アショーカ王─友愛の精神による統治

「正義の法」による勝利

 寛容の精神を備えた指導者アショーカ王の精神は、インドの平和主義の理想として継承されてきた。
 例えば、インディラ・ガンジーは、著書『私の真実』において、次のように述べている。
 「私たちの目標は、力の均衡を権力のためにではなく平和のために役立てることなのです。友愛の精神は、陰謀を挫折させる力です。印度の歴史を見れば、仏陀の、またアショーカ王の時代から、マハトマ・ガンジーの、および、ジャワハルラル・ネルーの時代まで、これこそが常にわが国の政策であったことがわかります」 
 アショーカは、紀元前3世紀ころ、インドのマウリヤ王朝第2代ビンドサーラー王の二男として生まれた。父王の死後、第3代の王として即位。その8年後、彼はインド半島北東部のカリンガ王国を併合、ついにインド初の統一国家を建設した。しかし、この統一国家建設は多大の犠牲によって成し遂げられたものであった。武力による征服の空しさに目覚めたアショーカは、その後仏教に帰依、武力ではなく「正義の法」による勝利を目指して、戦争放棄を宣言するのである。
 以後、彼は仏教思想を根本とした、政治の理想を「ダルマ(法)の詔勅」として発布して領内各地の磨崖(表面を磨いた岩)や石柱、洞窟の壁にそれぞれの地方の言語で刻ませたという(『河北新報』1994年12月28日付夕刊)。
 西洋近代の力の政治に対峙して仏教の慈悲に象徴される東洋の理想を称揚しようとした岡倉天心もまた、「アショーカ王とヴィクラマーディトヤ王は、われわれの小乗と大乗がその対抗する教義の信奉者たちを尊重したように、バラモン教徒と仏教徒とをひとしく尊重した」(桶谷秀昭訳)と書いている。


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