今まであまり描かれなかった渋沢栄一の側面
今年の大河ドラマ「青天を衝け」で取り上げられた渋沢栄一。「日本資本主義の父」や「商工会議所の設立に関わった」など、カネ儲けについてはよく知られているが、養育院の存続や救護法(生活保護法)実施など、福祉面での渋沢はあまり知られていない。また、その考えを支えた水戸学(幕末に徳川慶喜に仕えていた)への思いもまた知られていない。
本書では渋沢を「水戸学で固めた男」とし、晩年の著作である『論語講義』などを紹介しながら、渋沢の思想を紐解いている。また、渋沢が幕末に仕えた最後の将軍である徳川慶喜についても、渋沢が関わった『徳川慶喜公伝』の刊行についても詳しく述べられている。明治期は謹慎していた徳川慶喜が渋沢という語り部を得たことは、後世の歴史家にとっても有意義であったと思う。