塩崎恭久氏の厚労相就任で再び迫る派遣法改悪の危機

 2014年9月3日の内閣改造で、パソナの接待施設「仁風林」に出入りしていたとして厳しく批判された田村憲久氏に代わって、「売国的市場原理主義者」とも呼ばれる塩崎恭久氏が厚生労働大臣に就任したが、23日付の『東京新聞』は、政府は臨時国会に、労働者派遣法改正案を再提出する方針を決めたと報じている。再び、派遣法改悪の危機が迫って来た。
『月刊日本』6月号に掲載した大原社会問題研究所名誉研究員の五十嵐仁氏のインタビュー記事「労働者を食い物にする経営者・政治家・御用学者」の一部を引用する。
〈五十嵐 これまで派遣労働には、常用雇用の代替にしてはならない、また臨時的・一時的な業務に限定するという大原則がありました。今回の改正案はこの原則を変える大転換であり、一生派遣労働に従事する「生涯ハケン」に道を開くことになってしまいます。

現在、企業が同じ業務で派遣を利用できる期間は3年間に制限されています。ところが改正案では、企業は派遣してもらう人を入れ替えれば、3年経っても同じ業務に派遣労働者を使い続けられるようになります。
また、派遣労働者は3年経過すれば派遣先企業が直接雇用することになっていましたが、企業はその人の業務内容を変えれば、3年経ってもそのまま派遣労働者として使い続けることができるようになります。
恒常的に仕事があり、その労働者を使うのであれば、派遣ではなく正社員とするのが当然でしょう。にもかかわらず、労働者を入れ替えてその仕事を続ける。労働者の方は別の業務で派遣労働者として働き続けることになる。労働者にとっては、不安定な細切れ雇用で技能の蓄積が断ち切られることになります。
法案では、「過半数労働組合から意見を聴取した場合には、さらに3年間派遣労働者を受け入れることができる」とされていますが、労働組合の意見が歯止めになるとは思えません。現在の状況を見れば、労働組合は経営側の意向に抵抗できないからです。
── 厚生労働省は、なぜこうした法案を受け入れたのでしょうか。
五十嵐 昨年の参院選で与党が勝利し、衆参両院の「ねじれ」を解消した安倍政権は、内閣支持率の高さに支えられて徐々に安倍カラーを強め始めました。昨年8月20日に労働政策審議会の職業安定分科会労働力需給制度部会が「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」を出したのが、その表れの一つです。
その後の議論の過程で、規制緩和推進派は厚労省に強い圧力をかけていたように見えます。例えば、昨年12月に開かれた規制改革会議雇用ワーキング・グループ会議で、大田弘子氏は厚労省の富田望課長に対して再考を促すよう注文をつけ、稲田朋美内閣府特命担当相も「今回、規制改革の意見が反映された部分はどういうところなのか」と圧力をかけています。〉

坪内隆彦