最近、『月刊日本』編集長の坪内隆彦氏が、『維新と興亜に駆けた日本人』を上梓された。まだ全編を読んでいないが、少しく感想を書いてみたい。
「歴史は人が作る」という言葉がある。また、イギリスの歴史学者カーライルは「歴史とは偉人たちの伝記である」と言ったという。私はこの書を読んでまさにその通りと思った。明治維新から大正期までの日本歴史を作ってきた人々・偉人たちのことが綴られている。
この書は近代日本の人物を語る根底に、「神武肇国の精神」を置いている。これは実に画期的なことであり、この書が正統なる人物思想史であることを証ししている。
坪内氏は、「わが国が西欧列強に対峙した時代に肇国の理想を現代において実現しようとした先駆者」を取り上げたと書いてゐる。即ち、この書に取り上げられている人々は単に「歴史を作った人たち」でもないし、一般的意味の「偉人」でもない。肇国以来の維新の道統を継承し実践してきた人々が取り上げられているのである。明治大正期における維新の戦いの先達の人物と思想を紹介している。
維新の道統を論じている。特に「序論」は、明治維新を実現した思想的基盤、徳川期の尊皇愛国思想の歴史が多くの思想家たちの原典を渉猟しつつ葦津珍彦・影山正治・中村武彦・三上卓・里見岸雄・山本七平・佐藤優の各氏などの論を引用し的確に記されている。三上卓氏が、高山彦九郎の精神を継承し、それが五・一五事件の思想的原動力になったということはこの書によってはじめと知った。
坪内氏は、「昭和維新とは、大化の改新の完遂であると同時に、建武の中興の完遂でもあった。そして、昭和維新とは、未完の明治維新の完遂でもあった」と論じている。全く同感である。日本的変革=維新は永遠に継承され、繰り返されるのである。まさに「永遠の維新」「復古即革新」である。
この書は、単なる人物論ではなく画期的な維新思想史である。
「四宮政治文化研究所」2011年11月19日
http://shinomiya-m.txt-nifty.com/diary/2011/11/post-139b.html