ランカウイのペルダナ美術館

ギフトを国民と分かち合う
 1981年の就任以来、マハティール首相は確固たる外交路線を定め、意欲的に世界を飛び回ってきた。当然、外遊時にはマハティール夫妻に各国要人や関係者等から多くの記念品やギフトを贈られる。
 だが、マハティール首相はそうしたギフトが自分に贈られたのではなく、マレーシア国民に贈られたのだという認識を持っている。だからこそ、それらを個人の所有物にするのではなく、マレーシア国家のものとして国民と共有したいと願っているのである。こうしたマハティール夫妻の強い願いによって誕生したのが、ペルダナ美術館(Galeria Perdana)である。ペルダナ美術館のパンフレットには、「ギフトを人々と分かち合うために設立された」と謳われている。設置されたのは、マハティール首相ゆかりの地ランカウイ。
 2002年7月、筆者はペルダナ美術館を訪れた。モスク風の天井の美しいステンド・グラスが目を引く。美術館は現在2階建てで、総面積5332平方メートル。ゆっくり回れば約2時間はかかる。木製や皮革製の伝統工芸品、人形、織物、塗り物、毛皮、金・銀・銅・鉄・ピューター製の贈物などがきれいに陳列されている。外国からだけでなくマレーシア各州要人からのギフトも展示されており、その数は5000点を越える。

天皇陛下からの贈り物も
 中央アジア諸国からの毛皮の衣服や日本のよろい兜なども展示されている。ほとんどのギフトは、贈られた国と時期だけで、贈り主の表示はないが、いくつかには贈り主が表示されている。その中に、旭日大綬章に合わせ、1991年9月30日に天皇陛下から贈られた銀製の花瓶と写真立てがある。また、橋本首相(当時)が贈ったも木製の箱も展示されている。日本との関係では、三菱自動車工業のディアマンテのほか、いすゞやダイハツの自動車も展示されている。
 
 東アジア、イスラーム諸国、非同盟諸国重視というマハティール首相の外交路線を反映してか、首相の外遊先はアジア・アフリカが多い。そのため、贈り物もそれら地域からのものが多いという印象を受けた。日本、中国、韓国、東南アジアの周辺国、イランなどのイスラーム圏、ジンバブエなどのアフリカ諸国からの伝統工芸が多くを占める。まさに、ペルダナは、アジア・アフリカ伝統美術館とも呼びうるわけで、多くのマレーシア人学生も、アジア伝統文化にふれるために美術館を訪れる。美術館側はいずれ、国やテーマ別の特別展示なども企画したいとしている。
 また、美術館には、マハティール夫妻の若い頃の写真や肖像画も展示されており、入り口近くにはボールペンやTシャツなどの記念品を扱ったお土産屋もある。

坪内隆彦