本書は『月刊日本』誌上の連載がもととなつた、明治を中心に活躍した志士たちの列伝である。簡にして要を得た人物紹介として極めて貴重なものであり、多様なソースからの情報が集約されてゐて教へられるところが非常に多い。個人的には副島種臣の本田親徳との交渉や、渥美勝に執筆の場を提供した松村介石の事績の紹介などに、意表を突かれて感服した。志士たちの系譜学として、これは間違ひなく必読の一書である。
他方において、本書は系譜学を検証する基準とすべき原理の問題について、様々に考へさせる本でもある。開巻劈頭で坪内氏はつぎのやうに述べてをられる。 続きを読む 『維新と興亜に駆けた日本人』の書評(2011年12月25日)─評者・松橋直方氏/『不二』

