厚生労働委員会(平成23年12月7日)の会議録
出席委員
委員長 池田 元久君
理事 岡本 充功君 理事 中根 康浩君
理事 長妻 昭君 理事 柚木 道義君
理事 和田 隆志君 理事 加藤 勝信君
理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君
石森 久嗣君 石山 敬貴君
稲富 修二君 大西 健介君
工藤 仁美君 斉藤 進君
白石 洋一君 田中美絵子君
竹田 光明君 玉木 朝子君
長尾 敬君 仁木 博文君
橋本 勉君 初鹿 明博君
樋口 俊一君 福田衣里子君
藤田 一枝君 牧 義夫君
三宅 雪子君 水野 智彦君
宮崎 岳志君 山口 和之君
山崎 摩耶君 吉田 統彦君
あべ 俊子君 鴨下 一郎君
菅原 一秀君 棚橋 泰文君
谷畑 孝君 永岡 桂子君
長勢 甚遠君 松浪 健太君
松本 純君 坂口 力君
高橋千鶴子君 阿部 知子君
柿澤 未途君
…………………………………
厚生労働大臣 小宮山洋子君
厚生労働副大臣 牧 義夫君
厚生労働大臣政務官 藤田 一枝君
厚生労働大臣政務官 津田弥太郎君
会計検査院事務総局第二局長 川滝 豊君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房年金管理審議官) 今別府敏雄君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長) 生田 正之君
参考人
(労働政策審議会会長) 諏訪 康雄君
厚生労働委員会専門員 佐藤 治君
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○池田委員長 これより会議を開きます。
第百七十四回国会、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案につきましては、第百七十四回国会及び第百七十六回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○池田委員長 この際、本案に対し、岡本充功君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。田村憲久君。
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労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
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○田村(憲)委員 ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
修正の趣旨は、第一に、労働者派遣が禁止される日雇い労働者とは、日々または三十日以内の期間を定めて雇用される労働者をいうこととするとともに、日雇い派遣労働の禁止の例外として、雇用機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合等を追加すること。
第二に、違法派遣の場合の派遣先の派遣労働者に対する労働契約申し込みみなし規定の施行期日を、この法律の施行日から起算して三年を経過した日とすること。
第三に、物の製造業務派遣の原則禁止規定を削除すること。
第四に、いわゆる登録型派遣の原則禁止規定を削除すること。
第五に、政府は、この法律の施行後、いわゆる登録型派遣、物の製造業務派遣等のあり方について、速やかに検討を行うものとすること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○池田委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
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○池田委員長 この際、お諮りいたします。
原案及び修正案審査のため、本日、参考人として労働政策審議会会長諏訪康雄君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として厚生労働省大臣官房年金管理審議官今別府敏雄君、職業安定局派遣・有期労働対策部長生田正之君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長川滝豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○池田委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤勝信君。
○加藤(勝)委員 おはようございます。自由民主党の加藤勝信でございます。
このいわゆる労働者派遣法の改正、思い出しますと、昨年の通常国会、二十二年の四月に、いわば強行的な趣旨説明から始まって、その後、二転三転しながら、最後の質疑が資料によると昨年の五月二十八日、それから一年半たっているわけでございます。
私ども、当時も中身については問題が多いという立場でありましたけれども、逆に、こうした法案がそのまま残っているということがいろいろな意味で労働市場にもいろいろな影響を与えている、こういうことを強く懸念していたわけでありまして、きょうは、そういう意味で、こういう議論ができるというのも一つの契機を迎えている、こういうふうに思うわけであります。
まず、この間の派遣労働者の状況、お手元に資料を用意させていただきました。二十年六月というのは、ちょうどリーマン・ショックの前でございます。それから、一番後ろが二十三年六月、最近時点で、毎年一回しかこういう報告は出ておりません。この間に二十一年、二十二年もございますけれども、二十年と二十三年だけお手元にございます。
まず、総数でありますが、二百二万おられた全体の派遣労働者の数が百二十二万になっておられるということであります。それから、ちょっと見にくくて恐縮ですが、黒塗りをしているところでございます。これがこの改正案の規制対象と言われていた部分、二十万人と二十四万、足して四十四万の方が、二枚目はちょっと薄いんですが、二十九万ということで、十五万減っているということであります。
しかし一方で、常用型を見ると、この一番左側の縦軸でありますが、百十五万いた方が七十五万ということで四十万人減っている。さらには、当時言われていた、製造業でも常用雇用なら残りますよと言われた部分が、三十五万が十三万になっているということでありますから、これはいろいろな意味で状況が大きく変わっているわけでありますし、人数的にも激減をしているわけであります。
結果的にこの激減された方々はどこかで雇用を求めているわけでありますけれども、こういう方々が一体どういう形で次の雇用につながっていったのか、その辺をどう分析されているのか、まず厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。
○小宮山国務大臣 今委員が御紹介いただいたように、毎年六月一日現在で派遣労働者数を把握していますが、平成二十年度が二百二万人でしたが、二十一年度百五十七万人、二十二年度百四十五万人、そして二十三年度の速報値では百二十二万人と、減少傾向であるのは事実でございます。
平成二十年まで増加傾向にあった派遣労働者が二十一年度以降減少に転じている、これは、平成二十年秋にリーマン・ショックがございましたので、全体的に経済社会情勢が変化をしたことを受けて減少しているのではないかと考えられます。
提案中の労働者派遣法改正案と派遣労働者の数の傾向との関係については、明確ではないというふうに考えています。
お尋ねの、減少した労働者がいわゆる正社員となったかどうかのデータというのは、正確には把握をしていないんですが、平成二十三年の就労条件総合調査によりますと、三年前から現在までの間に派遣労働者を活用していた業務を自社の従業員で実施するようにした企業、その割合はおよそ二割となっています。
いずれにしましても、この法案は労働者の生活の安定のために必要でございますので、ぜひ、与野党で御議論いただいて、早期に成立をさせていただければと考えているところです。
○加藤(勝)委員 今の御答弁を聞きますと、どういう形の雇用になったのかということについて、いわゆるサンプル的なものも含めて分析も調査もされていないということであります。
当時の議論で、では、どこへ行くんですかと。しかし、労働需要がある限りは何らかの形で、特に直接雇用等になり得ますよ、こういう認識が当時の鳩山総理あるいは長妻大臣等々から再三再四示されたわけでありますけれども、大臣、今、空洞化という言葉が大変指摘をされております。今日の状況においても、まさに労働需要は、要するに、雇用する形態が制約を受けても、そこに労働需要はそのまま存在し、違う形に転換する、こういうふうな御認識は持っておられますか。
○小宮山国務大臣 そこのところがなかなかうまく転換がいかないのが今の現状だという問題認識は持っております。
○加藤(勝)委員 いずれにしても、こういう議論というのは、きちんと分析をして評価をし、ある程度の仮説を立てながら実際にしていき、そして、その仮説が合えば効果が出たということでしょうし、違えばまた変更していく、そういうきちんとした積み重ねをしないと、やはり思い込みで進めることは大変に危険だということを指摘させていただきたいと思います。
他方で、被災地、東日本大震災における失業というのは大変大きな問題でございますが、その被災地において、例えば政府が進めております就労支援事業あるいは雇用創出事業等々について、いわゆる派遣事業者がそれを受託して、さまざまな形で雇用に結びつけていく、あるいは、民間の方々の雇用についても、これは割と日雇い派遣みたいなものも中には含まれていると聞いておりますけれども、それがまさに被災地における雇用に結びついている、こういう新聞報道等がありますが、大臣は、その辺をどう認識されておられますか。
○牧副大臣 被災地における雇用の受け皿をしっかりつくっていかなければいけないという認識のもとで、その時点時点での対応があろうかと思います。とりわけ発災直後、当時の細川厚生労働大臣の判断もあり、派遣先も含めて雇用の受け皿をしっかり掘り起こしていかなければいけないという判断から、当時、派遣元の関係団体等にもお願いをした経緯もございます。その結果を、私、報告も受けております。
この三県で派遣就業を開始した派遣労働者数というのが十月三十一日までの間に一万五百四十七人、日雇い派遣も含めて、派遣という雇用形態によって被災地の労働者の雇用が確保されたという社団法人日本人材派遣協会からの御報告を受けております。
日雇いとしての内訳は正確には把握しておりませんけれども、引き続いて、派遣労働者の雇用の安定というものを被災地においても図ってまいりたいと思っております。
○加藤(勝)委員 今、副大臣おっしゃっていただいたように、まさに派遣という形の雇用形態も、特に被災地においてはかなり活用されているということであったわけであります。
それでは、法案について、修正部分も含めてお伺いをしたいと思います。
まず日雇い派遣について、修正案では、派遣法三十五条の三をさらに修正することで、その幅が広がっております。日雇い派遣の禁止の例外として、そもそも、その前にありました自公政権の法案にもなかった規定でありますけれども、「雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合」についてはこの例外扱いがなされる、こういう規定でありますが、これを読む限りは、いま一つ実感が、具体的なイメージがないんですが、どんなことをイメージされ、どんなような政令の中身になることを想定されるのか、田村修正案提案者にお伺いいたします。
○田村(憲)委員 ただいまの委員の御質問でございますけれども、今回のこの例外として、雇用機会の確保が特に困難と認められる場合として政令で定める場合というものを日雇い派遣の禁止の例外として規定をいたしております。
現場でいろいろとお話を聞きますと、非常にニーズが多い中で、原案ではこういう方々が排除されるということでございまして、その中身でございますけれども、例えば、六十歳以上の高齢者の方々でありますとか昼間学生、学生の方々がよく派遣等々で、日雇いで働いておられるという場合がございます。それから副業として従事する者、例えばダブルワーク等々で、生業はあられるんですけれども、いろいろな御事情で副業をお持ちになられる、休日でありますとか夜間等々でお働きになる方々、それからあとは主たる生計者でない方々、こういう方々を想定しておりまして、具体的内容につきましては、改正案の成立後、労政審の方で御議論をいただいて、その上で政令で定めるものと考えております。
○加藤(勝)委員 確かに、日雇いになる方も、主たる生計者がなる場合と、今お話がある学生の方がちょっと時間があるから働こうとする場合とでは随分違うんだろう、こういうふうに思います。
ただ、日雇い派遣に関しては、例えば適用除外業務に労働者が派遣されているとか、二重派遣があるとか、不透明な天引きがあるとか、特に労働災害の発生が他に比べて多い等々、いろいろ指摘をされていたわけでありまして、その問題は今の政令に定める場合についても該当する可能性もかなりあると思うんです。
これは厚生労働省にお伺いしたいんですが、そういったことに対する是正というんでしょうか、あるいはそういうことが起きないための対応、どんなことをお考えなんでしょうか。
○小宮山国務大臣 御承知のように、派遣の仕組みの性格上も、日雇いですとか非常に短期の労働者について、派遣元が雇用管理責任を果たしにくい仕組みだというふうに思っています。そうしたことから法違反等の問題も生じているので、労働者の保護を図るために、原則として禁止という考え方をとっています。日々または二カ月以内といった余りに短い期間を定めて雇用する労働者派遣を原則禁止する、そのことによって派遣労働者の保護の強化を図るものといたしました。
しかし、今御説明あったように、自民、公明、民主の三党合意で、禁止の対象については、日々または二カ月以内とあるのを日々または三十日以内とするとともに、日雇い派遣の禁止の例外について、雇用の機会が不足し、雇用の確保を緊急に図るべき高齢者や、生活のために派遣労働に従事する必要性に乏しい昼間学生、副業として従事する者、主たる生計者でない者について追加する、その旨の修正案が提出されているところです。
この修正案が可決された場合には、労働者保護の観点から問題が生じないよう、政令の制定など、政府として必要な対応をしっかりと図っていきたい、そのように考えています。
○加藤(勝)委員 何か、質問に対してはお答えいただいたような感じはしないのでありますけれども、必要な対応をするというのは当たり前のことでありまして、具体的に意味のある対応をしていただかなければ、結果的に運用そのものがうまくいかなくなってしまうということにつながるわけでありますから、その辺は、例えば社会保険等々の問題等々、いろいろ対応できる手段があるわけでありますから、しっかり対応していただきたいと思います。
それから、労働契約の申し込みみなし制度について御質問させていただきたいと思います。
改正法の第四十条の六に規定されているわけでありますけれども、そもそもこの議論のときに、採用は自由ではないか、あるいは労働契約の合意原則に反するのではないかというそもそも論においていろいろ議論があったと思いますけれども、その辺についてどういう整理をされておられるのか。
それからもう一つ、違法派遣の中に、適用除外業務への受け入れ、あるいは無許可、無届け事業主からの受け入れ、派遣受け入れ期間制限違反、偽装請負などに該当する場合にはみなしということになるわけでありますけれども、受け入れ期間の制限、これはもう一回、専門二十六業種のことで質問させていただきますが、もう一つは、偽装請負というのは一体何なのかというのはいろいろ議論になって、その解釈をめぐって問題点が指摘をされていたわけであります。そうした意味での明確化とか、また運用の適正化というのは当然必要になってくると思うわけでありますけれども、その辺の実際面での運用における配慮をどう考えているのか。
まずこの二点について、厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。
○小宮山国務大臣 改正法案で盛り込むことにいたしました労働契約申し込みのみなし制度、これはあくまでも派遣先が違法な労働者派遣を受け入れた場合に限定をしていまして、その派遣先に対する一定の民事上のペナルティーを科すものだと考えています。ですから、企業の採用の自由に反するものではないということだと思います。
また、労働契約は、使用者側の申し込みの意思表示、それに対して労働者側がそれを受け入れるという意思表示、そこが合致して初めて成立をするという労働契約合意の原則から見れば、この改正法案では、申し込みの意思表示だけをみなしているにすぎないために、労働者側の意思は尊重されますから、問題は生じない、そのように考えています。
偽装請負との関係は、特に規制を強化すればするほど、またそちらの方へ逃げてしまうという問題もあると思っておりますので、そうしたところについてはしっかりと、派遣元、派遣先とそれから労働者の意思などについて、ちゃんと労働者が自分の意思でしっかりと働いているかどうかなどについて、実態をチェックしていきたいというふうに考えています。
○加藤(勝)委員 今おっしゃるように、一種の民事的な意味でのペナルティーだ、こういうことになれば、やはりペナルティーである以上、どういう場合にペナルティーがかかるのか、あるいはかからないのか、その線引きが非常に明確であり、しかもこれは、厚生労働省だけが明確であるのではなくて、派遣をする派遣元はもちろんでありますが、派遣先、さらには派遣を受ける労働者の方々がよくわかるような形になっていないと、非常に運用において疑義が出てくると、またさっき申し上げた運用そのものに支障が生じてくる、あるいはみなし規定そのものが過度に使われたり、あるいは全く意味のない規定になってしまう、そういうふうに思うわけであります。
そういう中で、この法の施行の時期が三年という形に延長されているわけでありますけれども、これの理由、また、要するになぜ三年間をとったのか、そこについて田村提案者にお伺いいたします。
○田村(憲)委員 今委員がおっしゃりましたとおり、今回の労働契約申し込みみなし規定については、新たな規制を派遣先事業主に適用するということでございまして、そういうことから、特に期間制限を超えて派遣を受け入れた場合、これは例えば、今専門二十六業務のお話をされましたけれども、本人といいますか、企業の方は二十六業務をしているつもりであったにもかかわらず、いろいろと細々とそれ以外の業務をしていたからそれに認められない、そういう見解が労働当局の方でなされているという現状がございます。
また一方で、偽装請負の場合も同じように、そういうつもりがなかったにもかかわらず、見解の相違といいますか、認識が低かった部分もあるのかもわかりませんけれども、そのように労働当局の方から警告を受けるという場合があるわけでありまして、そういう場合にいきなり不意打ちの形でこのような規定が適用されるのではないか、そんな懸念の声があったのは事実でございます。
そういう意味からいたしまして、違法派遣の是正につきましては、一定の規制を及ぼすことは必要だというふうには考えますけれども、このような、事業主から強い懸念があることを勘案すれば、この法律の施行に当たって十分な期間をとることが必要であるというふうに考えたわけでありまして、そのために規定の施行は法の施行後三年経過後というふうにしたものであります。
なお、法律施行までの間は、政府においては、制度の運用について関係者の意見を踏まえた上で検討を行うとともに、必要な周知徹底を図ることに努められるようにということで期待をいたしております。
