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忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 二

二、神からの贈り物と奉還思想
 「君臣相親みて上下相愛」する国民共同体を裏付けるものは、わが国特有の所有の観念である。皇道経済論は、万物は全て天御中主神から発したとする宇宙観に根ざしている。皇道思想家として名高い今泉定助は、「斯く宇宙万有は、同一の中心根本より出でたる分派末梢であつて、中心根本と分派末梢とは、不断の発顕、還元により一体に帰するものである。之を字宙万有同根一体の原理と云ふのである」と説いている。
 「草も木もみな大君のおんものであり、上御一人からお預かりしたもの」(岡本広作)、「天皇から与えられた生命と財産、真正の意味においての御預かり物とするのが正しい所有」(田辺宗英)、「本当の所有者は 天皇にてあらせられ、万民は只之れを其の本質に従つて、夫々の使命を完ふせしむべき要重なる責任を負ふて、処分を委託せられてゐるに過ぎないのである」(田村謙治郎)──というように、皇道経済論者たちは万物を神からの預かりものと考えていたのである。
 念のためつけ加えれば、「領はく(うしはく)」ではなく、「知らす(しらす)」を統治の理想とするわが国では、天皇の「所有」と表現されても、領土と人民を君主の所有物と考える「家産国家(Patrimonialstaat)」の「所有」とは本質的に異なる。 Continue reading “忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 二” »

山口鋭之助と『本学』

 山口鋭之助は文久2年2月9日に出雲国(現・島根県)松江で生まれた。東京大学理科大学物理学科卒業後、第一高等中学教諭を経て、明治30年京都帝大教授となり、その後学習院院長、宮内省図書頭、宮中顧問官などを歴任した。
物理学に関する著作を刊行する一方、『本学』の監修者として、皇道思想の普及に尽力した。『山陵の研究』(大正12年)、『明治大帝御製訓』(昭和10年)、『祭政一致皇道の教学』(昭和12年)、『世界驀進の皇道経済』(昭13年)など、國體、皇道に関わる著作も遺している。
画像は、昭和12年12月15日に発効された『本学』第1・2合併号。