岡倉天心の言葉

「アジアは一つである。ヒマラヤ山脈は、二つの強大な文明、すなわち、孔子の共同社会主義をもつ中国文明と、ヴェーダの個人主義をもつインド文明とを、ただ強調するためにのみ分っている。しかし、この雪をいただく障壁さえも、究極普遍的なるものを求める愛の広いひろがりを、一瞬たりとも断ち切ることはできないのである。そして、この愛こそは、すべてのアジア民族に共通の思想的遣伝であり、かれらをして世界のすべての大宗教を生み出すことを得させ、また、特殊に留意し、人生の目的ではなくして手段をさがし出すことを好む地中海やバルト海沿岸の諸民族からかれらを区別するところのものである」(富原芳彰訳/『東洋の理想』)
原 文
ASIA is one. The Himalayas divide, only to accentuate, two mighty civilisations, the Chinese with its communism of Confucius, and the Indian with its individualism of the Vedas. But not even the snowy barriers can interrupt for one moment that broad expanse of love for the Ultimate and Universal, which is the common thought-inheritance of every Asiatic race, enabling them to produce all the great religions of the world, and distinguishing them from those maritime peoples of the Mediterranean and the Baltic, who love to dwell on the Particular, and to search out the means, not the end, of life.

「東洋から宗教を除けば無である。東洋の最大の成果は宗教の発見にある。即ち、東洋が為した人類への貢献は、宗教を創立した事である」(1911年、ボストン)

「もしもわが国が文明国となるために、身の毛のよだつ戦争の栄光に拠らなければならないとしたら、われわれは喜んで野蛮人でいよう。われわれの技芸と理想にふさわしい尊敬がはらわれる時まで喜んで待とう」(桶谷秀昭訳/『茶の本』)
原 文
Fain would we remain barbarians,if our claim to civilisation were to be based on the gruesome glory of war. Fain would we await the time when due respect shall be paid to our art and ideals.

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