○加藤(勝)委員 いわば、そのみなし規定がしっかり運用されるための準備期間、こういうことで三年間確保したということですね。
続きまして、いわゆる派遣料金の明示義務というのが第三十四条の二ということで定められているのでありますが、この条文を読むと、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める額を明示しなければならないと、すべて厚生労働省令に委任をされているわけであります。しかも、そもそも、派遣労働者に係る労働者派遣に関する料金、こういう規定になされているわけでありまして、これを読むと、一人一人の派遣労働者ごとにその料金を明示するかのごとくにも読めるわけであります。
もちろん、一人しか派遣していなければそれはそのとおりでありますけれども、ある程度の数の方を一つの企業に派遣するということだって十分に想定できるわけでありまして、余り個々にということになると相当な煩瑣な事務になるのではないか、あるいは、一人一人を出すことが本当にいいのかということも指摘をされているわけでありますが、これの具体的な運用、もっと言えば、厚生労働省令でどのように定めることを考えておられるのか、答弁をお願いいたします。
○津田大臣政務官 加藤委員にお答えを申し上げます。
派遣労働者がみずからのマージン率を把握して適切な派遣元事業主を判断できるようにするためという、このことで派遣労働者に対して派遣料金の明示を義務づけることにしたわけでございます。
マージンというのは、ある面では適切なマージンというのは必要でございます。当然、いわゆる社会保険事業主負担でありますとか、あるいは一定の利益、あるいは事業を遂行するための費用等々あるわけでございます。
明示する派遣料金を、対象となる個々の労働者派遣に係る派遣料金の額とする考え方もあるわけでございますが、派遣元事業主の事務的な負担が著しく増加する。今御指摘いただきました。あるいは、個々の派遣料金額の明示により、派遣料金収入が減少をすることもあるのではないか。これは、いろいろな意味で、市場競争の中で、明示をすることでかえって派遣労働者の賃金が低くなることもあり得るのではないかという意味でございます。そういう懸念があるということも踏まえて対応しなければならないというふうに考えているわけでございます。
個人が派遣料金とみずからの賃金の差額を計算して適切な派遣元事業主かどうかを判断できるようにする、このためには、派遣料金の平均額を明示して、みずからのおおよそのマージン率を把握する方法でも足りるというふうに考えるわけでございまして、三党の協議の結果を踏まえて、厚生労働省令を定める際には、派遣料金の平均額の明示で可とする、そのように考えておるところでございます。
○加藤(勝)委員 ありがとうございました。
続きまして、先ほどちょっとお話もありました専門二十六業務に関して御質問をしたいと思うんです。
平成二十二年の三月、四月に、いわゆる専門二十六業務派遣適正化プランということに基づいた指導監督が実施をされました。そのときに、思わぬ悲鳴が上がってきた。きのうまで大丈夫だといったのが突然だめになった等々、指導監督する側とされる側において認識が相当違っていた中に、さらに非常に強い処分が出てきた。これが派遣をする側、される側に対して相当なプレッシャーになった、こういう認識をしているわけであります。
まず、そういった意味で、専門二十六業務に該当すれば、いわゆる三年間という規定がなくなる、ある意味では無制限な派遣というものが可能になっていくわけでありますけれども、そもそも、その二十六業務の中も、例えば、特にIT関係について言うと、五年前であればかなり専門性が必要なものが、その後、いろいろなソフトが出てきてだれでもやれるようになったというようなものも当然あると思います。そういうようなことも含めると、一体どの時点で何を判断するかによって、がらっと結論が変わってくる。
そういうことを考えますと、今の専門二十六業務という規制のあり方、制度のあり方そのものがどうなのかというところにまでさかのぼって議論をしていかなきゃならない、私はこういうふうに思っておりますけれども、その点について、厚生労働大臣、いかがお考えでしょうか。
○小宮山国務大臣 専門二十六業務については、今、委員はITの進化のことをおっしゃいましたけれども、そのほかにも、例えば一般事務と区別がつきにくい事務用機器操作ですとかファイリング、そこをどう区別するかというような、専門性がどこであるのかを判断するというのが非常に難しいことは事実だと思っておりますので、要は、その見直しの検討は必要だというふうに思っています。
今御紹介いただいたように、二十二年の二月から、専門二十六業務適正化プラン、これを策定しまして、事業主団体に適正な運用を要請し、都道府県の労働局で集中的な指導監督を行いました。
今、四件の行政処分、そのほか、派遣元事業主に対して五百七十七件、派遣先事業主に対して三百十四件の指導監督を行ったんですが、今おっしゃいましたように、その二十六業務のほかとの区別がつきにくいことに加えて、この仕組みの持っている、派遣元、派遣先それから労働者とのいろいろな権限の関係も含めて、いろいろ疑問が生じているというのは事実だと思いますので、監督を強化するとともに、やはりその疑問に答えなければいけないということで、専門二十六業務に関する疑義応答集という、その疑問に答えるものをつくりまして、派遣元事業主など関係者に周知を行いまして取り組んできたところでございます。その結果、派遣の適正化は、ある程度というか相当程度図られたというふうには思っています。
ただ、この専門二十六業務に該当するかどうかによっていろいろ取り扱いが違う今の現行制度については、委員の御指摘も踏まえまして、それでいろいろな方から御指摘もいただいているので、必要な見直しの検討をしていきたいというふうに考えています。
○加藤(勝)委員 一般的に、厚生労働行政全般も言えるんですけれども、来られた方によって言うことが違う。前はAさんという人が来たときはよかった、次、Bさんがだめになった、いささかそういう部分はあると思うんですけれども、かなり恣意性があるということが私はあると思います。
だから、そういう意味で、なるべくそうならないように制度をつくっていくということが非常に大事、いわば透明性を高めていく、またある意味では、解釈の安定性を高めていくということがぜひとも必要だと思いますので、そういう仕組みになるようにしっかり見直しをしていただきたいと思いますし、それまでの間は、逆に言えば、不安定な状況であります。
さっき、強化というお言葉を使われたんですが、強化ではなくて適正な監督指導がしっかり行われるように、いわば丁寧な指導とか、それから解釈については、どこへ行っても、だれが来ても統一されるような工夫をするとか、そういう対応をしっかりやっていただくことをお願いしたいと思います。
最後になるのでありますけれども、この派遣の関係については、いわゆる派遣切りあるいは派遣村等、社会問題化したわけでありました。それに対してどう対応していくのか。そのとき急なリーマン・ショック等のいわば経済的なショックが起きたわけでありますが、今後もそういう事態が起きないとも限らないわけであります。
そういう中で、私は、やはりむやみに事業規制を強化して本当に答えになるのか、いわば目の前だけきれいにして、あとごみは外へ外へ、他人の敷地に押し出しているだけではないか、こういう感想を持っていたわけであります。
やはり大事なことは、例えば派遣契約の中途解除をされた場合にはそれに対して何らかの補償をしましょう、こういう仕組みになっているわけでありますが、その補償が実際に行われるのか。しかも、行われる場合に、まさに失業している状態ですから、そのことにそんなに時間やコストをかけられないわけであります。非常に簡易にそういう補償はある程度受けられる、あるいは社会保険や雇用保険に加入することによって公的なサポートが受け得る、あるいはいわゆる能力開発がその間十分行われていないという問題も指摘されておりました。そういった問題に一つ一つ的確にこたえていくことこそが私は大変重要だというふうに思うわけであります。
そういう中で、一つ大事なのは、優良な派遣業者というものをしっかり育成していく、そして、多くの方から見ても、それはいわば自由競争のところがありますから、入り口で絞るわけにはいきませんけれども、ここは安全だよねということがある程度目安がつくような形にしてあげる、これが私は非常に重要だと思うわけであります。
残念ながら、優良人材ビジネス事業者育成推進事業というのがあったわけでありますが、例の仕分けでなくなってしまったんですね。やはり、やり方にはいろいろな問題があったのかもしれませんけれども、そういう試み、いわゆる優良な派遣事業者をしっかり育成していく、どう評価していくのか、そしてそれをどう認定し、多くの方々にそれをわからせていくか、こういう仕組みが私はぜひとも必要ではないか、こう思うわけでありますけれども、大臣のお考えをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
○小宮山国務大臣 私も、ほぼ、委員がおっしゃることはそのとおりだというような認識は持っております。
現在の法律の中でも、派遣労働者の職業訓練の機会を確保することというのはきちんと規定をされておりますし、また、解除に当たっては、新たな就労機会の確保や休業手当等の費用負担に関する措置、そういう必要な措置をとるようにということは定められているわけですが、派遣労働者の方が当然、正規の労働者よりは安定しない状況にありますから、労働者の方にとっていいように、また、おっしゃるように、いろいろときちんとやっていないところをしっかりと指導したりしていくと同時に、きちんとやっている優良なところについては、そうしたところがちゃんとわかるような形のことも必要だと思っております。
働く方に対してもそういう情報提供をすることを含めて、そうしたことで、この派遣労働という形が、当初言われたようなバラ色の働き方とはいかないにしましても、きちんと、今の労働市場の中で、それぞれにとって意義のある働き方になりますように厚生労働省としても努めていきたいというふうに思っています。
○加藤(勝)委員 終わります。
○池田委員長 次に、大西健介君。
○大西(健)委員 おはようございます。民主党の大西健介でございます。
さて、忘れもしません平成二十二年の六月二日、私は、本委員会におきまして、この労働者派遣法に対して当時の鳩山総理に質問させていただく予定になっておりました。しかし、まさにその日、民主党の両院議員総会におきまして総理が辞意を表明されて、私の質問は幻に終わってしまいました。
本日、それから一年半たちまして、再びこの法案について質問の機会をいただきましたことに、理事を初め皆様に感謝を申し上げたいと思います。私に与えられた時間は限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
私は、きょう、政府案を中心に質問させていただきたいと思います。
さて、その鳩山総理、平成二十二年の一月二十九日の本会議、施政方針演説の中でこのように述べられました。「働く人々の命を守り、人間を孤立させない」「労働をコストや効率で、あるいは生産過程の歯車としかとらえず、日本の高い技術力の伝承をも損ないかねない派遣労働を抜本的に見直し、いわゆる登録型派遣や製造業への派遣を原則禁止します。」こういうふうに述べられました。
労働者派遣については、行き過ぎた規制緩和が行われた結果、派遣切り、雇いどめ、こういったことが行われて、多くの労働者が仕事と住まいを失って、大きな社会問題になりました。本改正案は、まさにこうした流れを百八十度転換するという意味において、私は、画期的な法案だったというふうに思います。
他方、あの年越し派遣村からもうすぐ三年目の年末を迎えようとしております。そういう中で、会期末も目の前に迫っております。本法案は、これまで、言葉は悪いですけれども、たなざらしになってきたというふうに思っております。
私は、苦渋の決断ではありますけれども、大幅な歩み寄りをしてでもこの法案を半歩でも前に進めるときが来ているんではないかなというふうに思います。そして、私は、この法案の見直しに当たっては、やはり当事者の意見というのをしっかりと聞いていく必要があるんではないかというふうに思っております。
私の地元、愛知県の西三河地域、自動車産業を初めとする製造業が盛んな地域であります。本年は、三月十一日の東日本の大震災の発生によるサプライチェーンの寸断、それからタイでの洪水、生産の一時中断とその後の挽回のために、生産計画の見通しが極めて立ちにくいという状況が続いております。
一方では、超円高により国内産業の空洞化が加速をしています。超円高、電力不足、それから自由貿易協定のおくれ、高い法人税率、厳しい環境規制等、我が国の製造業が置かれた厳しい状況を表現する言葉として、自動車産業においては、六重苦という表現が用いられています。
残念なことですけれども、この労働者派遣法も、実はその六重苦の一つに数えられております。このまま産業空洞化が進んで国内の雇用が失われては元も子もないというふうに私は思っております。私は、こうした産業界を取り巻く状況というのもしっかりと配慮していく必要があるのではないかと考えております。
ただし、産業界は、柔軟性のある雇用制度とかあるいは弾力的な雇用条件を求めるというのは、考えてみれば当たり前のことであります。ただ、それはあくまで使う側の理屈であって、問題は、やはり使われる側、つまり、派遣労働者自身がどう考えているかということをしっかりと見ていく必要があると思っております。
そこで、お手元に配付いたしました資料をごらんください。
資料一の一番上の円グラフ、派遣労働者の約半分は、登録型派遣という制度自体を肯定的にとらえております。制度に反対という人は一五%しかおりません。
また、一番下の表をごらんください。登録型派遣で働いている人のうち登録型派遣の原則禁止に反対だという人は、賛成の人を大きく上回っています。さらに、登録型派遣を続けたいという人は、全体では三割、日雇い派遣に限って言えば五割に達しています。さらには、常用型に転換したいと逆に考えている人というのは一割強にとどまっています。そして、四割もの人が、政策転換による失業の不安というのを訴えております。
次に、製造業派遣について、資料二というのをごらんいただきたいと思います。左上の円グラフを見ると、派遣労働者のうち製造業派遣の禁止に賛成という人は全体の一割、対して、六七%もの人が禁止に反対と答えています。
次に、資料三、これは日雇い派遣についてでありますけれども、二カ月以内の短期就業において派遣会社が介在する仕組みを、とてもよい仕組み、よい仕組みと答えた人が五割を超えています。反対に、悪い仕組み、とても悪い仕組みと答えた人は、合わせても四%弱にすぎません。
また、就業の実態を見ますと、短期派遣専業という人は全体の一一%。
日雇い・短期派遣で働く一番の理由というのを見てみても、すぐに収入が必要だから、都合のよいときだけ働けるからといった、日雇い派遣という制度を自分の都合に合わせて利用している、そういう理由が上位に挙がっております。
少し長くなりましたけれども、今私が資料でお示しをしたような登録型派遣、製造業派遣、日雇い派遣のそれぞれについて、当事者のこういう声があることを、それから就業の実態を、大臣はどのように感想を持たれたのか。また、すべてではありませんが、こういう声もあるということを踏まえた上での検討というのも必要ではないかというふうに私は考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。
○小宮山国務大臣 今御紹介いただいた調査につきましては、今回の改正法案の中身をどれぐらいお示しした上で聞いたのかとか、前提がちょっとわからない点もございますので、この調査自体へのコメントは避けたいというふうに思います。
この改正法案につきましては、長い期間にわたって公労使の代表が労働政策審議会で現場の実態も踏まえて御議論をいただき、派遣労働者の保護の観点、権利を守る観点から取りまとめていただいたと思っておりますので、今回修正案も出されましたが、今、半歩と言われましたけれども、私どもは一歩前進かと思っていますので、それを成立させることが重要ではないかというふうに私は思っています。
○大西(健)委員 アンケートをするに当たって、法案の内容を十分理解しているかどうか、これは確かに不明な部分があると思います。一方では、こういう法案が出されたということで、いろいろな状況の変化というのもあると思います。先ほど加藤委員からもそういうお話がありました。
資料の四というのをごらんいただきたいと思うんですけれども、これは、自動車の期間従業員が集まらないという記事であります。
先ほども申し上げましたけれども、私の地元では、東日本の大震災の生産のおくれを取り戻そうということで、今現場では非常に残業が続いております。人手不足感というのが出てきております。そういう中で、派遣労働者や期間工の確保が難しいという状況が実は実際に起こっております。これだけ景気が厳しくて雇用環境も非常に悪いのに人が集まらないという皮肉な状況が実際に起こっております。
一つには、リーマン・ショック後の派遣切り、それから期間工の雇いどめ、こういうことを実際に経験した人々が、あんな思いをするのはもう二度と御免だということで敬遠をしているということも言われております。そういう意味では、法律で製造業派遣を禁止する前に、労働者の方が、実は労働者を使い捨てにする企業には人が集まらないというようなことが起きているのが、このことから見てとれるのではないかというふうに私は思います。
もう一つは、この記事の中に書いてあるんですが、企業がインセンティブにしようとしている、例えば正社員への登用とか、あるいは福利厚生、教育制度の充実、これが必ずしも労働者を引きつけることにもなっていないという事実もあります。
私は、こうした現実というのもしっかり見詰めた上で非正規雇用のあり方というのを考えていくことも必要だというふうに思っておりますが、大臣、この記事をごらんいただいてどのような感想をお持ちになったでしょうか。
○小宮山国務大臣 派遣切りとかがないように、リーマン・ショックの後、また大震災の後、厚労省としても努めてきたところですが、そういう意味で、いろいろな理由で派遣の働き方を選んだ方々が途中で意に反して切られることがないように、また、しっかり保護されるようにということが、今一歩前進と申し上げている今回の法改正だというふうに思っています。
派遣法改正案では、製造業務の派遣の原則禁止を定めてはいますけれども、派遣元事業主に常時雇用されている労働者については原則禁止の例外にするということ、また、施行日を公布日から三年以内の政令で定める日と、必要な準備ができるよう十分期間を確保するなど、企業への影響については、そこをしっかりと勘案して規制を行うものとしています。
また、労働者のニーズも踏まえまして、施行までにハローワークでの短期の職業紹介の充実に努めることなど、製造業での人材確保には、しっかりとそれを支援していきたいというふうに思っています。
なお、このたび三党によって提出された修正案では、製造業務派遣の原則禁止を削除して、製造業務派遣のあり方を検討する事項とする旨の内容が盛り込まれていますので、この法改正によりまして、製造業の人材確保に支障を来すことがないように、できる限りその影響が出ないようにということは努力をしていきたいというふうに思っています。
○大西(健)委員 政府案でも猶予期間が置かれている、また修正案においても検討事項になっているということでありますから、私が今申し上げたようなそういう現実の動きというのも見ながら、使う側、それから労働者側、両方の現実というのをしっかりまた見て検討していくことが必要ではないかというふうに思います。
