『月刊日本』が若者奮起させる新連載を開始
2012年 7月 24日 00:24 【取材ニュース】 <メディア> <哲学・宗教> <歴史>
高橋清隆
米国を批判できるわが国唯一の保守系言論誌『月刊日本』が、国難を救うべく若者を奮起させる新連載を8月号から始めた。思想研究者で同誌編集長の坪内隆彦氏の「明日のサムライたちへ」と題する論考で、日本人の魂を奮い立たせる古典10冊を紹介していく。
この連載は、政治への不満が歴史的に高まっているとの認識から企画された。わが国では国難に直面したとき、必ず原点に戻って国を立て直そうという運動が起きてきた。大化の改新や建武の中興、明治維新もそうで、そこには常に「怒れるサムライ」の存在があった。
執筆者の坪内氏は、各分野の伝統を破壊するTPP(環太平洋経済連携協定)を推進する勢力が権力を維持し、消費増税をめぐって民主・自民・公明の各党が手を組むのは「日本の国体の理想を忘れてしまっているから」と糾弾する。
取り上げる10冊は、山鹿素行の『中朝事実』や本居宣長の『直毘霊(なおびのみたま)』、頼山陽の『日本外史』、大塩中斎(平八郎)の『洗心洞箚記(せんしんどうさっき)』など。1冊を4回に分けて紹介していく。
連載に当たり、坪内氏は「日本の国体の理想に目覚め、維新に立ち上がる明日のサムライの登場を願って、この連載を始めます。先人たちが残した訳や大意を用いて、できる限り平易に説明しようと思います」と言い添えている。
初回の8月号は「『日本こそが中国だ』と叫んだ山鹿素行」と題し、1669年に著された『中朝事実』の趣旨と時代背景を説明している。「中国」とはシナのことでなく、中つ国、つまり世界が範とすべき中心の国だとの主張である。江戸の儒学者たちは「華夷観念」を信奉し、支那文化にかぶれていた。素行は公然とこれに抗議し、「倫理、道徳という規範が守られているのは日本である」と主張した。
「他国では、自己一身の利害関係から万般の設備が行われているのに反して、日本では天祖を初め、代々の天皇が心から人民を愛し給う至誠が中心となっているからであった。君臣・父子・夫婦の三道が確定すれば、その他の人倫の細目、及び治国平天下の根本はただちに決定する」と素行は結論づけた。
他国に精神の支柱を求める誤った観念が、明治維新後の西洋崇拝を招いた。これは現在への警告でもあると坪内氏は訴える。
「近年では、学者のみならず、政治家や言論人も、欧米のリベラル・デモクラシーに基づいた学説、特に新自由主義的経済学に傾倒し、わが国独自の経済の在り方を忘却してしまっています。まさに、わが国の歴史を知るべきだという素行の志に今こそ学ぶ必要があります」
『中朝事実』は乃木希典将軍が座右の銘とした書でもある。崩御した明治天皇を追って自刃する直前、後の昭和天皇となる皇太子裕仁親王殿下に謁見し、同書を手渡したエピソードが今回は紹介されている。
坪内氏は先に同誌で「日本文明の先駆者」を連載し、昨年『維新と興亜に駆けた日本人』(展転社)を上梓している。今回の連載は若者のみならず、祖国の将来を憂えるすべての日本人に読んでほしい記事である。
http://www.janjanblog.com/archives/77807