだ。4月のオバマ大領のアジア訪問は、中国政府の外交的冒険主義を容認しないことをあらためて表明する良い機会であると同時に、安倍首相の挑発がアジアの安定を脅かし、日米同盟に害を及ぼしていることをはっきりと伝えるチャンスだ」

天皇の大御宝を道具化する派遣法改正─田村憲久大臣と清水竜一氏・家中隆氏

 
 田村憲久厚生労働大臣は天皇の大御宝であるわが国の労働者について、どのように考えているのだろうか。
 平成26年2月21日に厚生労働省が労働政策審議会に提示した派遣法改正の法律案要綱は、大御宝を道具化しようとするものである。1月29日に労働政策審議会が厚生労働大臣に対して行った、労働者派遣制度の改正について建議には「派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とする」との文言が盛り込まれていた。しかし、法律案要綱は派遣は「臨時的・一時的」との原則が骨抜きにされている。
 派遣業界の意向に添って動いているのか。田村大臣は派遣業界の政治団体「政治連盟新労働研究会」(会長=清水竜一日総工産社長)から、最大の献金を受けていた。『赤旗』(1月11日付)の報道によると、自民党の小選挙区支部などを通じて、寄付50万円とパーティー券購入14万円を受けていた。
 これに次ぐのが、自民党の後藤田正純衆院議員の46万円、民主党の近藤洋介衆議院議員の36万円、自民党の川崎二郎衆議院議員、民主党の川端達夫衆議院議員、みんなの党の柿沢未途衆院議員の各30万円。これでは、民主党も派遣法改悪に同調するしかない。

第3回 国家戦略特別区域諮問会議(平成26年2月21日)─社稷を思う心なし

わが国の社稷を無視して国際財閥の利益を拡大するための「カイカク」を、いまこそ粉砕する必要がある。平成26年2月21日に開かれた「第3回 国家戦略特別区域諮問会議」で竹中平蔵氏らが提出した「国家戦略特区 当面の対応について」には、外国人労働者受け入れなど、国家解体のための「カイカク」が謳われている。
〈1.区域指定に向けての考え方
3月の特区指定にあたっては、ダボスでの総理のスピーチ内容(2年間で岩盤規制すべてに突破口)の実現に向けた推進力を内外に示す観点からも、スピーディに、かつ、日本の景色を変える効果を実現することが重要。
このため、
1)「広域都市圏」は、国の側の特区関係者も全面的にコミットできるよう、区域数は絞って指定。
2)これに加えて、突出して革新的な取組(岩盤規制改革を含め)を行う小規模な地域を実験場として一括指定する、いわゆる「バーチャル型」指定(革新的改革事業拠点の指定)を行うべき。
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衛藤晟一補佐官、アメリカ批判の発言を撤回─安倍政権は対米追従を続けるのか

 平成26年2月16日、衛藤晟一首相補佐官は「ユーチューブ」に投稿した動画で、安倍晋三首相の靖国神社参拝に「失望」を表明した米政府を「むしろわれわれのほうが失望だ」と批判した。ところが、菅義偉官房長官は2月19日の記者会見で「政府の見解ではない」と述べ、衛藤氏に動画削除を命じた。その結果、衛藤補佐官は、「政府見解だと誤解を与える」として発言を撤回、動画も削除してしまった。
 2月8日のノート「百田尚樹氏をアメリカが『非常識だ』と批判─対米自立覚悟の時」で「いまこそ、戦後レジームからの脱却を目指す者は、アメリカからの圧力をはねのけて対米自立に突き進む覚悟を決めるときではなかろうか」と書いたが、結局安倍政権はアメリカからの批判を恐れて、対米追従を続けることになるのか。

アメリカは自主核武装阻止へ動くか─エネルギー基本計画で現行施策維持

 毎日新聞の報道で、政府が近く閣議決定するエネルギー基本計画で、プルトニウムの増殖と放射性廃棄物の減容化を目指す現行の施策を維持する案をまとめたことが、平成26年2月21日に分かった。
 アメリカはどう反応するだろうか。日本の自主核武装阻止のために圧力を強めるだろうか。平成26年1月27日のノート「安倍政権は、自主核武装の選択肢を放棄するのか」で書いた通り、アメリカが日本政府に対し、冷戦時代にアメリカなどが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが、共同通信の報道で1月26日に判明した。これは、アメリカの対日政策の転換である。藤野光太郎氏は、「PRESIDENT Online」(2014年2月20日)で次のように指摘している。
 〈これまで米側は日本側の「表向きは原発、裏は核兵器準備」という擬装を黙認してきた。だが、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を謳って米国から独立した軍備増強と右傾化に邁進するのであれば、米国としては日米関係を見直すことになる、というのが今回の通告であろう。もはや「偽装」は“公然の秘密”であり、米側は公認できないぞ、ということだ〉
 安倍政権は、アメリカからの圧力に屈することなく、自主核武装の選択肢を維持することができるだろうか。

TPPは憲法違反?愛知県弁護士会が意見書

 TPPに関する愛知県弁護士会の意見書が2014年2月7日に公表された。これまで、TPPに関しては、長野県弁護士会、栃木県弁護士会の会長声明があったが、弁護士会としての意見書はこれが初めて。
 意見書は、「ISDS条項は、憲法76条1項に違反する疑いが強いとともに、国会の立法活動をも大きく制約する可能性が高く、国民主権原理を侵害するおそれがあるとともに、基本的人権尊重主義に深刻な混乱をもたらすものである」と主張している。

東京裁判史観は在野の興亜論者の行為も否定した

 平成25年末の安倍首相の靖国参拝以来、東京裁判批判を許さないというアメリカの意志が明確になってきた。もはや、戦後レジームからの脱却を目指すためには、アメリカとの思想闘争は避けられなくなった。
 以下、『アジア英雄伝』の「はじめに」の関係箇所を引用する。

〈占領期のアメリカによる日本の言論統制の目的は、戦前の日本の行為を全て悪、連合国の行為を全て善とする、一方的な考え方を日本に浸透させることにあったのではなかろうか。日本政府の行為も、在野の興亜論者の行為も、アメリカに不都合なものは、悪とされたのである。
 この占領期に行われた言論統制は、徹底したものであった。昭和二〇(一九四五)年九月一〇日、GHQは「新聞報道取締方針」を出した。さらに、GHQは同年九月一九日に「プレス・コード(新聞規約)」を発令、一〇項目の禁止事項を明示して言論統制を強化しようとした。プレス・コードは一九四六年一月二四日付で、一般の出版物だけでなく、国会を含む官庁の出版物にも準用されている。 続きを読む 東京裁判史観は在野の興亜論者の行為も否定した

百田尚樹氏をアメリカが「非常識だ」と批判─対米自立覚悟の時

 2014年2月8日の共同通信の報道によると、百田尚樹氏が都知事選応援演説で、アメリカによる東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」とした上で、東京裁判を批判したことについて、同日、在日米大使館報道担当官は「非常識だ」と批判した。これは、アメリカ政府の公式の統一見解としている。
「安倍首相は戦後レジームからの脱却を断念?─対米自立派と対米追従派の分岐」(2014年1月31日)で、「日本が戦後レジームから脱却することをアメリカは許さない」というメッセージが、再び強く発信されようとしているのだろうかと書いたが、もはやそれは確実と見なければならない。
いまこそ、戦後レジームからの脱却を目指す者は、アメリカからの圧力をはねのけて対米自立に突き進む覚悟を決めるときではなかろうか。