さて、話をがらっとかえたいと思います。
小宮山大臣、突然ですけれども、大臣は派遣業という職業についてどういうイメージを持たれておりますでしょうか。ちまたでは、派遣業というのは労働者からピンはねをして暴利をむさぼっている、そういう批判というのもありますけれども、大臣の個人的なイメージで結構ですので、お答えいただけますでしょうか。
○小宮山国務大臣 個人的イメージと言われましても、私は、放送局で解説委員をしていたころに、この派遣法ができたときの解説も実はしていまして、そのころ十三業種ですけれども、これは、専門能力を生かして働きたい時間に働ける、企業にとっても労働者にとってもよい、バラ色の働き方だというのが最初のキャッチコピーだったんですよね。
ところが、その後、必要に応じてだとは思いますが、十三が二十六になり、そしてネガティブリスト方式で製造業まで広げたことによりまして、もちろん、中でしっかりとやっておられる、労働者のニーズにもこたえ、権利も守りながらきちんとなさっている良質なところもあるとは思うんですけれども、今、特定と一般を合わせますと八万二千を超える事業所があるわけで、そうなりますと、その中で、どうしても営利の方を重視して、労働者の権利を守らないというようなものが出てきている。また、さっきから出ているように、派遣切りというのを安易にするようなところが出てきたり、あるいは、三カ月どころか、一カ月、二カ月でくるくると更新をして保険の適用を免れるというような例もあるのも知っております。
そういう意味では、多様な働き方をしっかりと確保するということと、どういう働き方をしても労働者の権利がちゃんと守られ、保護されるということの兼ね合いだと思っておりますので、これからやはり、本当にこの派遣業務のあり方についてきちんと見直しをしていかなければならない。そういう意味では、今回がその一歩だというふうに考えています。
○大西(健)委員 大臣から、今、労働者派遣法ができたときからの経緯、あるいは悪質な業者も出てきているんだというお話をいただきましたが、この件については、後でもう少し深掘りをしていきたいというふうに思うんです。
先ほど、加藤委員の質問の中でも、マージン比率等の情報提供の義務を今回の法案で課しているというお話がありました。この点、私は大きな前進だというふうに思っておりますけれども、ただ、一方では、まさに悪質な派遣業者が派遣料金の中から不当に多くの割合を受け取っていることが派遣労働の低賃金化を助長しているという批判もあります。
そういう中で、マージン比率というのを法律で規制すべきだという意見もあります。また、今回の改正案、情報提供義務に違反して情報提供が行われなかった場合には罰則というのが設けられておりません。こういう罰則がない中で本当に実効性が保たれるのかという疑問もあります。
マージン比率を法律で規制する方法をとらなかった理由、それから罰則のない情報提供義務の実効性について、御答弁をお願いしたいと思います。
○牧副大臣 大西さんおっしゃるとおり、派遣労働者の待遇改善等々考えたときに、しっかりとマージン率等々の情報公開をしてもらうことが労働者の安心、安全にもつながるわけですし、処遇改善にもつながるわけで、これをできる限り実行していただくということが大前提だと思います。
ただ、派遣業者そのものがすべて、性悪説に立てば、労働者から不当に搾取するという考え方であれば、それはもちろん、法的な規制をかけて罰則を設けるという考え方も一方ではあるんでしょうけれども、この国の成り立ちからして、まずは自主的な企業としてのコンプライアンスを守っていただくということからスタートすることが適切であろうと思います。
そして、これが実行できる派遣元なのかあるいはそうじゃないのかということを派遣労働者自身がきちっと判断していただけるわけですし、そしてまた派遣先の企業も、そういう情報公開がしっかり実践できている派遣元かどうかということをきちっと判断できるわけですから、まずはそこからスタートさせていただければと思っております。
○大西(健)委員 今、副大臣からは、性悪説に立つべきではないというお話もありました。
そこで、それに関連して、お手元の資料五というのをごらんいただきたいんですけれども、これは日本人材派遣協会のホームページに掲載されている資料であります。
「派遣事業主は過剰な利益を得ているわけではありません」と書いてあります。派遣料金から派遣労働者に渡す額を引いたものがそのまま派遣事業主の利益になるわけではなく、そこから社会保険料、労働保険料、販売管理費等を差し引くと営業利益は三%から四%程度しかないというのが、これが業界の主張であります。
私の地元は、自動車産業を初め製造業が盛んな地域ですから、派遣業者というのもたくさんあります。そうした方々から私もいろいろなお声を聞いておりますけれども、そうしますと、大西さん、派遣業というのは、まじめにやっていたら、そんな、めちゃくちゃもうかる商売じゃない、ただ、中には、先ほど悪質なというお言葉がありましたけれども、派遣事業主が本来負担すべき社会保険料等をごまかしているような業者がいる、そういう一部の悪質業者のために、関連法規を守ってまじめにやっている業者が迷惑しているんだという話をよく耳にします。
大臣に先ほど私が派遣業のイメージをお聞きしたときに、大臣からも、中にはそういう悪質な業者が出てきているんだというお話がありましたが、こうした業界の声に対して、これをどういうふうにお受けとめになられていますでしょうか。
○小宮山国務大臣 そうですね、やはり、今あったように、そういう不当な利益を上げて労働者から正当以上に利益を吸い上げているような業者がいることによって、きちんとやっているところの評価が下がるというのは、それは好ましくないと私も当然ながら思います。
そういう意味で、政府としましては、問題がある派遣事業主の違法や不適切な行為、これは是正を図り、また監督指導をしていくと同時に、きちんとやっていらっしゃるところを支援していくというか育成していくということも必要だと考えています。
今回、改正法案に盛り込みました、いわゆるマージン率などの情報公開の義務化、これによりまして、派遣労働者、派遣先が良質な派遣元を選択するという材料にもなるのではないか、そういうふうに思っています。
さっきから申し上げているように、派遣先、派遣元のいろいろな権限が複雑で、労働者がどちらに行ったら自分の権利が守られるのかなかなかわからないという状況があったのを、改正ごとに少しずつそこは改善されてきましたけれども、やはり非常に複雑な仕組みですので、その中で労働者も守られて、きちんと、おっしゃるような良質な、派遣業者も仕事が成り立つようにしていく、そのためにしっかりと取り組んでいくことが大切だというふうに考えています。
○大西(健)委員 今、そういう悪質な業者についてはしっかりと指導監督をしていくんだという大臣のお話がありましたけれども、もう少し、その悪質な業者が何をやっているかという具体的なところをお聞きしていきたいと思うんです。
悪質な業者というのは、よく聞くのは、社会保険料をごまかしている、社会保険料をごまかすことによって派遣料金をダンピングしているという声がたびたび聞こえてきます。
そこで、厚生労働省にお伺いをしたいと思います。
派遣元会社が社会保険に入っているかどうか、その加入状況というのをどのようにチェックしておられるのか、そして、仮に未加入だということが判明した場合にはどういう罰則があるのかということをお答えいただけますでしょうか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
派遣元会社の社会保険の加入状況につきましては、そもそも、労働者派遣事業の許可の基準といたしまして、社会保険に入っているというのが含まれてございまして、派遣事業の新規許可あるいは許可の更新時には、年金機構のブロック本部に対しまして照会をいたしまして、確認をいたしております。適切に加入がされていないときには、新規許可はもちろんできませんし、許可の更新もしないという扱いでございます。
それから、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針あるいは派遣先が講ずべき措置に関する指針という大臣の告示で、指導する根拠がございますけれども、派遣元の指針の中では、社会・労働保険の加入ということが盛り込まれてございまして、入っていない労働者の派遣をしてはならないということが書いてございます。その規定に従いまして派遣元の指導をするということでございます。
それから派遣先につきましても、社会・労働保険に入っている労働者を受け入れるということを前提に、社会保険に加入させてから派遣をするようにというふうに派遣元に言うことができるということになってございまして、そういったことの遵守を図っていきたいと思っております。
以上のような内容につきまして、派遣元事業主に対しまして定期指導ということで定期的に監督しておるわけですけれども、その際に、加入状況の確認などもいたしまして、指導の徹底もして、社会保険の加入をさらに進めていきたいと考えてございます。
○大西(健)委員 今のようなことは、実は会計検査院からもたび重なる指摘を受けられています。きょうは会計検査院の方にも出席をいただいておりますので、会計検査の結果の概要、特にこの派遣の問題についてどういう問題が見出されたのかについて、簡潔に御説明をいただきたいと思います。
○川滝会計検査院当局者 お答えいたします。
会計検査院は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収の適否につきまして、毎年次、重点を置いて検査を実施しております。
お尋ねの派遣業の事業主につきましては、特に平成九年次から十二年次まで重点的に検査を行いまして、その結果、事業主が被保険者資格取得届の提出を適正に行っていなかったために保険料が徴収不足となっている事態を、平成八年度から十一年度までの決算検査報告に掲記しているところでございます。
派遣業の事業主につきましては、その後も検査に取り組んでおりまして、保険料が徴収不足となっている事態を決算検査報告に掲記しているところでございます。
○大西(健)委員 今御説明があったように、何度も指摘を受けているということでありますけれども、こういう検査結果報告というのをちゃんと厚生労働省は見ておられて、それに対してどういう対応をとられているかということ、これについても簡潔にお答えをいただけますでしょうか。
○今別府政府参考人 お答えいたします。
日本年金機構におきましては、全年金事務所で、毎年度、適用促進に係る行動計画というのを定めておりまして、二十三年度は、事業所全体の二割以上を対象にするという目標を立てております。上半期の実績を見ますと、既に上半期で予定をしておりました事業所の二割増しに近い実績を上げております。
具体的に、全事業所から派遣社員がいるかいないかという状況を聞き取っておりまして、派遣社員がいる場合には派遣元企業はどこかということも聞いて、そういう実績を踏まえた上で事業所の選定をするというようなことで効率化を図っております。
引き続き、これらの取り組みによりまして適用の促進に努めてまいりたいというふうに考えております。
○大西(健)委員 いろいろ御努力をいただいていることはわかりましたけれども、引き続き、指導監督をしっかりとしていただきたいというふうに思います。
資料五に戻っていただきたいんですけれども、この円グラフをもう一度見ていただきたいと思います。
右側にスタッフ賃金というのが書いてあります。これが大体七〇%と書いてあるんですけれども、これがすべてちゃんと労働者の手に渡るんだったら私はまだ、言葉は悪いんですけれども、ましだと思うんですけれども、問題は、そこからさまざまな名目で天引きというのが行われているという事実があります。
お手元の資料六という新聞記事をごらんいただきたいんですけれども、部屋代、家具代、制服代等、さまざまな名目で不透明な天引きが行われています。この記事の中にも、大体二十万ぐらいの賃金のうちいろいろなものが引かれて手元に五万しか残らない、あるいはほとんど残らないというような例も書いてあります。これでは、もちろん生活はしていけませんし、到底貯金をすることも無理です。当事者が合意をしているんだからこれは仕方がないんだと言われるかもしれませんけれども、弱い立場にある派遣労働者が天引きを拒否するということは実際には難しいのではないかというふうに思います。
ならば、最低限、例えば、募集や契約の時点でこういうものは天引きをしますよということを事前に明示するというような義務を課すとか、そういった規制というのを考えてはどうかというふうに私は個人的には思いますが、これについての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○牧副大臣 おっしゃるとおり、賃金から不当な控除を行うということはもってのほかでございますので、そういうことも含めてきちっと情報提供が行われるような仕組みを考えておりますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
現に、データ装備費と称して控除を行っていた事案も問題となっておりますし、派遣元事業主が不当に多いマージンを控除しているという指摘やら、上限規制を設けるべきだという御意見も出ておりますので、その辺も踏まえて、適正に考えてまいりたいと思います。
いずれにしても、この情報提供そのものが、それさえできない派遣元というのはいずれこの社会から淘汰されると思いますので、その点も御理解をいただきたいと思います。
○大西(健)委員 副大臣から、こういうことについてもしっかりと目配りをしていただくという御答弁をいただけたと思います。
同じ新聞記事の中には、安易な参入が過当競争を招いているという指摘もあります。「営利目的で安易に参入してくる業者も多い。法律をよく理解せず、違法なことでも平気でしている」という愛知県内の派遣業者の声が掲載をされています。
先ほど、私が社会保険料のごまかしの話をしたときに、役所の方から許可のときとか許可の更新時にちゃんとチェックをしているんだというお話がありましたけれども、許可制の一般労働派遣というのは、許可の更新時に確かに社会保険料の加入チェックをやっています。しかし、届け出制の特定労働派遣は、資産要件もありませんし、悪質な事業主の隠れみの的な存在になっているのではないかというような指摘もあります。
特定労働者派遣が届け出制になっているのは、派遣元に常用雇用されているので一般派遣に比べれば雇用が安定しているということが理由になっていますけれども、この点も、果たしてそうなのか。次の派遣先が見つからない場合に、短期ならともかく、長期間賃金を支払う能力が本当にちゃんとあるのかとか、もしそれが可能だとしても、それをやるためにはかなり高いマージンを取らなければやっていけないということもあります。
私は、個人的には、特定労働派遣も、許可制にすることによってしっかりチェックをかけていくといった参入規制というのも考えてはどうかというふうに思いますが、大臣の御意見をお聞かせください。
○小宮山国務大臣 委員が言われましたように、一般労働者派遣は、中間搾取が行われやすいとか労働者を保護する必要があるということで許可制になっていますが、特定労働者派遣は、常時雇用されているからということで届け出制になっているわけですけれども、その中でも、やはり、一年をちょっと超えるだけとか一年を超える見込みとかいうものも含まれていることもありますので、雇用の安定という面からも問題だと思っています。
労働者派遣事業の許可、届け出制のあり方については、おととしの労働政策審議会の答申でも、引き続き検討することが適当とされていますし、このたびの三党の修正案でも、特定労働者派遣事業のあり方について検討事項とする旨の内容が盛り込まれています。
私も特定労働者派遣事業のあり方は見直していく必要があると考えておりますので、改正法が施行後、その結果もある程度見た一年後ぐらいをめどに、労働政策審議会で議論を開始して、見直しの検討を進めていきたいというふうに考えます。
○大西(健)委員 大臣からは、これは半歩じゃなくて一歩前進なんだというお言葉がありました。
ただ、きょうの質疑で私が申し上げたかったのは、せっかく法律で規制を強化しても、それを遵守させる体制というのがなければ、先ほども言いましたけれども、まじめに規制を守った業者がばかを見て、逆に、これは利用する企業側のモラルの問題もありますけれども、平気で違法行為を行う、使う側にとって融通がきく悪質な業者がのさばるということにもつながっていくと思います。
仏つくって魂入れずということがないようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○池田委員長 午後五時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前九時四十七分休憩
――――◇―――――
午後五時開議
○池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。古屋範子さん。
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。朝の質疑に引き続きまして労働者派遣法改正案の質疑を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。
労働者派遣法が施行されましてから二十年以上が経過をいたしました。労働者派遣制度は着実に発展をいたしております。労働力の需給調整システムとして定着をしてまいりました。
この派遣制度をめぐっては、さらなる規制緩和を主張する意見がある一方で、これまで規制緩和が非正規雇用の拡大をもたらしている、登録型派遣は雇用の安定、能力開発の面でも問題が生じている、また、特に日雇い派遣は雇用が不安定で労働条件も劣悪であるとか、あるいは、製造業等において偽装請負が発生しているなどなど、さまざまな問題点が指摘をされてまいりました。
私たち公明党も、この規制改革の流れをいま一度見直していこうという検証をしてまいりました。特に日雇い派遣の原則禁止については、検討し、いち早く訴えて、形にもしてまいりました。
そして、平成二十二年に提出されて以来、これまで継続となっております今回の改正案でありますけれども、登録型派遣、製造業派遣及び日雇い派遣の原則禁止、あるいはみなし規定の創設等、より強い規制が盛り込まれております。民主党のマニフェストに掲げた項目が、ほぼそのまま反映をされている内容となっております。
私たちも、製造業派遣、登録型派遣の原則禁止については、中小企業経営の人材活用の圧迫であるとか、悪質な労働環境へ移行するのではないかと慎重な検討も進めてきました。
改正案では、派遣禁止によって就業ができなくなる者への支援として、職業安定所における職業紹介事業を充実させていくとかを掲げていますけれども、実際、具体案というのは明示をされていないと思います。改正の目的は労働者保護であることを考えると、派遣労働を過剰に規制することによって、かえって派遣労働者の雇用を失わせてしまう結果になるのではないか、このような懸念がございます。
今回の改正でどれだけの雇用喪失が起きるとお考えか、そして、事業規制の強化が雇用に及ぼす影響、また、どのような労働移動がなされるとお考えでしょうか。大臣にまずお伺いいたします。
○小宮山国務大臣 三党から修正案が出されておりますけれども、お尋ねの政府原案では、登録型派遣や製造業務派遣の原則禁止の対象となる方々はおよそ二十九万人になります。こうした方々が安定的な雇用に移行できるよう支援していくことはもちろん重要だと考えています。
