中曽根康弘「日本の主張」

「情けない被保護国の状態」からの脱却

中曽根康弘氏は、1954年に『日本の主張』(経済往来社)において、次のように書いている。
「700に及ぶ米国の軍事基地の制圧により、国の防衛と治安が保たれているという情けない被保護国の状態を、速に脱却しなければならないという現状打破の精神が全国的に漲って来た」、「安全保障条約によって、自衛の能力なき日本は米軍の駐屯を要請し、外国人の税金と外国青年の血によって自国の防衛を外国に委託した。この瞬間からすでに日本は独立国としての対等な発言権を喪失した」


片岡鉄哉「にっぽん第二共和国の構想」

国家目標として名誉を求める

片岡鉄哉氏は「にっぽん第二共和国の構想」(『”黒船待ち”の日本―ゴーリズム国家をめざして』)において、次のように書いている。
「…第一共和国の目標が、動物として生きること、身の安全のみをはかること、物質的繁栄を目指すことにあったとすれば、第二共和国の最高の目標はそれらをすべて超越するものでなければいけない。それは『脱アニマル』、『脱脅威』、『脱物質』でなければいけない」、「経済繁栄の上に国家の目標として名誉或は国威を追求すべきだというにある」、「第二共和国は国防上の自主性を求める」、「私は、日本がソ連の核兵器によるおどしに対抗する為にフランス程度の核武装をするべきだと考える」、「通常兵器による武装が如何に完璧でも、最後の土壇場に来て他国に頼らざるを得ないのでは、全然意味がない。自主性の観点からして意味がないのである」


清水幾太郎「核の選択─日本よ国家たれ」

堂々たる大国となれる

清水幾太郎は、「核の選択─日本よ国家たれ」において、次のように書いている。
「戦後の日本は、国家(軍事力)であることを止めて、社会(経済活動)になった、と私は言った。経済活動の面では、大きく世界に雄飛していると言ってもよい。しかし、従来、海上輸送路の安全を漠然と頼って来たアメリカの軍事力が相対的に低下しつつある現在、日本が自らの軍事力によって海上輸送路の安全を確保しようとしないならば、、即ち、日本が進んで『国家』たろうとしないならば、日本の『社会』も危うくなるであろう」(p.69-70)、「経済力、軍事力、政治力と揃えば、日本は堂々たる大国ではないか。大国たり得る素質を立派に持ちながら、惰性のゆえか、卑屈のゆえか、日本は、世界の真中で故意に身体障害者のように振舞っている」(p.97)、「もとより自衛隊は、根本的に変革しなければならない。自衛隊の改善というより、新しい国軍の創設である」(p.143)、「①独自の核武装 ②西独方式 ③核兵器を保有する米陸軍の新たな駐留 ④米軍の核持ちこみ許可を宣言する、などのどれを採用することも可能である」


石原慎太郎『「NO」と言える日本』

独自の日本的な編成へ

石原慎太郎氏は、『「NO」と言える日本 : 新日米関係の方策(カード)』において、次のように書いている。
「日本に少し防衛を分担させようという声も上がってきている。それなら、その声を傾聴してもいいと思います。ただし、その場合はアメリカとの関係を完全に切らないとしても新規に防衛体制を考えなおしてみるべきだと思うのです。日本はアメリカから与えられたばかばかしいフォーミュラで、今三軍を編成しているけれど、これを全然独自の日本的なものに改め、もっと効率のいいハイテクを駆使した抑止力のある、日本に攻撃をしかけるととんでもないめにあうぞ、という戦術・戦略を顕在化するシフトというものを敷いたらいいのです」、「私算してみたのですが、日本の防衛力の充実を日本独自でするほうが予算的にも現在消費しているほどもかからない」


小林よしのり・西部邁「『自主防衛』への道を塞ぐ親米保守派」

核武装と徴兵制

西部 「自主独立というのは、国民の歴史という土台の上に独立しよう、国家の国柄を自主的に表現していこうということですね。そういう国家観に立って『自主防衛』と言うと、日本単独で守ろうとするのは夢物語だ、アメリカに依存するほか術はなしと見るのがリアリズムだ、と親米保守派は反論してくる。…」
小林 「自主防衛の平均的な姿というのは、具体的に言えば、日米安保体制を日本の自主性を発揮できる方向で、つまり司法制度や情報連絡網や訓練体制の面で日本の発言権を高める形で、組み直しつつ維持すること、中国との不可侵条約を模索すること、韓国および台湾との軍事協力を日本のイニシアティヴで推し進めること、といったことになるに違いない。…」
西部 「仲間たるアメリカから要請されて集団的自衛に赴くのではなく、自分からそれを構想し遂行するということですね。そのための第一歩として対米依存から脱却が必要である、という理路がどうしてわからないのか。…」
小林 「…アメリカの武断主義に掌が痛くなるほど拍手を送っている連中が、いざ日本のことになると、核武装についても徴兵制についても知らん顔だ。…わしらは、『アメリカの武断は野蛮人の所業だ』と言いつつ、『日本のような大国が核武装と徴兵制を敷くのは世界の常識だ』と公言している」

坪内隆彦