神より来る武
 古神道を基礎とした信仰団体・大本教(現大本)を率いた出口王仁三郎は、「神より来る武」を説いた。彼が総裁を務めた大日本武道宣揚会は、そうした真正の大日本武道を宣揚するために昭和7年に誕生した。同会の会長に就いたのが合気道開祖・植芝盛平であり、彼は大本信徒として大正13年に敢行された王仁三郎の入蒙にも同行している。
 以下は同会の趣意書である。

 大日本武道宣揚会趣意書

 真の武は神より来るものである。武は戈を止めしむる意であつて、破壊殺傷の術は真の武ではない。否斯かる破壊の術を滅ぼして、地上に神の御心を実現する破邪顕正の道こそ真の武である。
 神国日本の武道は惟神の道こそ真の武道大道より発して皇道を世界に実行する為に、大和魂を体に描き出したものである。徳川三百年、武士道華かなりし時代は、既に真の武士道は失はれてゐたのであつて、むしろ真の武士道は言挙げせぬ神代に存在して居たのである。
 今や天運循還、百度維新、東西古今の文物は翕然として神洲帝国に糾合され、世界人は斉しく神機の大なる発動を待望して居る。而して此の混沌たる世界を救ふの道は唯日本固有の大精神たる皇道を天下に実行するの外無いのである。
 吾が大日本武道は神の経綸、皇道の実現のために惟神の人体に表はされたるものであつて、蔵すれば武無きが如く、発すればよく万に当る兵法の極意を尽すものである。
 昭和維新の大業は政治経済のみでもゆかず学術のみでもゆかず、又精神のみでも充分ではない。吾々は神より下されたる真正の大日本武道を天下に宣揚して此の大業成就の万分の一の働きを相共にさして頂きたいのである。神より発したものは神に帰る。
 真の武は神国を守り、世界を安らけく、人類に平和を齎らすものである。
 願はくは此の意を諒せられんことを。

(池田昭編『大本史料集成 運動編』三一書房、307~308頁)

坪内隆彦