このため、この原則禁止に関しましては、派遣元事業主に常時雇用されている労働者は原則禁止の例外にするということと、施行日を公布日から三年以内の政令で定める日としまして、労働者の雇用の場の確保に向けて必要な準備ができるよう十分な期間を確保しているということ、またさらに、派遣労働者を直接雇用する事業主へ最大百万円を助成する派遣労働者雇用安定化特別奨励金を活用するなどいたしまして、派遣労働者の方の雇用の安定を図りたいというふうに考えています。
○古屋(範)委員 昨年の本会議で、この点、当時の長妻大臣に質問させていただきました。そのときも、ほぼ同じようなお答えでしたね。政策的に直接雇用となるようにバックアップしていきたいとか、また、事業規制の強化が雇用に及ぼす影響は、その時々の景気、雇用情勢にもよりますが、結局、はっきりとした数値というのはわからないというお答えであったと思いますし、ただいまもその点に関しては明言がございませんでした。要するに、その時々の経済状況、雇用状況による、最大、いろいろな政策も使いつつバックアップをしていく、支援をしていく、そういうことなんだろうというふうに思います。
この派遣という働き方、私自身は非常に重要であると考えております。特に、この法案が提出をされ、本会議で審議入りをして、その後何が起きたかといいますと、東日本大震災が発生をしたわけですね。ですので、経済状況や雇用状況というのは、提出したときよりもさらに厳しくなっているわけであります。
ことしの三月の震災発生後、特に、四月においては、前細川厚生労働大臣は、人材関係団体の長を大臣室に招いて、大震災で大量の犠牲者が出て経済的にも大打撃となっている、日本の危機を乗り越えるためにも、人材ビジネスで活躍されている皆さんのお力をぜひおかしいただきたい、このような協力要請までされています。
実際、現地でも、さまざまな知恵を絞り、仮設での見守りですとかそういうことも含めて、業界の方々も、瓦れきの処理、汚染のチェック、こうした、すぐに人材が必要だというようなものに力を入れて取り組んでくださっているわけです。雇用に非常に役立っているわけなんですね。
今回の資料にもございます、派遣労働者及び派遣先の見方ということで、登録型派遣を選んだ理由、これは厚生労働省の調査ですけれども、正社員として働く会社がなかったから、これは四六・三%ですから、消極的な理由としてもちろんある。一方で、自分の都合のよい時間に働けるから、二三・九%、家庭の事情や他の活動と両立しやすい、二一・二%。このような、積極的に派遣という働き方を選んでいる方も多いわけです。
また、派遣労働者また派遣労働の経験者に対するアンケート、登録型派遣については、賛成四一・四%、反対一五・三%。賛成が大きく上回っているんですね。
さらに、製造業の方に参りますと、製造業で派遣労働者、派遣先を対象としたアンケートによりますと、製造業派遣の禁止、派遣労働者の回答を見ますと、禁止に反対五五・三%です。禁止に賛成一三・五%。派遣先の回答としては、禁止に反対八六・一%、このようなことになろうかと思います。
また、製造業の派遣が禁止になった場合、派遣先の回答を見ますと、派遣社員を直接雇用し、有期契約社員に切りかえは六八%であるのに対して、派遣社員を直接雇用し、正社員に切りかえる、これは一六・九%にとどまっております。これが雇う側の考え方でもあるわけなんですね。
派遣者あるいは派遣先双方のニーズというのはこのように非常に多様化をしているわけです。そうしたニーズに対応して、また日本経済を活性化させていくためにも、多様な選択肢が用意されている、この方が私はベターだと思っております。
この労働者派遣制度、さまざまな仕事とさまざまな労働者ニーズを迅速にまた的確に結びつけることにより、雇用の創造と経済の活性化により貢献できる制度だと考えております。
この派遣という働き方、大臣、どう思われますか。
○小宮山国務大臣 今委員もおっしゃいましたように、特に東日本大震災の後、いろいろと雇用の状況、さまざまな状況が悪い中で、派遣の働き方が果たしている役割も確かにあると思います。
午前中も申し上げましたが、最初は本当にバラ色の働き方みたいなことで、十三業種のときに、専門能力を持った方がパートとかよりももっと高い専門能力を評価されて働ける、自分の自由な時間で働けるというやり方だったと思うんですが、次第に二十六業種になり、またネガティブリスト方式で製造業まで入ったことによって、もちろん優良な事業者の方はいいんですけれども、そうでないところも出てきたのだと思います。
ですから、例えば一カ月ぐらいでくるくると、取っかえ引っかえと言ってはいけないですけれども、かえて、社会保険は適用しないようにするとか、それでマージン率も、今いろいろ改正もしてきていますけれども、非常に安い賃金で働かせるというようなこともありましたし、リーマン・ショックの後の派遣切りというようなこともあって、派遣で働く労働者が守られないケース、これはやはり行き過ぎた緩和された部分は是正をしなければいけないということで今回の改正法にもなったと思います。
そういう意味では、多様な働き方の一つとして、しっかりと働く労働者の保護も行われて、それで派遣元と派遣先との関係もしっかりと整理をされて、きちんとした働き方ができるようにしていくということが大切だというふうに考えています。
○古屋(範)委員 派遣切りとか、住まいまでなくなってしまう、そういった問題と、この派遣法そのものの法律の改正、これはごっちゃにしてはならないというふうに思っております。
派遣にかかわるさまざまな問題の原因というのは、まずは、派遣労働の仕組み自体、そのものによるのか、現行の派遣法の不備によるのか、法律が守られていないことがそもそも問題なのか、あるいは働く人と派遣という働き方のミスマッチによるのか、複数の問題があるにもかかわらず原因を全部この法律に押しつける、これは違っているというふうに思います。
修正案の提案者の皆様にお伺いをしてまいりたいと思います。
今回、派遣法の修正案をおまとめになりましたその御努力に敬意を表したいと思っております。特に我が党の坂口さん、両党に働きかけつつ、御苦労されたとも伺っております。
少し前になるんですが、この派遣法の改正につきまして、我が党でもヒアリングを行いました。
まず、全国中小企業団体中央会をお呼びいたしました。このような見解でございました。例えば、こういう会社がある、繁忙期に六十人程度の派遣労働者を受け入れてアイスクリーム類を製造している中小企業の事例を引かれて、正社員六十人もとても雇えない、派遣法が改正されれば会社を閉じるしかない、小さい企業にはそれくらいの激震だという御意見もありました。
また、東京商工会議所の関口理事は、製造業にヒアリングをしたところ、派遣が禁止をされた場合、正社員を雇用するとの回答はなかった、このようにおっしゃっていました。
この登録型派遣の原則禁止、あるいは製造業派遣の原則禁止、修正案ではこれを削除されています。この理由についてお伺いをしてまいりたいと思います。
登録型派遣に関しては、不安定雇用だという指摘もございます。その実態を調べてみますと、就業継続を希望する人の多くが派遣として就業を継続されていて、常用雇用が多いということがわかる。派遣労働者に関しては即不安定雇用であるといった見方が根強く残っているわけなんですが、これもある意味、誤解に基づく認識を変えることも重要かと思います。
また、ヨーロッパの経済危機などの影響で歴史的な円高に今なっております。製造業派遣が原則禁止となれば、雇用者の確保が難しくなって、製造業はますます海外移転をしていく。さらに、これらの派遣が禁止となりますと、製造業務に携わっている九万人、一般事務等の業務にかかわる二十万人、計二十九万人が仕事を失う危険性がございます。
こうした状況を考えますと、今回、民主党が修正案に合意をして、かつて自公政権が提出した改正案に近い内容の修正案となっていることは、私は大いに評価できると考えております。
そこで、この登録型派遣の原則禁止と製造業派遣の原則禁止規定を修正案で削除した理由について、提出者にお伺いをいたします。
○坂口(力)委員 お答えをさせていただきたいと思います。
製造業を含みます登録型派遣の方というのはかなりたくさんおみえになるわけでありまして、そして、登録型派遣を選びたいという人もかなりおみえになります。けさ大西議員から出されましたアンケート調査を見ましても、これは派遣労働者に対するアンケートだと思いますけれども、賛成者が四一・四%、反対が一五・三%、どちらとも言えないが四二・一%、こういう割り振りでございますから、かなりおみえになることは事実でございます。この人たちにとりましてこの働き方がなくなるということは、その多くの人が職を失うということも考えられますので、これは非常に重要な問題だというふうに思っております。
しかし、逆に、この働き方に反対する人も一五%おみえになることも事実でありまして、正規雇用で働きたいというふうに思っておみえになる人の中にも、非正規しか働くことができ得ない、そういう不満を持っていただいている人も多いことも事実でございます。
こういう人たちに対して、今後、どのように手を差し伸べていくかということもあわせてこれから考えていかなければならないというふうに思います。
昔は、国内の働き方におきましては、グローバル社会の現在とは違いまして、企業に対して、このようにすればいい、あのようにすればいいということを言いますと、それに従ってもらわざるを得ないという結果になったわけでありますが、最近はそうではありませんで、グローバル社会ですから、日本の国の中で厳しいことを言いますと、そうすると、国を選んで、諸外国で企業を行うということが行い得る状況になってきたわけであります。いわゆる企業の海外移転というものが非常に多くなってきたゆえんだというふうに思っております。ここのところをこれからどのようにしていくのか、できるだけ国内で企業が生産をする、企業活動をしていただくということを願います反面、しかし、この人たちが外へ出ていくことを阻止することもでき得ないという状況であります。
それでは、国としてやらなきゃならないことは何なのか。一つは、国内で企業が成長しやすい環境をつくる、これはもうどうしてもそういうふうにしていかなければならないと思いますし、また、新しい産業の育成ということも考えていかなければなりません。新しい産業が生まれやすい環境をどうつくっていくかということも重要だというふうに思います。
そして、企業に対しましては、やはり企業責任というものがあるわけでありますから、国内において自信を持って活動していただく、そういう環境を国としてもつくりますから、社会としてもつくりますから、何とかひとつ企業の皆さんも自覚を持って責任のある企業活動をしてもらいたい、こういうことをお願いすると申しますか要請する以外にありません。
そして、最近でも、ホテルでありますとかレストランでありますとか、そうしたところには、三つ星でありますとか五つ星でありますとか、そういう民間の評価も出ているわけでありますから、企業に対しても国民全体がやはり評価をするという時代が来ている。無理に押しつけるというのではなくて、私たちが企業活動のあり方を評価していくということによって、企業もやはり責任ある行動をとってくれるようになるのではないか、そんなふうに考えている次第でございます。
余りしゃべりましてはあなたの時間がなくなりますから、これだけにしておきたいと思います。
○古屋(範)委員 御丁寧な答弁、ありがとうございました。
国としての支援のあり方、しかし、規制強化だけではなく、それは産業の育成であったり、あるいは企業の側の責任であったり、また国民の企業に対する評価、総合的なものからやはり働き方というものを改善していくことが必要なのだ、このように感じます。
次に、日雇い派遣について質問してまいります。
自公政権当時も、日雇いに関してはさまざま議論をしてまいりました。特に、大手のフルキャストとかグッドウィル、こうしたところが、禁止されている港湾運送業務に派遣を行ったなどなど、事業停止等、処分を受けたこともございました。
しかしながら、そういう中で、日雇い派遣というものも、大学生であったり、主婦であったり、副業としている正社員であったり、そういう方々にとっては必要な働き方でもあるということは認めざるを得ないと思っております。
今回、この日雇い派遣の原則禁止の緩和という修正案で、二カ月以内の派遣を三十日以内の派遣にした理由、そしてもう一つ、日雇い派遣の禁止の例外、政令で追加する雇用機会の確保が特に困難な場合等、これについて、具体的にどのような場合を指すのか、お答えをいただければと思います。
○田村(憲)委員 古屋委員から二問御質問をいただきました。
まず、日雇い派遣の禁止対象、これを三十日以内の派遣とした理由でございますけれども、これは、派遣元事業主が労働者に対して適切な雇用管理責任を果たすべき範囲としては、雇用保険の適用基準である三十一日以上ということを一つの目安といたしました。ですから、それ未満、三十日以内の派遣に関しては禁止とするというふうにしたわけであります。
それから、もう一点でありますけれども、雇用機会の確保が特に困難な場合ということでありますが、具体的には、六十歳以上の高齢者の方々、それから昼間学生ですね、学生さん、さらには副業として従事する者ということでありまして、生業があられて、土日、休みのときに働いたりですとか、事情があって夜間働かなきゃいけない、こういう場合の副業、こういう方々、それから主たる生計者でない方、夫が主たる生計者で、奥さん、妻がそうじゃなかった場合、こういう場合を想定いたしております。
○古屋(範)委員 ほかにも、求職中であって、就職活動があってどうしても日雇い派遣という形でしか働けないというような方々もいらっしゃるかもしれません。こうした国会での議論をぜひ政省令に生かしてほしい、このように思っております。
次に、労働契約申し込みみなし制度についてお伺いをしてまいります。
この労働契約申し込みみなし規定、違法派遣等、派遣先で不適切な派遣受け入れがあった場合、その時点で労働者が通告すれば派遣先から労働契約申し込みがあったものとみなす、こういうものであります。本来、契約というのは両当事者の合意によるのが当然なんですが、この規定は、不適切な派遣受け入れがあった場合には、労働者が自分の雇用主は派遣先だと主張すればそのようになってしまう、違反が恣意的につくられるおそれがございます。
この規定が適用される五項目があるんですが、中でも、期間制限を超えての受け入れが一番の問題だと思っております。これによって、期間制限を超えて派遣労働者を受け入れたら、そして、労働者がこのみなし規定を適用して主張した場合、派遣元と労働者間の雇用関係が、派遣先と労働者間の関係に一気に移ってしまうというわけであります。
また、専門二十六業務と自由化業務の区分、これについても、期間制限の問題がどれだけ派遣の実情に合わず、わかりにくい状況なのかは、多くの有識者、関連団体などが指摘をしております。特に、昨年三月以降、長妻大臣当時に出された二十六業務の適正化指導のために、現場は非常に困っている状況でもございます。
平成二十一年答申においても、使用者代表委員から、そもそも雇用契約を申し込んだものとみなす旨の規定を設けることは、企業の採用の自由や労働契約の合意原則を侵害することからも反対だ、あるいは、派遣先の故意、重過失に起因する場合に限定した上で、違法性の要件を具体的かつ明確にする必要があると指摘をされております。
こうしたさまざまな問題が指摘をされているこの労働契約申し込みみなし制度、今回、法の施行から三年経過後に施行するということに修正案が出されています。思い切ってこの規定を削除する、このようには考えられないのかどうか。このみなし規定について、お考えをお伺いしたいと思います。
○田村(憲)委員 労働契約申し込みみなし規定、新たな規制であるわけでありまして、これに関しては、今委員がおっしゃられましたとおり、これは派遣先にかかってくる、そういうものでございますので、派遣先も派遣元もこれは大変危惧をしておる部分であります。特に、不意打ちで、急にだめだからといってみなし雇用という話になれば、これはもう怖くて派遣という一つの形態を選べないというような話も我々も聞いてまいりました。
そこで、三年間は、やはりいろいろとこの問題に関して、議論も含めて、猶予期間をつくるべきではないか。三党で議論をする中において、今委員はこのみなし規定をやめたらいいじゃないかというお話もございましたが、一方で、必要だと言われる党もございますので、そこで、三年間猶予を置いて、そして、そこでじっくり考えながら三年後の施行というものを考えたらどうだということで、このような形になったわけであります。
特に、おっしゃられましたとおり、専門二十六業務の適正化プランというものが大混乱になりまして、この間までよかったものが急にこれはだめだと言われると、もしこのみなし規定とこれが合わさりますと、いいと思っていたものが急にだめ、そして、みなし雇用しなさいという話になると、もう怖くて使えないという話になりますから、これからこの三年間の間に、この運用に関してもそのようなことがないようにしっかりと議論を深めていくという意味での三年でもございます。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
もうそろそろ時間でもございます。真に働く人のための改正、雇用関係の整備を求めまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○池田委員長 次に、阿部知子さん。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日の議題に入ります前に、小宮山厚生労働大臣に緊急のお願いがございますので、通告外ですが、よろしくお願いをいたします。
実は、昨日の報道にもございましたように、赤ちゃんが飲む粉ミルクの中に、セシウムの濃度が三十・何ベクレルという単位で報道されておりまして、これに対して、今大変お母さんたちに不安が広まっております。
もともと、実は私は、八月の三日に、子供たちが飲む乳製品などについて、やはり厚生労働省としてきちんとはかって、表示をして、お母さんがわかるようにすべきだということをお願いしましたが、四カ月たってもまだそのようには実施されておらない。
実は、このケースは、たまたま春日部でつくられたミルクでございまして、三月に製造され、二本松のNGOの皆さんがお母さんたちから言われてはかってみたところ高いということで、明治乳業にまた情報を寄せて、明治乳業の方ではかられたということであります。
子供が毎日飲むもので、確かに三十ベクレル等々は今の許容値の範囲内ではございますが、例えばベラルーシなどでは子供にかかわる食品はすべて三十七ベクレル・パー・キログラム以下。これは、最初にはかったときは、実はこのミルクも五十でありました。極めて微妙なところを動いております。
大臣に早急に、国立食品安全研究所がございますから、ここは抜き打ち調査などをやっておられると思いますから、すべてのミルクについて、厚労省みずからはかって公表される、とにかく不安を増大させないための緊急の措置が必要だと私は思います。
実は、この件は、今筆頭席にお座りの岡本さんがまだ政務官であったころお尋ねし、十五商品、国立医薬品食品衛生研究所ではかっておると。ただ、一回きりなように思います。お茶でもそうですが、抜き打ちでも、はかって高ければ問題にして、私たちはそれが流通に回らないようにしなきゃいけない。ミルクは特に、このまま放置したら、お母さんたち、子供に与えるものについて、混乱と不安が広がります。
早急に全メーカー測定していただきたい。自主に任せないで、自分たちではかっているから、それを公表するように伝えていますということですが、客観性も含めて、今信頼が揺らいでおりますので、御検討いただきたいが、どうでしょう。
