韓国新世代の対日認識
韓国の新世代の日本認識に変化が見られるようになっている。こうした中で、韓国出身の国際経済学者・権俸基(クォン・ボンギ)は、韓国の新世代を対象に日本についてのアンケート調査を行なった。
注目すべき点は、調査を受けて、日本が韓国・アジアとの交流と相互理解を進める上で、長い間欠落していたアジア的価値とその心に目を向けなければならないと主張している点である。
1959年にソウルに生まれた権俸基は、韓国高麗大学を卒業後、総合商社の企画室で勤務した。その後来日し。1993年に広島大学大学院社会科学研究科博士課程を修了した。現在、彼は呉大学(2009年4月から広島文化学園大学)社会情報学部教授を務めている。
このアンケートは、「国際的情報発信とその受容に関する事例研究」の一環として1999年10―12月に実施されたもので、韓国では大邱、大田などの都市に住む高校生570人、大学生910人、社会人59人にきいた。
「日本の文化や芸術と西洋のそれとはどちらがなじみやすいか」の問いには63%が「日本」と答え、「西洋」の16%を大きく上回った。関心を持つ分野は「最新の流行」が729人で最も多く、「社会文化・生活」「留学・観光・就職」の順。「観光、訪問で相手国を直接体験したいか」と尋ねると、91%が「希望する」。英語以外で学んでみたいと思う実用的な外国語として、64%が日本語を挙げ、しかも59%が実際に学んだことがあると答えた(『中国新聞』2000年4月26日付朝刊)。
韓国新世代の日本観の特徴は、学校や家族での教育より、マスコミの情報に大きな影響を受けている点である。韓国の若い世代は古い世代とは異なる対日認識を持つようになっているわけである。この点は、呉大学は2000年4月に実施した日韓意識調査でもはっきりした。つまり、従来の価値観に左右されず、先入観から脱皮し、自分の価値観を自分の体験によって再構築しようとする新しい世代の登場という新しい動きが浮き彫りになったのである。
またこの調査では、「互いに相手国についての知識の乏しさ」、「見つめ合う2国の視線の高さと方向の違い」も明確になった。つまり、韓国は日本の経済、社会に対し、極めて高い関心を持ち、注目し続けているのに対して、日本の視線は欧米に向けられ、韓国を含むアジアの理解において日本的な価値基準で評価する傾向がある。
この調査報告を踏まえて、権は日韓の効果的相互理解・交流推進のための5S(student、soft、smart、speed、system)を提案している。
その内容を権は、次のように説明する。「交流推進プランは、次世代の主役である若い世代(スチューデント)を中心に、内容も堅苦しいものよりソフトな面から、方法も形式的・暗いイメージではなくスマートに、また時代に符合する積極的なスピードで、一回性的な催しものや思いつきを脱皮、システム化し、持続して展開すべきである」(『中国新聞』2000年6月3日付朝刊)。
権は、2006年に尹光鳳、李東碩、羅星仁らとともに『草の根の日韓21世紀共同体―文化・経済・環境からのアプローチ』(溪水社)を刊行、新しい歴史共同体構築を総合的に提案している。