日中対立打開の道─葦津耕次郎『日支事変の解決法』④

 葦津耕次郎は昭和13年に刊行した『日支事変の解決法』において、次のように書いている。
(③より続く)
〈一、官公吏ハ、日支共ニ、総テ、慈悲行(親切)ヲ以テ生命トセシムベキデアル。
人類ノ平和幸福ハ、唯一途、慈悲行ノ交換ニヨリテノミ之ヲ顕現スルヲ得ルモノデアル。故ニ、官公吏ノ生命トスベキハ慈悲行(親切)ノ実践デナクテハナラヌ、法律規則ハ、慈悲行ヲ顕現スル為ノ手段デアリ、方便デアル、若シ官公吏ガ、慈悲行ヲ忘レテ、法律規則至上主義ニ陥レバ、官公吏ハ、冷酷トナリ、不誠意トナリ、無責任トナリ、国民ハ、法ヲ免レテ恥ズルナキ、破廉恥漢トナルモノデアル、殷鑑遠カラズ、我日本ノ現状ハ、明確ニ之ヲ示現シツヽアルノデアル。
一、教育ハ、日支共ニ、総テ道徳ノ実践躬行ヲ以テ、生命トセシムベキデアル。
教育ノ目的ハ、人類ヲシテ、慈悲ノ行者トシテ、利用厚生ニ貢献セシメンガ為デアル、故ニ、如何ナル学府ト雖モ、道徳ヲ実践躬行セシメザル教育ハ、有害無用デアル、殊ニ、形而上学ニ於テ甚シトナスモノデアル、秦ノ始皇ガ、書ヲ焚キ、儒者ヲ穴ニセシハ、之ノ弊ヲ匡正セントセシモノデアル、目下日本、支那共ニ有害無用ノ教育ニ堕落シテ居ルノデアル。
前述ノ方策ハ、畏クモ、天照大御神ヲ初メ奉リ、天地神明ノ神慮ニシテ、八幡大神、敵国降伏(言向ヶ和ス)ノ神慮タルヲ疑ハヌノデアル、切ニ、我国、大官顕職ノ猛省ヲ望ムノデアル。〉(続く)

坪内隆彦