○小宮山国務大臣 明治乳業のその粉ミルクの件は、ちょうど三月に原発で事故があったときに、外の空気を入れて製造する過程で入ったというふうに聞いています。
今御紹介あったように、今の数値がすぐに危険なものというか、安全値の中のものであることは確かですが、おっしゃるように、今度新しい規制値をつくる中でも、乳児用のものについては厳しいものにしようと思っていますし、ベラルーシのは、直後ではなくて、十何年かけて今の数値になったとは聞いていますけれども、こちらで今とっているのは、明治乳業の方にしっかりと、消費者の方が不安にならないように、正しい情報をお伝えするようにという指導はしているんですけれども、おっしゃるような御懸念もあるので、どのようにしたらより安心をしていただけるかということは検討させていただきたいと思います。
○阿部委員 この件は、各メーカー任せ、自治体任せでは広く国民の信任は獲得できないと私は思います。子供を抱えたお母さんの不安を考えれば、一刻も早く、そして、先ほど御紹介しましたように、国立医薬品食品衛生研究所ではかる手段はあるわけですから、即刻やっていただきたいと思います。
引き続いて、本題に入らせていただきます。
きょう、午前中、この派遣法についての修正案が出されて、審議のいとまもなくというか、私に与えられた三十分弱の時間で事を決着していこうとする事の運びそのものにも、この問題が本当に今最も大事なことであるのに十分審議がされない、また当事者の皆さんからの御意見も伺えない、私は大変残念でありますし、特に、社民党としては、野党時代から御党とあるいは国民新党と挙げてこのことを求めてまいりました。そういう中での今回の法案審議、あり方も私は異議を申し上げたいし、また、中身についても大きく疑念がございます。
冒頭、大ぐくりなことを伺いますが、この三月十一日の大震災並びに原発事故の後、日本の国全体で見て、経済、雇用、社会情勢、どのように変わったと小宮山大臣は認識しておられますでしょうか。まず冒頭、これをお願いいたします。
○小宮山国務大臣 雇用情勢につきましては、東日本大震災の影響によって、四月に被災三県を除く完全失業率が四・七%、有効求人倍率が〇・六一倍、雇用調整助成金の休業等の実施計画届の対象者がおよそ百八十三万人というように、悪化をいたしました。
その後、サプライチェーンの回復ですとか復旧復興事業の増加などによって求人がふえ、求職者が減少し、十月には有効求人倍率が〇・六七倍など、持ち直してきてはいると思います。
ただ、十月の被災三県を含めた完全失業率は、製造業の雇用調整や求職活動が活発化したことによりまして四・五%と、前月に比べまして〇・四ポイント悪化をいたしましたので、引き続き注視をしていかなければいけない状況だと思っています。
非正規労働者の割合につきましては、リーマン・ショック後低下をしましたが、その後、上昇傾向で推移をしていまして、七月から九月は三五・三%になりましたが、こちらの方は震災前後で大きな変化は見られません。
また、賃金につきましては、平成二十二年に増加傾向で推移していた現金給与総額、これが二十三年三月に減少に転じまして、大震災後の四月に前年同月比一・四%減と減少幅が拡大した後、おおむね減少傾向で推移している。
こうしたことを総合的に見ますと、一部には持ち直しの動きが見られますが、依然として厳しい状況にあるというふうに認識をしています。
○阿部委員 私がお手元にお届けいたしました資料は、正規雇用と非正規雇用の推移ということで、今大臣も一部お触れになりましたが、二〇一一年の集計、ここでは三五・四%となっておりますが、先ほどの御答弁で三五・三%、いずれにいたしましても、非正規雇用率はこれまでで最高値を示してございます。
失業率と申しますのは、非正規であれ正規であれ、求人と求職の差で出てまいりますから、ここに反映されなくとも非正規雇用がふえている。もちろん、失業率そのものも、さっき御答弁のように、被災三県を除いたりいろいろなことがございますから、必ずしも全体をとらまえたデータではございませんが、特に私は懸念いたしますのは非正規労働の増大ということで、このことが逆に私たちの社会の脆弱性を高めていくのではないかということです。
おめくりいただきまして、その次には、先般、戦後この統計をとり出してから最高の生活保護受給率であると、二百五万人であったと思いますが、その数値とともに、一体いかなる世帯が生活保護を受給しておられるかということの累計を出しますと、御病気であったり母子家庭であったり障害があったりということも原因の一つでありますけれども、いずれもふえておりますが、特にふえておりますのが、その他の世帯と呼ばれますもので、これは十年前、平成十二年度と比べますと、当時七・四%、これが累計で一六・二%。簡単に言えば、働く盛りの年代あるいは世帯が生活保護を受給せざるを得なくなっている。非常に社会的に問題が広がっておるのだと私は思います。
そして、そのとき何から手をつけていくべきかというのが本日のこの派遣の問題の前提になろうかと思います。
今まで御質疑の皆様は、雇用、経済情勢も悪いから、その間、例えば派遣でしのぐ、あるいはそこに職があるということも含めて、とにかく働くということに近づけるためにも、派遣のことを今扱って逆に厳しくすべきでないということであろうと思いますが、簡単な言い方で済みませんが、私は、逆にこういう時期だからこそ、これはもう社会の持続可能性にかかわってまいります、非正規雇用が三分の一、生活保護が二百万人以上で、働く世代がそこに行ってしまうというのは、私は、何らかの手だてをしなければならないし、そのための派遣法の改正であってほしいと思います。
以上のことを踏まえて、引き続いて質問に移らせていただきます。
今回、大きな修正案、三党による修正案の一つに、登録型派遣の原則禁止を削除ということがございます。登録型派遣の原則禁止の削除と申しますのは、非常に大きなアナウンス効果があります。これまでの法案では登録型の派遣は原則的に禁止の方向に持っていこう、方向が真逆になる可能性すらあると思います。
特に、私は、小宮山大臣とは女性の働き方ということでこの間もいろいろと一緒にお仕事できたことを幸運に思いますけれども、多くの派遣が、特に登録型、これは専門業種も一般業種もございますが、女性の若年、例えば厚生労働省がおつくりになった資料ですと、女性でとりますと、二十五歳から二十九歳が一九・九%、三十歳から三十四歳が二四・九%、三十五歳から三十九歳が一七・四%と、ここだけ集計いたしましても六〇%弱でありましょうか、まあ五〇%は超えるという値になっております。よく言われるM字型カーブのまさにそのM字に当たる部分が多く派遣で働き、登録型派遣になっておるんだと思います。
こうした実態を大臣はどうお考えになり、今回の登録型派遣の削除ということが、逆にどのような影響を与えるとお考えになりますか、この点についてお願いいたします。
○小宮山国務大臣 今阿部委員がおっしゃったのと同様の問題意識を私自身は持っております。
ただ、今回、ここが削除になったというのは、先ほどからの審議でもありますように、今の、大震災の後のさまざまな雇用情勢の中で、やはり、そこで働いていらっしゃる方の職を奪ってはいけないというような意味合いもあったかと思います。
ただ、問題意識は、今委員がおっしゃったことと私はほぼ同様の問題意識を持っておりまして、生活保護の中でも、やはり、おっしゃったように、働ける、特に二十代、五十代、六十代のあたりの方たちが生活保護になっている。そこのところは、求職者支援とか寄り添うとかいろいろな形でとにかく働いていただきたい。
私は、今回の改正の中でも、労働者を保護する部分は強化をされている部分もあると思っておりますので、しっかりとそのあたりはフル稼働させて、今、全体の社会保障の改革の中でも、多様な働き方とかあるいは格差をなくすとか、いろいろな意味合いで、非正規の方に対する社会保険の適用とかいうようなこともしようとしております。
そうした全体の政策の中で、そういう弱い立場で働く非正規の方、特に、女性の問題としては以前からあったのが、今、こういう働き方が問題になっているのは、男の人もなったから問題になったのだという意識もございますので、特に弱い女性のところについては、この法改正だけではなくて、さまざまに目配りをして、なるべくその働きがしっかりと均等に評価をされるということも含めまして、取り組んでいきたいというふうに考えています。
○阿部委員 きょうは、いろいろな方が派遣労働のアンケート調査の結果をお出しになりました。大臣の御答弁の中では、アンケートというのはそのとり方で変わってまいりますし、どういうものであるのか考慮が必要であるとおっしゃって、私も、そのとおりだと思うんです。
例えば、派遣にかかわります業者の皆さんがとられたアンケートがきょう何人かから御紹介がありましたが、平成二十年、厚生労働省がみずからとられた派遣労働者実態調査結果の概要というものがございます。これは平成二十一年の八月五日に発表されておりますが、約千人余りの派遣労働者に直にアンケートをとりまして、その中で、例えば派遣労働に何を問題と感じておられるかとか、そういうことをとったものでございます。
そういたしますと、先ほど来、御披瀝のいろいろなアンケート結果とは全くと言っていいほど逆さのデータが上がってまいります。
例えば、派遣労働者からの苦情、困ったこととして最も多いのは人間関係やいじめが三九・五%と、同じ職場に身分や立場が違うという方がいることによるあつれきが、より強く派遣の方に向かっている。それと、私はもっと問題と思いますのは、例えば、派遣労働者を正社員に採用する制度がない事務所と申しますのが八六・五%なんですね。この調査した事務所のうち、全体の八割から九割は正社員にする制度がない。
すなわち、先ほど来、望んで派遣をやっているやのお言葉でありましたが、私は、一方で正社員になれるための制度がない中で、どうやって女性たちがより自分の身分を安定して働き続けられるだろうかと。
逆に、今回ぜひ小宮山大臣にお願いしたいのは、この調査、平成二十年でありますから、毎年、例えばパート労働者の調査とか、テーマを変えて大変丁寧なアンケート調査をしておられますが、もう三年もたっておりますし、震災の後にもなりました。そして、今回の震災があったからこの派遣法はこういう形でなければいけないのだという修正提案には私どもは立場を異にしますので、まず、実態の把握のために、改めて、この年度、平成二十年と比肩し得るような実態調査をお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
○小宮山国務大臣 実態調査をするには、ある程度の準備期間を持って、ことし何をするというふうにやっているかと思いますが、なるべく早い時期にそうした実態調査ができるように検討させていただきたいと思います。
○阿部委員 私がこのように申しますのは、国会で審議をするとき、お互い立場は違いますけれども、それに向けて最も客観的な実態ということがベースにないと本当に働く人のためにならない。何よりも今回の法改正は労働者保護の観点とうたわれておりますが、余りにも、本人の、当事者の皆さんのお声を酌むことがない。例えば、この審議でも、参考人に来ていただいてもよかったと思いますし、こんなに拙速にきょう決めずともいいのだと思います。間違った方向に変えてしまうと取り返しがつかないのではないかと私は懸念します。
そして、ここで修正案の提案者にお伺いいたしますが、今回、私が今お尋ねいたしました登録型派遣の原則禁止の削除以外に、削除が多いんですが、製造業派遣の原則禁止も削除ということでございます。これも、るる経過を申し述べるまでもなく、製造業現場の派遣がもたらしたさまざまな社会的混乱ということにのっとってそもそもの案が、政府案があったわけですが、修正提案者の皆さんは、今回修正提案者の皆さんがお出しになったような法改正によって製造業現場の派遣はふえると思っておられるか、あるいは、これまで指摘されていた多々の問題をどのように組み込みながら対処なさるおつもりかについて、修正案の提案者にお伺いいたします。
○田村(憲)委員 委員の御質問、ずっと先ほどから聞いておりました。
日本の国の今の経済状況、これは、今といいますか、ここ十年、二十年の状況なんだろうと思います。それから、それに合わせた労働雇用環境というもの。さらに申し上げれば、非正規という概念は、当然、派遣だけではないわけでありまして、派遣はごく一部であるというようなことを考えれば、非正規という働き方全体をどうするかということも議論をしていかなければならないんだろうと思います。
その中で、製造業派遣原則禁止、これを削除した影響が、どういう影響が出るかということでありますが、委員と意見が合うかどうかわかりませんけれども、原案が通りますと、対象になる製造業の方々が約九万人、この方々が今の形態では働けなくなるわけでありますから、当然これを削除することによって、この九万人の方々の職場は守ることができるというふうに考えております。
それから、ふえるかどうかという話なんですけれども、これは予想ですから何とも言えませんが、ただ、この法律がずっと国会で継続になっておりますから、当然、製造業の現場において将来派遣というものが禁止になる可能性が高いということになれば、積極的には派遣という手法で雇用というものを募集することができなくなるわけでありますから、そういうことから考えれば、こういう形の法案に修正されれば、また製造業の現場において、派遣という働き方に対して前向きに考えられる経営者の方々はふえるのではないかというふうに思います。
○阿部委員 製造業現場における派遣は余りにも問題が多かったことがここの出発点ですから、もし修正案のような趣旨であっても、私は、かなりこれは厳密に、そして問題点を共有しながら進まないと、逆に社会混乱がまた増大するだけだと思うんです。
これは政府にお伺いいたしますが、例えば今、震災からの復興期にあって、いろいろな工場がまた立ち上がりながら操業を開始していくときに、そうした急激なニーズについては製造業現場でも派遣という形態がとりやすいのは事実であります。しかし、また一方で、これは被災地が、特にそれゆえに将来そうした非正規雇用の方たちの比率が高く、社会として不安定になってしまったのでは、本当の力強い復興ではないんだと思います。
政府として、もし修正案のような形になった場合、この点についてどのような策をお考えなのか、私は大変懸念いたします。もちろん、回復過程で必要であるという理由も一方であることは承知しております。しかし、その非正規の形態が固定してしまうこともまた可能性として高いと思います、経済がなかなか回復していないことを理由にするならば。法はどんな社会を目指すかという到達点を明示した上でやるべきと思いますので、この点について政府のお考えをお伺いいたします。
○牧副大臣 おっしゃるとおり、非正規の比率が高い社会というのが必ずしも好ましい形であるとは思ってもおりませんし、阿部先生とも一緒にこれまで政府原案について取り組みを進めてきた立場から申し上げれば、当然、政府原案についても、皆様方に御理解をいただく中で、速やかに成立をさせるべくこれまで進んでまいったわけであります。
この法律の仕組みそのものを申し上げるまでもないんですけれども、派遣労働者と派遣元と派遣先の三者の関係を規定するわけでありますけれども、あくまでも派遣労働者の視線から、その目線から取り組みを進めるということは委員と私どもとは全く同じ観点だと思います。
そして、先ほど修正案提出者からもお話がありましたけれども、今、例えば急激な円高という状況の中で、製造業に働く派遣労働者の皆様方の働く場そのものが空洞化をしてしまったんでは元も子もないということ等を考えますと、今回の修正についても一定の理解をせざるを得ないのかな。
そしてまた、被災地のお話も出ましたけれども、一日も早く本当の意味での長期雇用、安定的な、産業の発展と相まった雇用の場をつくり上げることこそが急務であって、今私たちはそこに取り組むべきだと思っております。
○阿部委員 せんだってこの委員会で震災被災地の視察に行かせていただいたときも、多く、職を求める側は、やはり正規のしっかりした、だって先が見通せないのでは復興に立ち上がることもできないわけです。ここは、苦しくとも、今私どもの国はやはり方向性を定めて、製造業の派遣は原則禁止という点で、それの年々の中の多少の移動はあったかもしれません。でも、そうしないと、復興にとっても本来の計画性が立たないと私は思っております。
最後に、日雇い派遣の件について伺います。
これも、修正案の皆さんは、三十日というところで区切られました、政府提案は二カ月ですが。私が思いますに、この間、すなわち二カ月未満の方が逆に社会保険に加入をしておられない状況が多く、そこが一番問題なのではないかと思います。
お手元の資料を開いていただきます。
例えば国民年金を例にとりますと、いつも申し上げますが、今や国民年金は自営業者のための年金ではなくて、約三九%余りが働いているのに国民年金ということで、そのうち、特に常用雇用よりは臨時とかパート、ここは派遣の中の登録型なども含まれると思われますが、正しいデータではないかもしれません、大ぐくりですので。でも、見ますと、二六・一%。すなわち、本来、勤労者性、働いている、雇用関係を持ちながら社会保険に入れていないという人の問題が、今や国民年金や国民健康保険の最大の問題であろうと思います。
田村委員にお伺いいたしますが、二カ月を三十日とした場合に、こうした問題がさらに私は定着というか沈殿してしまうのではないかと思います。その懸念について、御答弁をお願いいたします。
○田村(憲)委員 二カ月を一カ月、一カ月といいますか三十日以内というふうにしたわけでありますが、この理由というのは、先ほど古屋委員に対して御答弁をさせていただきました。
そうすると、その間のところが、いろいろな意味で、社会保険等々を含めて問題が出てくるのではないのかというお話でございました。
基本的に、これを修正しなかった場合に、その間の方々がどのような雇用形態の中で働かれるかということにかかわる問題でありまして、同じような形で、例えば有期で働かれれば結果としては同じであるわけでございますから、そこはやはり、長期で働かれるのか、それとも短期で働くのかというところが一番の論点になると思っておりますので、そういう意味では、委員の御指摘もあるわけでありますけれども、我々は、この影響というものはそれほど大きな影響ではないのではないかというふうに思っております。
○阿部委員 これも実態が把握されていないところでの予測になり、私どもはそこを強く懸念します。
最後に一つ申し添えますが、実は、修正案の中にあります雇用の確保が特に困難な場合等々は、副業として従事する者や主たる生計者でない者などのように特定するやの御答弁でありましたが、実は、厚生労働省が取り上げられました前回のアンケートで、何と、派遣労働の九一・〇%が、自分が生計の主たる担い手であるという回答もございます。
この修正は、逆に言うと、日雇い労働の問題の不安定性に加えて、さらに派遣労働で働く皆さんの状況を悪化させるものと思いまして、私どもの党としては到底賛成しかねるし、せっかく政権交代したのに、ここに戻ってしまうということが残念でなりません。
以上で終わらせていただきます。
○池田委員長 次に、柿澤未途君。
○柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。
派遣法改正案、まず、そもそも、現政権の発足時に民主、社民、国民新党で三党合意して最重要法案に位置づけてきた法案を、延々六国会も継続審議にしてきたわけです。それを、水面下の修正協議で、気がついたら、製造業派遣、登録型派遣、日雇い派遣の原則禁止というこの法案の目玉である部分を基本的に削除してきょうの修正案のようなものを共同提出で出してきて、しかも、きょう一日、朝と夕の細切れ質疑でそのまま採決してしまおうという、本当に信じられないやり方だというふうに思います。
