東南アジア料理論⑯

酸味野菜

フィリピンの酸味スープ(16日目)

ベトナムのカン・チュアに相当するフィリピンのスープが、シニガン(sinigang)である。
具によって日本の味噌汁感覚にもご馳走にもなるスープで、もう一つの代表的なスープ、ニラガンとともに高い人気を誇っている。シニガンは、カン・チュアと同じように魚醤(パティス)で味を整えるところが特徴である。もう一つの特徴は、米のとぎ汁を入れること。こうすると、味にまろやかさがでるのである。
青トウガラシ、魚醤を使う典型的な東南アジア・スープだが、それほど辛くはない。フィリピンの料理は、次章で述べる通り、一部地方を除いてそれほど辛くないのである。これは、インド文化の影響の及び方とも無関係ではない。 
いずれにせよ、暑いフィリピンで食べるシニガンの酸味のきいた味は最高だ。タマリンドがない場合には、レモンでも代用できるがやはりタマリンドのコクのきいた酸味は出せない。


Manong Ken’s Carinderia:
Featured Recipe of the Weekより
 スープ単独で食べてもいいが、通常は皿に盛った白いご飯にかけて食べる。このとき、パティスを少しかけるといい。メインの具には、豚肉、牛肉、魚、エビと何でも使えるので、あきることはない。
さしあたり、フィリピン料理研究家のティ・京子氏のシニガンの料理法を紹介しておく。

洗ったタマリンドをホーロー鍋に入れ、かぶるくらいの水を加えて火にかける。煮えてきたらフォークでつぶしながらよく酸味を出し、漉しておく。別鍋に米のとぎ汁を入れて火にかけ、沸いてきたらタマリンドの酸味液を加え、トウガラシと青菜以外の野菜を火の通りにくいものから加える。有頭海老または魚を入れ、ザッと火が通ったら魚醤油で味わ整える。最後に青菜を加えて火からおろす。

材料
米のとぎ汁……5カップ
トマト……1個
タマネギ……1個
シータオ……5~6個
オクラ……5~6個
カンコン(エンサイ)……1束
タマリンド……200グラム
魚醤油…… 少々
トウガラシ……1本
魚、海老、肉など……約500グラム
(『熱帯アジア14カ国の家庭料理』)

これはあくまで一例で、味噌汁と同様、好みに応じていろいろな材料を加えていい。大根を入れることも少なくない。また、海老、魚のシニガンの場合には、好みでショウガを入れてもいい。
東南アジアのスープの真髄を知るには、タイのトム・ヤム・クンだけでなく、フィリピンのシニガンを是非味わってみたい。

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