「著作/文献」カテゴリーアーカイブ

岡倉天心の日本精神(1) 『東洋の理想』

 
 東洋の宗教的価値を称揚した岡倉天心は、慈悲・寛容の精神とともに調和の精神を重視した。そんな天心は、神道・日本精神についてどう語っていたのか。
天心の著作の中の神道・日本精神を紹介しておきたい。まず、『東洋の理想』からである(翻訳は村岡博訳『東邦の理想』による)。 

「歴史の曙光と共に大和民族は、戦に勇猛に、平和の文芸に温雅に、天孫降臨と印度神話の伝説を吹き込まれてゐて、詩歌を愛好し、婦人に対して非常な敬虔の念を懐いてゐる、こぢんまりした民族として現れてゐる」 32頁
「印度のトーラン[鳥居に似た仏寺の儀式用門]を多分に想起させる鳥居や玉垣のある清浄無垢な祖先崇拝の神聖な社である伊勢の大廟及び出雲の大社はその原型の侭に二十年毎に若さを新たにして、簡素な調和美しく、太古の姿をその侭に保存せられてゐる」 34頁
「我が民族的誇と有機的統一軆といふ盤石は、亜細亜文明の二大極地より打寄する強大な波涛を物ともせず千古揺ぎなきものである。国民精神は未だ嘗て圧倒せられたることなく、模倣が自由な創作力に取つて代つたことも決してなかつたのである。我々の蒙つた影響が如何に強大なものであつても、常に之を受入れて再び適用するに十分有り余る程の精気を備えてゐた」 35頁 続きを読む 岡倉天心の日本精神(1) 『東洋の理想』

明和事件の真相─「大弐が幕府に恐れられた理由」『月刊日本』2013年9月号

 『月刊日本』の連載「明日のサムライたちへ 志士の魂を揺り動かした十冊」で山県大弐『柳子新論』を取り上げています。
2013年9月号には、「大弐が幕府に恐れられた理由」と題して、大弐が死罪となった明和事件の真相について迫りました。

『皇極経世書』で宇宙論的歴史観を展開した邵雍

 若林強斎先生の『雑話筆記』には、「易ノ先天の図も邵康節・朱子ノ手ヘワタツテコソ明ニラツ……」とある。
「邵康節」とは、北宋時代の儒学者、邵雍のこと。彼は李挺之から『易経』の河図洛書と先天象数の学を伝授された。先天象数とは、易卦の生変に関する学説に基づく次序や方位によって八卦、六十四卦を配した図。
邵雍は『皇極経世書』で壮大な宇宙論的歴史観を展開した。
なお、『皇極経世書』については川嶋孝周氏による『易學案内―皇極経世書の世界』がある。

連載・山県大弐『柳子新論』①「『柳子新論』を伝えた勤皇僧・黙霖」

 『月刊日本』の連載「明日のサムライたちへ 志士の魂を揺り動かした十冊」、平成25年7月号で『靖献遺言』は完了し、8月号より山県大弐の『柳子新論』に移りました。初回は「『柳子新論』を伝えた勤皇僧・黙霖」です。
吉田松陰が討幕論に到達する過程で、『柳子新論』は重要な役割を果たしました。そして、『柳子新論』の思想を松陰に伝えたのが宇都宮黙霖です。

『強斎先生雑話筆記』研究会①

 折本龍則君とともに継続してきた『靖献遺言』研究会の新たな展開として、若林強斎の発言を高弟山口春水がまとめた『強斎先生雑話筆記』の研究会を、開始します。
テキストは、『神道大系 垂加神道 下』(近藤啓吾先生校注)に収められたものを使用します。