岡倉天心の評伝執筆のため、平成9年にインドのマハラーシュートラ州北部にあるアジャンター石窟群を訪れました。天心は、明治35年2月半ばにここを訪れていました。
石段を5分ほど登る。天心の眼前に、馬蹄形にカーブするワーグラー川にそって500メートルにわたる巨大な石窟寺院群が迫ってきた。
紀元前2世紀ごろから、仏教僧たちは雨期の雨を避けて修行を続けられるようにするため、石窟僧院を掘ったのである。やがて5世紀中頃、大乗仏教の時代から壁画が描かれるようになった。
200メートルほど歩くと、第一窟に着く。天心が中に入ると、理知的で気品に満ちた表情の菩薩像が浮かびあがる。大きな波形の連眉、切れ長の目、引き締まった口。ややうつむきかげんで、右手に青い蓮華をもつ蓮華手菩薩像。この色彩豊かな壁画を見たとき、天心は即座に法隆寺金堂壁画との類似を見出している。
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