王師会─青年将校の義憤

藤井斉が同志を糾合

 王師会は、海軍の王師会が昭和3年3月に海軍部内の青年士官中の同志を集めて組織した。藤井は、海軍兵学校在学中に休暇等を利用して、大学寮に出入りしていた大川周明、満川亀太郎、安岡正篤、西田税らと接触し、国家改造の必要性を痛感するようになっていた。
 王師会綱領の一つには、「建国の大精神に則りて大邦日本帝国を建設し以て道義により世界を統一すべし」と謳われていた。昭和5年に、藤井は井上日召と提携している。この年4月3日付で、藤井は「憂国慨事」と題する印刷物を密かに頒布した。そこには、以下のように書かれている。
 「嗚呼財界を見よ、何処に社稷体統の天皇の道業は存する。皆是れ民衆の生血を啜り骨を舐る悪鬼豺狼の畜生道ではないか。内斯くの如し、外国際場裡を見よ、剣を把らざるの戦は、今やロンドンに於て戦はれつゝある」、「我等は外敵の侮辱に刃を磨くと同様にこの内敵─然り天皇の大権を汚し、民衆の生命を賊する貴族、政党者流及財閥─の国家亡滅の行動に対して手を空しうして座視するの惨酷無責任を敢てすべきではない」
 藤井は、権藤成卿から強い影響を受けていた。昭和5年12月14日に藤井が権藤に宛てた書簡には「本日、佐世保古本屋にて自治民範三冊ありしを皆買求め夫々有力なる同志に読ませ申候」「私初め一同、先生によつて日本を知り社稷を知れり、今はこの大思想の拡充─同志の養成と、その力によつて、現状を打破し先生を先づ宮城に迎へて経綸を思ふがまゝに実現し下さるようその邪魔をのぞく力は私がしつかりと作る覚悟にて努力致し居り候」(『現代史資料(23)国家主義運動(3)』みすず書房、昭和49年、608頁) 藤井は40名以上の同志を獲得したが、そのうち以下の9名が五・一五事件に関与している。
 古賀清志、中村義雄、三上卓、伊東亀城、大庭春雄、古賀忠一、村上功、村山格之、山岸宏(『現代史資料(4)国家主義運動(1)』みすず書房、昭和38年、44~45頁)。

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