高嶋辰彦は、昭和十三年十二月に著した『皇戦 皇道総力戦世界維新理念』(戦争文化研究所)で、次のように皇戦の目的を説いている。
「(支那)事変を体験するに伴ひ逐次認識を明にせる事項の一つは、我が国の戦争即ち皇戦の目的は、我が國體の保護宣揚、即ち我が国ごころを内外に宣べ行ふこと、更に換言すれば我が肇国の大精神を世界に顕現実践して、建国以来の真生命を達成するに在るといふことである。国防に関する一般通年たる人民、国土、資源等を外敵に対して護るとか、その危険を未然に防ぐため、予め脅威を取り除くとか、乃至は自ら力を養ふために国防力要素の不足を獲得するとかいふが如き在来の考へ方では、不知不識の間に皇戦の本義を没却するが如き重大過誤に陥る処が多いのである。……こゝで特に大切なことは、此の国ごころは決して外に対して宣揚するだけではなく、国内に対して同様の作用を必要とするといふことである。国内即ち日本全国民が先づ世界に実践の模範を示し得るだけの国ごころの体得者、実践者とならなければ、対外宣揚の資格と力とがない……」