私は、派遣法改正案原案にある製造業派遣の禁止、登録型派遣の禁止、日雇い派遣の禁止等の規制強化は、現に派遣で働く人たちの雇用の安定化につながるどころか、かえって派遣という就業形態で働く道を閉ざしてしまいかねない、こういうふうに、いち早く、再三再四、繰り返し、これでもかこれでもかと指摘をしてまいりました。
私は、代表的な例が、長妻大臣当時から肝いりで進められてきた専門二十六業務派遣適正化プランだと思います。これによって、それまで安定的に派遣で働いてきた人たちが、労働局の指導によって、あなたは違法労働です、そうやって働き続けることができなくなってしまった。その結果、私から言わせれば、十万人もの官製派遣切りが生まれたとこれまで言ってまいりました。
きょうの自民党の加藤理事の質問を聞いておりましても、自民党さんも私たちと同じような考え方を持っているように思われます。しかし、今回、自民党さんは、修正協議を通じて法案から大骨を抜いた上で、修正案の提出者に名を連ねておられるわけです。
私は、正直、民主党さんも自民党さんも、労働者派遣法改正案を廃案にしたという批判を受けるのが怖くて、事実上、修正により、ほぼ法案の内容を無内容化した上で、法案を通すことにしたんだろうというふうに思っています。民主党は、最重要法案と言ってきた法案が廃案になると現政権のダメージになる。一方、自民党さんは、派遣法改正案を廃案にして、弱者に冷たい政党だ、こういうイメージを持たれるのは困る。要するに、両党とも、内容はともかく、派遣法改正案を通したという名目上の結果を求めていた、そういうことではないかと思っております。
それでもなお、私は、労働局の裁量行政により、むしろ派遣労働の不安定化をもたらすような条文が修正案の中に残っていると思います。私は、自民党さんも、修正案提出者でありながら、内心ではそういう懸念を持っているのではないかというふうに思っています。
そこで、修正案提出者の田村先生にお伺いをしたいと思うんですけれども、本修正案の成立が労働者の雇用の安定にどのように資するというふうに考えているのか、お伺いをしたいと思います。
○田村(憲)委員 先ほども違う観点から阿部委員の方にお答えをさせていただいたんですけれども、これは、原則禁止であるという原案の製造業派遣それから登録型派遣というものを、そうじゃなく削除というようにしましたので、そういう意味では、今現行、そこで、この原案が通れば働けなくなる方々、こういう方々は、当然今のまま働けるというふうな形になると思います。
何よりも、今、五度ほど継続審議というお話がございました。今の国会の状況を勘案しますと、特に衆議院でありますけれども、これを廃案にするということが非常に難しい。そういう状況の中において、これは委員も我々と同じ意識を持っている部分が、結構重なり合う部分が多いと思うんですけれども、いかに問題のある部分を削除というか訂正をして憂いをなくすかという意味からすれば、問題のあるところを修正した上でこの法案を通した方が問題としては少ないのではないか、こういう考え方をした上で、今回、修正協議をいたしまして、このような修正案を出させていただいた、こういうことであります。
○柿澤委員 田村先生の真意がよく伝わってくる答弁だったと思います。
私は、この間、統計の数字にあらわれる派遣労働者の意向や派遣労働の就業現場の実態を見ずに、いささか思い込みに基づく議論が行われて、それに基づく法改正議論が行われてきたと思っております。今や、大骨を抜いた修正が行われて、派遣法改正案は、もともとの原形をとどめていないものになっている。
この際、むしろ本法案を取り下げて、有期雇用をめぐる制度に関する総合的な検討を行った上で法案の出し直しを行うべきではないか、本来そうあるべきではないかというふうに、これも田村先生はそう思っていらっしゃるんじゃないかと思うんですけれども、ぜひ御見解をお尋ね申し上げたいと思います。
○田村(憲)委員 三党協議をしている中でこういう修正をしてここに出させていただいている中で、非常に答えにくい御質問なんですけれども、出し直すという考え方は一つあるとは思います。しかし、先ほど申し上げたとおり、今の衆議院の状況がそういう状況ではございません。ですから、そのようなことは可能ではございませんので、その中における選択として、今回のような選択をしたということであります。
○柿澤委員 はい、よくわかりました。
今回の修正案では、いわゆる製造業派遣、登録型派遣禁止についての規定が条文から削除されて、附則の検討条項に回されております。附則の検討条項では、そのあり方について速やかな検討を行うということになっている。
とすると、これは製造業派遣、登録型派遣の禁止または制限が、将来的な方向性としては引き続き考えられているということなんでしょうか。それとも、禁止や制限をそもそもするかしないかという点から立ち返って検討すべき、そういうふうに考えているんでしょうか。これも田村先生にお伺いしたいと思います。
○田村(憲)委員 今回の提案者田村としての考え方を申し上げますけれども、そもそも製造業派遣、登録型派遣の禁止というものに対して大変な危惧を持っておったものでありますから、今回の修正をしたわけであります。
そういう立場からすれば、速やかな検討を行うということの中において、これが再び同じような方向で、原案のような形になるというのは、これはよほど何か大きな環境の変化が起これば別かもわかりませんけれども、今のところはそういう方向ではないんであろうという思いの中で、このような形で進めさせていただいておるということでございますので、そこは御理解をいただきながらと思います。
ただ、表向きは、白紙の中で検討をするということであろうと思います。
○柿澤委員 表向きはという御答弁をいただいても、ちょっとこちらも受けとめに困るわけでありますけれども、いずれにしても、今御答弁をいただいたのは、この製造業派遣、登録型派遣の禁止ないしは制限、こういったことを前提に置いてこの検討が加えられるわけではない。むしろ、白紙、ゼロベースでこれを考えるべきだというところまで立ち返ってこの附則の条項がある、こういう認識を語っていただいたんだと思います。
私たちは、製造業派遣の一律の禁止というのは、ILO条約一八一にも違反している可能性があるというふうにも思いますし、それがもたらす経済や雇用への悪影響も相当大きいというふうに思います。ここは、ぜひゼロベースに立ち返って考える、田村先生、来年は皆さんが与党になる可能性も十分あるわけですので、ぜひそうした立場に立って、これからも検討を加えていただければと思います。
さて、日雇い派遣の禁止の例外についてお伺いします。
今回、高齢者、昼間学生、副業として日雇い派遣で働く人、主たる生計者以外、この四類型が日雇い派遣の禁止の対象外となるというふうに聞いております。そこで伺うんですけれども、高齢者というのは何歳以上のことをいうのか、お伺いをいたしたいというふうに思います。
○津田大臣政務官 柿澤委員にお答えを申し上げます。
この日雇い派遣につきましては、派遣元の雇用管理責任が十分に果たせず、法違反の可能性も高くなることから、原則として禁止し、派遣労働者の保護を図ることにしているわけでございます。
この例外について、今般の修正案で、高齢者を追加するとの議論があるというふうに承知をいたしております。この修正案が成立をした場合、労働政策審議会で御議論いただき、具体的な年齢等を規定することとなるわけでございますが、政府としては、三党の御議論を踏まえ、雇用の機会の確保が特に困難な六十歳以上とすることが適当と考えているわけでございます。
なお、現行法上、専ら派遣の例外として、六十歳以上の者との規定があるわけでございます。
〔委員長退席、長妻委員長代理着席〕
○柿澤委員 そうすると、六十歳以下の人は、例えば失業中ないし求職中で、当面日雇い派遣で働きたい、こういう人は今後は働けなくなるということですね。
もう一つ。リクルートワークス研究所が今月、第二回日雇い・短期派遣労働者の就業実態調査というのを公表しております。それによると、日雇い派遣を専業として働いている方々が全体の八・五%おります。今後、この方々は、日雇い派遣で働き続けることはできなくなるわけです。
こうした方々がより安定的な別の仕事に就業することができるよう、どういう施策を用意しているんでしょうか。お伺いをしたいと思います。
○津田大臣政務官 お答え申し上げます。
日雇い派遣を原則禁止とすることにより、それまで日雇い派遣として就労していた派遣労働者の雇用の確保を図っていく、これは大変重要な課題でございます。
具体的には、日雇いという就業形態を望む者がスムーズに日雇いの直接雇用の求人を探すことができるようにする。これは、有料職業紹介事業の整備を促進していくということが大変重要であるというふうに思っておりますし、モバイルに対応した、日雇いの直接雇用の求人を検索できるシステムを構築する。そういうこととともに、これまで日雇い派遣で就業していた者が安定的な別の就職の機会を早急に得られるよう、ハローワークに特別の相談窓口を設置し、担当者制による一貫したきめ細かい職業相談、職業紹介等の支援や、求職者支援制度を活用することにより、日雇い派遣で働いていた労働者の安定した就職の実現を図りたいというふうにいたしております。
○柿澤委員 これは、去年の派遣法改正案の審議でも私申し上げたんですけれども、この出口といいますか、規制が行われた結果、今までの就労形態がとれなくなる人に関してどういう対応がなされるのか。それがなければ、ただ大きな不安を与えるだけではないか、こういうふうにも思っております。
次に、労働契約申し込みのみなし制度についてお尋ねします。
この規定の施行期日を半年から三年後に延ばす修正を行っております。その理由についてお伺いをいたします。
○田村(憲)委員 先ほどもお答えをしたんですけれども、このみなし制度というものは、派遣先に大変厳しい規制になるわけであります。
そういう意味で、まだ十分にその運用も含めて周知がされていない中において、例えば、急に抜き打ちでこれを適用されますと、ただでさえ、先ほど来委員もおっしゃっておられます専門二十六業務などの方々は、厚生労働省、長妻大臣のときの適正化プランにおきまして、非常に現場が混乱をしたわけであります。そして、この結果何が起こったかというと、急に、これはだめだ、あなた方は違反の疑いがあるよという指導が来ておるわけなんですね。
突然、これがみなしに適用されるという話になりますと、これはもう危なくて派遣という形態を選べないという話になってくるわけであります。すると、そこで働いておられる方々も、雇用というものが失われていく。いや、その方はみなしで、御本人が望むかどうかは別でありますけれども、直接雇用になるかもわかりませんが、当然、そういう形態を企業が選ばなくなれば、そういう職につく方々、派遣労働者の方々が、職が失われていくわけであります。
そういうことを考えたときに、やはり、この制度がどういう制度かということも含めて周知徹底できる期間がまず必要であろう。そのためには、法施行から三年間ぐらい、みなし規定というのが適用されるまで三年間ぐらいの、施行されるまでの間の期間が必要であろう。
しかも、同時に、この三年間の間において、今申し上げたような、急に抜き打ちで、これはみなし規定を適用しますよというようなことが起こっては困るわけでありまして、そういうことが起こらないような運用というものも考えていかなければならないであろうということでございまして、この三年というものを置いたわけであります。
○柿澤委員 私は、この労働契約申し込みみなし制度も、後から改めて申し上げる専門二十六業務適正化プランによる行政指導と同じように、運用次第では、いたずらに労働局の裁量行政の余地を拡大させて、結果、派遣を雇用する事業者にとって予見可能性の低い、派遣なんて、いつ何を言われるかわからないから危なっかしくて使えない、そういうものになってしまう可能性が十分あると思います。
私は、今の御答弁を聞いておりましても、労働契約申し込みみなし制度について、本当にこれが必要で、なおかつ、有効な、望ましい制度であるかどうか、こういうことを再検討して、この制度そのものをやるかやらないかということも含めて三年後まで考える、こういう趣旨が含まれているようにも今の答弁を聞いていて思いますけれども、そうした形での再検討が行われる可能性があるというふうに田村先生は思っていらっしゃいますか。
○田村(憲)委員 私が思っているかという御質問でしたので、私の感想といいますか考えを申し上げますけれども、この労働契約申し込みみなし規定というのは、やはり、採用の自由でありますとか、また労働契約の合意原則からいたしましても、ちょっと問題があるのではないかという意見も多くあります。私自身も、こういうものでペナルティーをかけること自体がいいのかどうかというようなことは思っております。
そういう意味で、この三年の間に、このみなし規定自体がなくなるということも含めて、労政審の方でしっかりと議論をいただければありがたいな、こんなふうに思っております。
○柿澤委員 御答弁をいただきました。
こうやって一つ一つ確認をしてみると、修正案提出者、田村先生ですけれども、自民党の修正案提出の真の意図というのは、事実上、これまで継続審議を重ねてきた政府提出の派遣法改正案というのを極めて廃案に近い状況に持ち込む、そういう意図に近いものがあるのかなと。こうやってお話をしていても、うなずいておられるわけでありますけれども、こういうふうに認識をさせていただきます。
改めて、専門二十六業務適正化プランについて伺いたいと思います。
はっきり言って、これで十万人の官製派遣切りが生まれた。リーマン・ショックどころではないというふうに思っております。前々から何度か申し上げていますけれども、適正化プランの対象となった派遣労働者で派遣先への期間の定めなき直接雇用に移行したのはたった〇・二九%。そして、全体の八六%が、少なくとも一時的には転職か失業を余儀なくされている、こういう数字が出ているわけです。
昨年度の労働者派遣事業報告の集計結果、速報版が九月に出ましたけれども、派遣労働者は一一・六%減の二百六十七万人になっています。しかし、常用派遣というのは、一般労働者派遣事業でマイナス三・二%、特定労働者派遣事業で六・〇%減。派遣全体の一一・六%の減少幅と比べると、余り減っていないわけです。この常用型は比較的安定をしている。
一方、登録型派遣については一五・一%減。ここは、景気動向に応じて、ある種の雇用のバッファーの役割をこの登録型派遣は果たしている面がありますので、減少幅がこういう状況で多いのはやむを得ない面があると思います。
問題は、同じ常用型であるにもかかわらず、専門二十六業務に従事した派遣労働者だけは、何と一年間で一九・三%も減っているんです。結果として、この一九・三%という大きな落ち込み幅というのは、まさに、専門二十六業務適正化プランを実施していって、労働局の行政指導によって雇用打ち切りになった、あるいは、二十六業務適正化プランが進行しているから、こういう形の雇用はもうやめようということになった、こうしたことが大きく影響しているのではないかというふうに思います。
認識をお伺いしたいと思います。この専門二十六業務適正化プラン実施の成果について厚生労働省はどのように考えているのか、お伺いします。
○小宮山国務大臣 委員の御見解は承りましたが、ただ、これは、適正化をすると、専門二十六業務が決まっているわけですから、そこにちゃんとはまらないものがあるのはやはりおかしいわけなので、例えば一般事務と区別がつきにくい事務用機器操作とかファイリングとか、こういうところで実態が専門性のないものについて、そこをチェックしているというので、これは当然行うべきことだと私は思っております。
今おっしゃいました、全体に数が減っているということは、午前中も、午後からも答弁したかと思いますけれども、やはりリーマン・ショックそのほかの景気の状況で減っている部分もございますので、必ずしも委員がおっしゃるような形が理由で減ったものというふうには認識をしておりません。
○柿澤委員 午前中の質疑で、この専門二十六業務について、やはり問題もあった、そして、あり方について見直していかなければいけない、こういう御答弁もされていると思うんですけれども、それはそれで進めていくということで間違いないですね。確認させていただきます。
○小宮山国務大臣 専門二十六業種についての検討はもちろんこれからしてまいりますけれども、現在は、今二十六業種であるのでありますから、その中がきちんと行われるようにしていくのは当然のことだというふうに考えています。
○柿澤委員 ここは、残念ながら認識としてすれ違いの部分もあるというふうに思います。
しかし、この長妻大臣肝いりで始められた専門二十六業務適正化プランによる行政指導が現場でどのように言われてきたか。きょうの質疑でも御答弁でも出ましたけれども、それこそ、指導官が全国に二百人いて解釈が二百通りあると言ってもいい、この人がいいと言っても異動で人がかわると違うことを言い出す、こういう先進国とも思えないような裁量行政がまかり通っている、こういうふうに現場では言われてきたんです。
あわせて申し上げますけれども、偽装請負に関する三十七号告示についても全く同じであります。これでは怖くて派遣なんて雇えない。こうやって、派遣を雇う、派遣で働くという選択肢を狭めて、結果、大量の官製派遣切りを生み出してきたのが現政権のこれまでの政策だったのではないかというふうに私はやはり思います。
大臣にこの点も認識をお伺いしたいと思います。すれ違いになるということを覚悟しつつお伺いいたしますけれども、この二年間、現政権が続いている間の派遣労働者の二年連続の減少というのは何が原因だというふうに考えておりますか。
〔長妻委員長代理退席、委員長着席〕
○小宮山国務大臣 先ほども申し上げたように、リーマン・ショックを初め、今の経済情勢が一番大きな原因だと考えています。
○柿澤委員 リーマン・ショックが原因であるとすれば、二〇〇九年以上に二〇一〇年ががたっと、しかも特定の分野に偏った形でこの派遣労働者の減少を生み出している、こうした状況を説明できないのではないでしょうか。やはり私は、こうした現政権の政策のある種のゆがみがこの状況をもたらしている、こういうふうに言わざるを得ないというふうに思います。
ちゃぶ台を返すようになりますけれども、はっきり言って、関係者の目はもう派遣法には向いていない、今、労政審で法制化に向けて議論が行われている有期労働契約法制の方に向いている、これが現状の実情だと思います。
有期契約の締結理由を限定するいわゆる入り口規制、契約期間と更新回数の上限を定める出口規制等が議論の対象となっているわけですけれども、しかし、この有期労働契約法制については労使双方の意見の隔たりが余りにも大きくて、八月三日の中間整理でも、いわば両論併記をせざるを得ない、こういう形となっています。
この中で派遣はどういう取り扱いになるのかということが大変注目の的になっています。派遣元との雇用契約期間が継続して上限を迎えた場合、その派遣労働者との雇用契約を無期契約に転換することが義務づけられる、こんな話もあるようでありますけれども、そんな形になるということを考えておられるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
○津田大臣政務官 柿澤委員にお答えを申し上げます。
有期契約労働者につきましては、一般的に、正社員と比べて、雇用の不安定、待遇等の格差、職業能力形成が不十分等の課題が指摘をされているわけでございます。このため、有期労働契約のあり方につきましては、派遣労働者を含むすべての有期契約労働者を対象として、現在、労働政策審議会で御議論をいただいており、年末を目途に一定の方向性を定めていきたいというふうに考えております。
