東洋の宗教的価値を称揚した岡倉天心は、慈悲・寛容の精神とともに調和の精神を重視した。そんな天心は、神道・日本精神についてどう語っていたのか。
天心の著作の中の神道・日本精神を紹介しておきたい。まず、『東洋の理想』からである(翻訳は村岡博訳『東邦の理想』による)。
| 1 | 「歴史の曙光と共に大和民族は、戦に勇猛に、平和の文芸に温雅に、天孫降臨と印度神話の伝説を吹き込まれてゐて、詩歌を愛好し、婦人に対して非常な敬虔の念を懐いてゐる、こぢんまりした民族として現れてゐる」 | 32頁 |
| 2 | 「印度のトーラン[鳥居に似た仏寺の儀式用門]を多分に想起させる鳥居や玉垣のある清浄無垢な祖先崇拝の神聖な社である伊勢の大廟及び出雲の大社はその原型の侭に二十年毎に若さを新たにして、簡素な調和美しく、太古の姿をその侭に保存せられてゐる」 | 34頁 |
| 3 | 「我が民族的誇と有機的統一軆といふ盤石は、亜細亜文明の二大極地より打寄する強大な波涛を物ともせず千古揺ぎなきものである。国民精神は未だ嘗て圧倒せられたることなく、模倣が自由な創作力に取つて代つたことも決してなかつたのである。我々の蒙つた影響が如何に強大なものであつても、常に之を受入れて再び適用するに十分有り余る程の精気を備えてゐた」 | 35頁 続きを読む 岡倉天心の日本精神(1) 『東洋の理想』 |