この有期労働契約で雇用できる期間の長さを制限するかどうか、こういうことについて、あるいは、そのようなルールの要否を含めて精力的な御議論をいただいている真っ最中、まさに議論が伯仲しているというふうにおっしゃいましたけれども、そういう真っ最中でありますので、この検討の結果を踏まえて必要な措置を講じていきたいというふうに思っております。
これまでのところ、派遣労働者について特別な取り扱いを設けるべきとの意見は、労使いずれからも表明をされておりません。また、この有期労働契約の議論は、派遣労働者の場合は、あくまでも派遣元と労働者の間のルールのあり方の議論であるというふうに承知をいたしております。
また、派遣契約の上限違反があった場合、派遣法改正法案においては、派遣労働者に対し無期契約を義務づけたり無期契約に転換するなどの措置を講じてはいません。しかし、労働契約申し込みみなし制度により、派遣先に直接雇用されることによる雇用の安定を図ることにしているわけでございます。
さらに、現行法でも、派遣先の直接雇用へと移行させることを目的として、派遣受け入れ期間の制限に抵触することとなる最初の日以降継続して派遣労働者を使用しようとするときは、雇用契約の申し込みを派遣先に義務づけているわけでございます。
○柿澤委員 今、年末を目途に一定の方向性という話でありますけれども、一般的な概念でいえばもう既に年末でありまして、来年の通常国会に法案を出すような話もあるというふうにも聞きます。
しかし、まさしく津田政務官からもお話がありましたとおり、労使の伯仲とおっしゃいましたが、隔たりが大きい中で、そのようなスケジュールでこの法案提出までも進めていこうということなんでしょうか。これをお伺いしたいと思います。
○津田大臣政務官 この手の問題の議論というのは、労使が最初からまとまるということはございません。伯仲した議論が行われるのは、いつの場合も同じでございます。同時に、やはり議論を詰める中で一致点をつくっていくという努力もされているわけでございまして、私どもは、そのようなことになることを期待したいというふうに思っております。
○柿澤委員 法案提出のスケジュールをお伺いしたつもりだったんですけれども、既定の方針どおりだということだと思いますので、通常国会に法案提出も視野に入れながらこういう検討が進められているということなんだと思います。
結局、政府・民主党も、恐らく連合も、こっちの方に主たる関心が移ってしまっているわけですね。だけれども、派遣法改正案を廃案にしたというと人聞きが悪いから形だけは通しておこう、そういうことなんじゃないかというふうに思います。こんなイメージ戦略の道具のような法改正で影響を受ける労働者も事業者もたまらない、そのことを申し上げさせていただいて、質問は終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○池田委員長 次に、高橋千鶴子さん。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、労政審の諏訪会長においでいただきました。大変忙しい中、また、このような時間帯に、まげて御出席いただきましたことに、大変感謝を申し上げます。
早速質問をさせていただきます。
今回審議に付されている政府案は、平成二十一年十二月の労政審答申「今後の労働者派遣制度の在り方について」が基礎になっています。これに先立つ十月七日付の厚労大臣の諮問では、「いわゆる派遣切りが多く発生し、社会問題化するなど、派遣労働者をめぐる雇用環境に大きな変化が生じたところである」、こうした認識が示されて、新たに、製造業派遣や登録型派遣の原則禁止、違法派遣の直接雇用の促進、いわゆるみなし雇用を内容とする答申がされたものだと理解をしております。言ってみれば、労働者派遣法のたび重なる改正の歴史の中で、初の規制強化に踏み出したものと言えるのではないでしょうか。
そこで、公労使の意見をまとめた会長として、改めて、この答申の意義、ねらいについて伺いたいと思います。
○諏訪参考人 労働政策審議会の会長の諏訪でございます。よろしくお願いいたします。
ただいまの御質問にありました点でございますが、言うまでもなく、労働者派遣法は非常に重要な法律でございまして、派遣労働者の保護という問題につきまして、労働市場全体の中での需給調整のバランスをとりながら、最適の方向を探ってきているところでございます。
そのような意味では、今回の法改正のたたき台になりました、基礎となりました私どもの答申におきましては、できるだけ新たな方向に向けまして、さまざまな考慮をしたわけでございます。
とりわけ、厳しい雇用情勢のもとにおきまして、派遣労働者の雇用の確保という問題あるいは保護という問題に向けまして、今委員の御質問の中にもありましたとおり、製造業派遣あるいは登録型派遣に関する見直しの問題、また、非常に重要なこういう三者間の労働関係におきます違法な派遣があった場合のみなしの問題、あるいは派遣先の労働者との間の処遇の均衡等々、新たな提案をしたところでございます。
したがいまして、このような法案が今回皆様の場において議論されておりますことに関しましては、ぜひ、これの速やかな成立に向けてお願いをしたいというふうに思っておるところでございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
日本共産党としては、政府案は、やはり、原則禁止といいながら例外が非常に多い、そこでほとんどが実は派遣のまま残されるじゃないかということを指摘してきました。しかし、その上でも、今までにない規制強化に踏み出したということは事実だと思うんですね。ただ、歴代大臣は、公労使三者のぎりぎりの合意でまとめられたものということで、これまで議論の中で理解を求めてきた、そういう経緯がございました。
また、昨年四月には、閣議決定された法案が事前面接の解禁を削除したことで、諏訪会長名により意見書が出されました。本審議会の答申が、公労使三者により真摯な議論を重ね、ぎりぎりの調整を行った結果であることにかんがみれば遺憾であるとして、労働政策審議会の意見を尊重するよう強く求めるというもので、大変異例のものだと思います。長妻元大臣は、二度とこのようなことがないようと陳謝をしたわけであります。
私は、このとき、もちろん事前面接の解禁を削除したことに賛成でありましたし、労政審の答申から一歩も出られないというのは国会の意味がないし、三者の意見を反映させるというILO原則も、そこまで縛ったものではないと思っております。
しかし、今回の三党の修正案につきましては、そういうレベルではない。つまりは、答申の骨格部分を削除してしまって、全く別のものにしてしまったわけであります。
ですから、ぎりぎりの合意ということが繰り返されてきたこの間の経過に照らして、これは労政審としてどのように思うのか、率直な感想を会長から伺いたいと思います。
○諏訪参考人 委員御指摘のとおり、労政審は、三者構成におきまして、非常に厳しい議論の対立を乗り越えながらできるだけの合意を確保していく、こういう紆余曲折を経ながら最終的な考え方に至っていくわけでございます。そういうわけでありますので、こうした労政審の出しました見解につきましては、できるだけ尊重していただきたいというふうに考えているところでございます。
しかしながら、この間いろいろな状況の変化等もございましたし、また、国会という場におきまして最終的に法案等を決定していくということは、これは当然の、国の機構、仕組みでございますので、我々といたしましては、この労政審の考え方、ぎりぎりいっぱいの最後の調整というものに関しましては、十分に尊重していただいた上で御決断をいただきたいというふうに常日ごろ思っているところでございます。
その点では、今回の政府が提出しました法案というものは、基本的に労政審の考え方の上に立っておりますし、また、これまで現行法の中にはなかったようなさまざまな新たな規定を盛り込んでおりますので、そのような意味からしますと、一部分におきまして異なったところがあろうかとも思えますが、それでも、できるだけ速やかな成立をお願いしたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 恐れ入ります。
今質問させていただいたのは、その上で自公民の修正案が出されております。そして、登録型派遣、製造業派遣の原則禁止という部分が一切削除されてしまいました。ですから、ここは、やはり骨格部分に触れるものではないかと。
もちろん、国会というものが尊重されるという御趣旨だったかと思うんですけれども、それにしては余りにも逸脱をしていると私は率直に思うわけです。そのことについてもしコメントをいただけたら、お願いします。
○諏訪参考人 今の委員からの御指摘でございますが、私といたしましては、確かに、そのような部分的な、あるいは非常に重要な部分に関する修正等があり得ようかとは思いますが、他方で、先ほど委員も御指摘になられたような、みなしの、違法の派遣に対する雇用労働契約の申し込みのみなしといったような新たなこういう規定ですとか、さまざまな部分で、そういう派遣労働者の保護という部分に関しましては基本骨格が大きく変わってはいない、その意味では現行法から前に一歩出たというふうに思っておりますので、そのような理解でおります。
○高橋(千)委員 現行法から一歩出たという答弁でございました。私は、逆に、もしそうであるならば、これまでの国会の議論が余りにも縛られ過ぎていたなと率直に言わなければなりません。
ぎりぎりの合意なんだから認めてほしいとずうっと答弁し続けました、本会議でもこの委員会でも。そうじゃない。野党時代に民主党さんが出された修正案で民主党さんがその原案を出せばよかったんじゃないか、私は率直にそのことを指摘したいと思います。これは後で質問させていただきます。
もう一問、諏訪会長に質問しますけれども、派遣労働者の保護を目的とするという法案、この部分はそのまま引き継がれたわけであります。
これにふさわしい法案だろうかということが、私は少し疑問があるわけですね。本当は、労政審の答申の中で、なお書きの部分、なお、使用者代表委員からこのような意見があったという部分が幾つかありますよね。その上で、労働者代表意見である、派遣先責任の強化や派遣先・派遣先労働組合への通知事項の拡大、特定労働者派遣事業の届け出制から許可制へなどの意見があったというこの部分は、その他の検討項目にされました。ですから、扱いが違うんですね。
建議のときは併論でありました、使用者意見、代表者意見。しかし、答申になりますと、使用者意見はなお書きに出てくるんですが、労働者意見はその他の検討項目と、ちょっと一ランク下がるのかなと、そういう印象を受けたわけです。野党時代の民主党を初め三党の修正案の先進的な部分が残念ながら見送られたものだったと思います。しかし、検討と言ったわけですからね。
そこで、伺いますけれども、今回の自公民さんの修正案は、製造業派遣、登録型派遣のあり方、このものを労政審で検討してくださいというふうになりました。その他の検討項目の上にさらに検討するものが出てきた。つまり、振り出しに戻ったような格好になるわけです。そうすると、私が期待している、労働者の保護に一番つながる派遣先責任の強化という問題が遠のくなあというふうな気がするんですけれども、やはりそこはやっていくんだということで、その必要性についてどう認識されているか、伺いたいと思います。
○諏訪参考人 ただいま御質問の点につきましては、私は、今回の派遣法の改正案が成立しましたら、附則にもありますとおり、速やかに検討するということになっておりますので、速やかに検討すべきものだというふうに考えております。
これまでも、派遣先との関係につきましては、労働政策審議会では繰り返し繰り返し議論をしてまいりましたが、今回におきましても、時間との関係あるいはいろいろな各方面との調整ということで、なかなか最終的な結論に至ることができなかったわけでございまして、そのような意味では、他の事項とあわせまして、これは積み残された課題としてできるだけ速やかな議論をしていくべきものではないかと考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
速やかに検討ということがありましたので、ぜひこれを期待したいと思います。
派遣法の骨格というか最大の問題は、やはりこの間接雇用であり、派遣先の責任が明確でないということが今までのさまざまな問題を生み出してきたということで、ぜひこれを検討していただきたいと思います。
さて、そこで、先ほども言ってしまったわけでありますけれども、岡本提出者に質問したいと思います。
今の会長の答弁の中で、これまでの、ぎりぎりの合意だと言ってきたことが、実はそこまで縛られる必要はなかったんだなと率直に言わなければならないわけです。
そこで、政府答弁との整合性についてどう考えるか。また、本当であれば、野党時代に提出した三党の修正案を政権交代後にそのまま提出して成立させてもよかったんじゃないでしょうか。それこそが政権交代の本当の意味だったと思います。いかがですか。
○岡本(充)委員 今委員から御質問いただきましたように、今回修正案として提出をいたしました内容をもって成立をした場合、確かに、おっしゃるとおり、第百七十回国会に提出をした当時の野党時代の案とは異なるということになるわけでありますけれども、理念と目標を掲げつつ、やはり一歩一歩それに向かって進めていくということは重要であろうと思いますし、労働者の保護が必要だという観点においては、今回の三党の修正合意の中でも当然に含まれている、このように解釈をしております。
○高橋(千)委員 整合性がどうかということにもほとんど触れられていなかったと思いますが、特にコメントがないということですね。
○岡本(充)委員 先ほどの、議論を縛っていたんじゃないかということでいえば、決して国会の議論を縛るものが何かあるということではないと私は思っています。それは、いろいろな意味でそれぞれの御議論があっていいんだと思います。
ただ、政府として提出をした法案について、ぎりぎりの合意の上に成り立って政府が提出をした法案があった、それに対してさまざまな御議論が国会であるというのは当然のことではないか。したがって、整合性という意味での国会の議論を縛ったわけではないという意味においては、私は合っているんじゃないかと思っています。
○高橋(千)委員 改めて歴代大臣、総理の答弁を振り返って、ぎりぎりの合意ということが繰り返し答弁されたわけですから、議論を振り出しに戻して、採決をしないで、徹底した審議をするべきだ、このことを言わなければならないと思います。
さて、わざわざ派遣労働者の保護を名称に入れた改正案ですけれども、本修正案がその名にふさわしいでしょうか。与党提出者と大臣に同じ質問をします。
○岡本(充)委員 先ほども御答弁をさせていただきましたように、今回、派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善、さらには違法派遣に対する迅速的確な対処といった項目が修正後も残っておりますので、当然これは労働者の保護につながる、このように考えております。
○小宮山国務大臣 やはり、題名に「派遣労働者の保護」ということを明記したという意味は、私はあると思っています。
具体的には、日雇い派遣の原則禁止、先ほどから議論になっている違法派遣の場合のみなしの制度、そうしたような今までにない制度も盛り込まれておりますので、これは労働者の保護に向けた一歩だというふうに考えています。
○高橋(千)委員 今お話しされた日雇い派遣の禁止も、平成二十年の自民党時代の法案に戻ってしまったわけであります。また、違法派遣のみなし雇用についても、今お話をされたわけですけれども、その違法の中身がかなりなくなっちゃった。偽装請負と派遣期間の問題、そこは辛うじて残っている。
そういう中で、宝のみなし雇用が三年後になるという修正案でございますけれども、そうなっても効果があるとお感じですか。
○岡本(充)委員 三年の期間の理由というのは、もう既に先ほど田村提出者の方から御説明をさせていただいておりますので省きますけれども、周知をして現場にきちっと徹底させるということの必要性はあるというふうに私は考えておりますし、今回、さまざまな議論があった中ではありますけれども、三年間と、こういう期間になったということでございます。
○高橋(千)委員 今度は大臣に伺います。
というのは、先ほどは自民党の提出者とのやりとりでしたので、どうもこの三年の意味が、みんなそれぞれ受け取りが違うぞ、何か事実上なきものにするための準備期間なのかなというふうに伺っておりました。
でも、本来は、そうではないはずです。私たちは猶予期間が長過ぎるということを指摘してきたわけですが、今、周知とおっしゃいました。
これは、政府原案が、当初、昨年議論したときに、製造業登録型派遣の原則禁止を言いながら三年ないし五年の猶予期間が設けられたことについて、これでは規制があってないものにしちゃうということで指摘をしたわけです。そのときに、例えば業界の方が、五年延長できる、そうなったらそのときは法律が変わっているから、結果として、ないことと同じになる、そういう発言をしていることをこの場で紹介いたしました。そういう意味なんだということを指摘してきたんです。
でも、そのときの、例えば昨年の五月二十八日の本委員会での長妻元大臣の答弁を見ますと、猶予期間の中で違法派遣に対してきちんと監督体制を整えるのだ、私に対してそう長妻さんが答弁をしております。先ほどの柿澤委員の質問に対しても、「猶予期間というのが三年ないし五年あるということで、その間、我々としては、そういう方が派遣のままでも、派遣元から一年以上の雇用見込み、常時雇用というような形で雇っていただくことを後押しする」と述べています。
ですから、法案が決まった以上、法案が通って、たとえ猶予期間が三年あったとしても、今後法定化されることがはっきりしているものを、あえて今やらないように周知を図っていく中で、今から是正をしていく、そういう取り組みがあって当然だと思います。大臣、どのようにお考えですか。
○小宮山国務大臣 おっしゃるように、その三年間というのは周知を図る期間ですので、そういう意味では準備をしっかり進めたいと思っていますし、その間にも、違法なものはしっかりと監督をしていきたい。
先ほど御議論が多少ございましたが、その間に、このみなし規定の制度を見直すというつもりはございません。
○高橋(千)委員 みなし規定を見直すつもりはないという御答弁がございました。ですから、やはり、その趣旨がこの三年間の中で徹底されて、今はまだ規定が施行になっていないからいいんだということではないような、そういう体制をきちっと整えていただきたいと思います。
さて、同じ昨年の議論で、しかし、みなし雇用が適用されたとしても、それが、その人の形態が派遣先と変わるということになっていますので、反復雇用を繰り返して、実質期間の定めのない雇用と同じように働いていた労働者でも、直近の労働契約が三カ月なら、結局、派遣先に雇用されても三カ月で終わってしまうじゃないか、こういう指摘をいたしました。しかし、これでは本当に意味がない。それに対して、長妻元大臣は、実質的なことも判断していくとおっしゃいました。これは、実質的なことというのは、まさしく、反復雇用を繰り返して、事実上期間の定めのない実態じゃないか、それを見ていくという意味だと思います。
小宮山大臣もそういう意味で対応してくださるのかどうか、確認をしたいと思います。
○小宮山国務大臣 長妻元大臣と同じ意味で対応したいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。確認をいたしました。
それでは、専門業務、二十六業務の見直しについてどのように考えているかということであります。
これも先ほど来随分議論がありました。期間制限がなく、優先雇用申し込み義務さえなくなってしまいました。ですから、私は、よほど限定的な、いわゆる競争力のあるような、そういう業種でなければだめだと思うんです。
これは、これまでの答弁は、もともと今の専門業務がそういう業務であるかのように答弁をしています。だから除外してもいいのだと言っています。それだと、この間指摘をされてきたように、ほかの派遣と変わらないような業務内容や賃金なのに、これが専門業務だと分類されたことによって不安定な派遣の状態が永続的に続くことになり、みなしの対象にもならないわけなんです。これは絶対あってはならない。
ですから、本当に、この専門業務というのはどういうことなのということを限定的に見なければ、今ある業務がそうですよということでは済まないと思うんです。いかがでしょうか。
○小宮山国務大臣 専門二十六業務につきましては、いろいろな質疑の中でも御指摘をいただきましたし、そうした点も踏まえて、労政審で見直しに向けて検討していきたいと思っています。
○高橋(千)委員 見直しに向けて検討はわかりましたけれども、今の考え方について、要するに、本当に競争力のあるところでなければ、そういうところが本当にどれだけあるのかなという気はするんです。
例えば、通訳さんといっても、いかにもこれは専門業務だなといっても、現場からは、本当に大変な賃金になっているんだという指摘が寄せられました。まして、今、特区の議論の中で、規制緩和という議論などもされているわけです。ですから、そうしたことも、当たり前にスペシャリストだと決めてかからないで、実態をよく見ながらやっていっていただきたいと思うんです。
さっき、適正化プランで随分リストラされたという話がありましたが、それは、私は、やり方も問題があると思うんですけれども、基本的には、本来であれば専門業務じゃない働き方をさせていたのに、これは指導が入るからやめてくれという企業が問題なんです。そのことをあいまいにしてはならないと思います。そういう意味で、あり方について、もう一度お願いします。
○小宮山国務大臣 やはり、この二十六業務は、専門的であるということの位置づけの中で決められたものでございますので、それにふさわしくないものが入っていてはそれは困るわけですから、そういう意味で見直しをしっかりとしていきたい、そのように思っています。
○高橋(千)委員 お願いします。
今国会で派遣法成立を急ぐ背景に、先ほど少し議論が出ましたけれども、来年の国会で有期雇用法制の成立を目指すのが困難になるのではないか、こういう指摘が新聞各紙でもう既にございます。
しかし、今やる派遣法が骨抜きになれば、それこそ十倍、二十倍とも言われる有期雇用労働者、この期待される法制にはなるはずがないわけですよね。既に、日本自動車工業会は、今回の派遣法の大幅修正をありがたく受けとめていると歓迎しながら、さらに、期間従業員など非正規社員の雇用条件についても弾力的な措置を講じてもらいたいと、もう早くも緩和を求めているわけです。大臣の認識を伺います。
○小宮山国務大臣 派遣法は派遣法で一歩前進をさせなきゃいけないと思っていますし、おっしゃるように、非常に多くの方々が働いていらっしゃる有期労働法制も見直しをしていく必要があると思っています。
その雇用の実態というのは非常に多様ですけれども、やはり不安定さですとか待遇の格差ですとか職業能力の形成が不十分だというようなこともありますので、そうしたことは、しっかりと労働者が守られるようにしていかなければならないというふうに考えているところです。
昨年の十月から労働政策審議会で御議論をいただいてまいりましたが、なかなか、先ほど御指摘あったように、今、労使で考え方の隔たりがございます。何とか年内を目途に取りまとめていただきまして、必要な措置をしていきたい、そのように考えています。
○高橋(千)委員 だからこそ、派遣法の審議を今ここで中断して、もともと目指していた方向とは真逆の法案で終わりたくない、このことを指摘したいと思います。
若干時間が余りましたけれども、この後討論がありますので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
○池田委員長 以上で原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○池田委員長 この際、本案に対し、高橋千鶴子さんから、日本共産党提案による修正案が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。高橋千鶴子さん。
―――――――――――――
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○高橋(千)委員 ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案について、日本共産党を代表し、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
政府提出法案は、派遣労働の行き過ぎた規制緩和の結果生じた日雇い派遣の問題や、二〇〇八年秋のリーマン・ショックを皮切りに横行した乱暴な派遣切りの問題などを踏まえ、派遣労働者の保護を図る目的から提出されましたが、一年七カ月余りにわたって審議されずに来ました。
その間、派遣労働を初めとする非正規雇用は、この一年で三四・六%から三五・三%に増加し、千七百二十九万人に上るなど、不安定な雇用が拡大し続けています。さらに、ことし三月に発生した東日本大震災では、震災を口実にした派遣切りや雇いどめが全国に広がっています。非正規雇用に対する規制を強化すること、中でも、不安定雇用の最たるものである派遣労働の一刻も早い規制強化が求められています。
日本共産党は、政府提出法案が製造業派遣、登録型派遣を原則禁止するとしながら例外を設けていることを初め、派遣労働者と派遣先の労働者との均等待遇の確保や、派遣先企業の団体交渉応諾義務など、労働者を守るために必要な規定を盛り込んでおらず、派遣先責任の強化も今後の検討事項とされていることなどの問題点や不十分さを改め、真に派遣労働者の保護に資するために必要な最低限の措置を講ずるため、この修正案を提出した次第であります。
以下、この修正案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、大量の派遣切りの引き金を引いた物の製造の業務について、労働者派遣を全面的に禁止することとしております。
第二に、派遣労働者の雇用の安定を図るため、期間を定めないで雇用する労働者以外の労働者派遣を禁止し、それに伴い一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止することとしております。
第三に、日雇い派遣については、全面的に禁止することとしております。
第四に、いわゆる専門業務については、高度の専門的な知識、技術または経験を必要とし、交渉力のある業務に限定することとしております。
第五に、雇用申し込みみなしについて、労働契約の期間については期間の定めのない労働契約の申し込みをしたものとみなすとともに、違法派遣であることを知らなかったという派遣先の言い逃れを許さないこととしております。
第六に、派遣労働者の賃金について派遣先の労働者の賃金水準との均等を図る均等待遇原則を盛り込むとともに、派遣先の雇用責任を強化するため、派遣労働者に対する福利厚生施設等の便宜の供与について差別的取り扱いを禁止し、派遣労働者の代表者との団体交渉を拒んではならないこととしております。
最後に、製造業派遣等の禁止については、公布の日から一年以内に施行するものとしております。
また、この法律の施行により派遣労働者が派遣先に就業できなくなる場合には、派遣先に雇い入れの努力義務を課しております。
以上が、この修正案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○池田委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
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○池田委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子さん。
○高橋(千)委員 ただいま議題となりました政府提出の労働者派遣法の一部改正案と三党提出の修正案に反対の立場から討論します。
政府が提出した法案は、製造業務派遣、登録型派遣の原則禁止を言いながら、一方で多くの例外を認めるなど、極めて不十分な内容です。それでも、行き過ぎた規制緩和による派遣切りの横行を政府自身が認め、初めて派遣法を規制強化する方向へと踏み出したものでした。国会での十分な審議を通じて、真に派遣労働者の保護に資する法案へ抜本改正することこそ求められていたのです。
しかし、昨年四月に提出された本法案は、本会議と当委員会での質疑がわずかに行われたものの、首相の交代という政局の前に、審議が打ち切られていました。我が党は、徹底審議と、派遣労働で働く当事者の意見を聞くための参考人質疑の開催を繰り返し要求し、その立場から、法案の継続審議扱いにも賛成してきました。
ところが、法案は、この一年七カ月余りの間たなざらしにされた末、今国会の会期末直前になって、突然、民主、自民、公明の三党が合意したという修正案が提出されたのです。
その内容は、製造業務派遣や登録型派遣の原則禁止を削除し、日雇い派遣の規制を緩和する、違法派遣の場合の派遣先の雇用申し込みみなし規定の施行を三年も先延ばしにするなど、政府案が不十分ながら派遣労働への規制を強化しようとした根幹部分を丸ごと取り除こうというものであり、重大な改悪修正です。
こうした内容が、大政党だけによる水面下の協議によって合意され、わずか三時間の審議で採決するなど、言語道断です。派遣法の抜本改正を願う多くの労働者の期待を裏切り、国会審議も不十分なまま何が何でも法案を通そうという、民主主義のルールを破壊するこの暴挙に、断固抗議するものです。
労働者の保護には極めて不十分な政府案と、それすら骨抜きにしようという修正案は、断じて認められません。
以上、反対討論とします。
○池田委員長 次に、阿部知子さん。
○阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案の原案に賛成、民主、自民、公明提出の修正案に反対の立場から討論を行います。
二〇〇八年秋、リーマン・ショックを引き金に、製造業などで、大量の派遣労働者や請負労働者など非正規労働者の雇いどめが起きました。失業と同時に住居も失わざるを得ないという深刻な問題は、年越し派遣村という形で社会に提起されました。
そして、二〇〇九年の政権交代は、野方図に拡大する雇用の劣化を食いとめ、貧困や格差社会から脱却し、人間らしい生き方を実現させたいという国民の期待によって実現いたしました。
政府案の重要な柱である登録型派遣の原則禁止、製造業務派遣の原則禁止、みなし雇用制度の導入は、政権交代の初心に基づいて、民主党、社民党、国民新党の連立政権下で提案し、派遣労働の規制強化を通じて、より安定的な働き方の実現を目指すために出されたものです。
しかし、本日、民主、自民、公明党によって提案された修正案は、登録型派遣と製造業務派遣の原則禁止を削除すること、日雇い派遣の原則禁止を一部の例外を除き原則容認すること、みなし雇用制度の法施行を三年後に先送りすること等、政府案を骨抜きにする内容です。修正案は、現在の不安定な雇用の現状を追認することになりかねません。政権交代に託された国民の期待を裏切る内容であり、修正を容認できません。
また、政府案は、一年半前に国会へ提出され、国民に示されたものです。長期間たなざらしにした上に、きちんとした説明、審議もないまま大幅な修正を行うことは、議会制民主主義をないがしろにするものにほかなりません。
規制強化の法改正が延びるにつれて、鳴りを潜めていた製造業派遣の求人が再び急増しています。修正を求める方々の中には、東日本大震災や急激な円高など、派遣法改正案をつくった当時とは経済状況が違うという意見がありますが、東日本大震災で真っ先に解雇されたのは、派遣労働者を含む多くの非正規労働者でした。さらに、国内の景気はなお低迷し、世界経済も欧州債務危機で、先行きは見えない状態にあります。だからこそ、雇用や生活の安定を保障するにふさわしい労働者派遣法の改正を行うべきです。
なお、共産党提出の修正案については、十分検討に値すると思いますが、時間的余裕がないため、今回は賛成しかねます。
働き方の質を向上させることが、日本社会の再生、東日本大震災からの復興への一歩であること、このことを強調し、私の討論といたします。
○池田委員長 次に、柿澤未途君。
○柿澤委員 私は、みんなの党を代表して、労働者派遣法改正案の原案並びに民自公の三会派共同提出による修正案に反対の立場から討論を行います。
そもそも労働者派遣法の改正案は、現政権の発足時に民主、社民、国民新党で三党合意して、最重要法案に位置づけてきた法案です。それを延々六国会にわたり継続審議にしてきたばかりか、ことしに入ってからは質疑は一度も行われることなく、きょうに至っております。
にもかかわらず、民自公による水面下の修正協議で、製造業派遣、登録型派遣、日雇い派遣の原則禁止というこの法案の目玉である部分を基本的に骨抜きにする修正案がまとまり、そして、きょう、提出即質疑、朝と夕の細切れの質疑三時間でそのまま採決してしまおうというのは、本当に信じられないやり方であると思います。
修正案の中身にも賛成できかねます。
まず、製造業派遣、登録型派遣、日雇い派遣の原案における目玉の部分をほとんど削除してしまい、原案から大骨を抜いた結果、もともとの派遣法改正案の面影が全然残っていないものになってしまっています。これだけを見ても、法案の出し直しに値するものと考えます。
しかも、修正案に残された労働契約申し込みみなし制度は、これまでの専門二十六業務派遣適正化プランや、請負に関する三十七号告示に関する疑義応答集に基づく労働局の行政指導に見られるように、労働局の現場の指導官の裁量行政を助長するような運用が行われる可能性があり、派遣労働者の雇用の安定化どころか、ここまで見られた官製派遣切りを加速させるリスクがあるものです。
修正案提出者側にもこうした懸念があるからこそ労働契約申し込みみなし制度の開始を三年後におくらせる修正が行われたのでしょうが、だとすれば、なおさら、一から出直しした方がよいはずです。
派遣で搾取されている労働者の保護のためと言いながら、結果として、派遣という働き方の選択肢を労働市場から追いやるような政策を続けてきたのが現政権のこの二年間の政策であったこと、誤った思い込みに基づく政策を根本的に改めなければ当の派遣労働者のためにもならないと申し上げて、反対討論といたします。
なお、日本共産党提出の修正案は、私たちの考え方とは全く逆のベクトルのものであり、同じく、賛成できません。
以上であります。
○池田委員長 以上で討論は終局いたしました。
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○池田委員長 これより採決に入ります。
第百七十四回国会、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。
まず、高橋千鶴子さん提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○池田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、岡本充功君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○池田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○池田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
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○池田委員長 この際、本案に対し、和田隆志君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。古屋範子さん。
○古屋(範)委員 私は、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 登録型派遣の在り方、製造業務派遣の在り方及び特定労働者派遣事業の在り方については、本法施行後一年経過後をめどに、東日本大震災による雇用状況、デフレ・円高等の産業に与える影響及び派遣労働者の就労機会の確保等も勘案して論点を整理し、労働政策審議会での議論を開始すること。
二 いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先企業に分かりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始すること。検討の結論が出るまでの間、期間制限違反の指導監督については、労働契約申込みみなし制度が創設されること等も踏まえ、丁寧・適切に、必要な限度においてのみ実施するよう改めること。
労働契約申込みみなし規定の適用に当たっては、事業者及び労働者に対し、期間制限違反に該当するかどうか等の助言を丁寧に行うこと。
三 いわゆる偽装請負の指導監督については、労働契約申込みみなし制度が創設されること等も踏まえ、丁寧・適切に実施するよう改めること。
労働契約申込みみなし規定が適用される「偽装する意図を持っているケース」を、具体的に明確化すること。併せて、事業者及び労働者に対し、偽装請負に該当するかどうかの助言を丁寧に行うとともに、労働者派遣と請負の区分基準を更に明確化すること。
四 労働契約申込みみなし制度の創設に当たり、派遣労働者の就業機会が縮小することのないよう、周知と意見聴取を徹底するよう努めること。
五 派遣労働者に対する労働・社会保険適用を一層促進するため、現行の派遣元指針及び派遣先指針に記載されている労働・社会保険適用の促進策の法定化を含む抜本強化について検討すること。
六 優良な派遣元事業主が育成されるよう、法令遵守の一層の徹底、派遣労働者の労働条件の改善等、労働者派遣事業適正運営協力員制度の活用も含めた適切な指導、助言等を行うこと。
七 派遣労働者の職業能力の開発を図るため、派遣元事業主は派遣労働者に対し教育訓練の機会を確保し、労働者派遣業界が派遣労働者の雇用の安定等に必要な職業能力開発に取り組む恒久的な仕組みを検討すること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○池田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○池田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、小宮山厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小宮山厚生労働大臣。
○小宮山国務大臣 ただいま御決議いただいた附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重して努力いたします。
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○池田委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○池田委員長 次回は、来る九日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後七時十七分散会