「新自由主義」カテゴリーアーカイブ

忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 三

三、エコロジーに適合した消費の思想
 「万物は天御中主神に発する」という皇道経済論の考え方は、物の運用、管理、消費の仕方について独特の考え方をもたらす。一切のものを大切にし、無駄なく完全に活かしきるのである。
 例えば、岡本廣作は、日本国民は「大君のおんもの」である財産を、上御一人の御仁慈に応えるように活用しなければならないと説いた[i]
 無駄なく完全に活かしきるとは、それぞれの「勿体」(もったい)を活かすことにほかならない。「勿体」とは、もともと仏教用語で、その物の本体、価値などを表している。万物に価値、存在意義があり、それを活かし切ることを重視することを意味している。つまり、「もったいない」とは、そのものの価値を完全に活かしきれていないことをいう[ii]続きを読む 忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 三

忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 一

一、肇国の理想と家族的共同体
「人民の利益となるならば、どんなことでも聖の行うわざとして間違いない。まさに山林を開き払い、宮室を造って謹んで尊い位につき、人民を安ずべきである」(宇治谷孟訳)
『日本書紀』は、肇国の理想を示す神武創業の詔勅をこのように伝える。皇道経済論では、国民を「元元」(大御宝)として、その安寧を実現することが、肇国の理想であったことを強調する。
山鹿素行の精神を継承した経済学者の田崎仁義は、皇道の国家社会とは、皇室という大幹が君となり、親となって永遠に続き、親は「親心」を、子は「子心」を以て国民相互は兄弟の心で相睦み合い、純粋な心で結びついている国家社会だと説き、それは力で社会を統制する「覇道の国家社会」とも、共和国を指向する「民道の国家社会」とも決定的に異なるとした[i]
続きを読む 忘却された経済学─皇道経済論は資本主義を超克できるか 一

「この都知事選挙の真の争点は戦略特区だと思います」「神州の泉」より

国家戦略特区に関して、「神州の泉」に掲載されたポッキー氏のコメントの一部を以下転載させていただきます。
〈私には小泉と安倍が対立しているようには見えません。
小泉の登場は争点を原発推進か反原発にすることだと思います。
しかし、この都知事選挙の真の争点は戦略特区だと思います。
すなわち、反原発票が宇都宮一択に流れるのを防ぐために、細川を担いだのではないかとみます。
舛添に入れようが、細川に入れようが、どちらも戦略特区を活用して構造改革路線であり、現安倍政権の新自由主義で規制緩和のグローバル化路線を強力に後押しするものです〉

G15(途上国15カ国グループ)

グローバル企業支配に抗するG15とは何か?
ISDS(Investor-State Dispute Settlement、投資家対国家の紛争解決)に象徴すれるように、国家に対するグローバル企業の優越という流れが強まりつつある。
こうした中で、先進国支配に抗し、南北格差の是正に取り組んできたのが、G15(途上国15カ国グループ)である。

G15とは、G8の途上国版ともいいうる会議で、非同盟諸国会議に属する主要途上国による定期会議のことである。1990年6月にマハティール首相(当時)の提唱で第1回会議が開催された。途上国の発展のための経済グループとしては、G77があるが、その結集による力は軽視できないものの、参加国が多過ぎ、小回りがきかないという欠点も指摘されてきた。その点、G15では、突っ込んだ議論が可能で、緊急の問題について討議できるなどの機動性がある。
続きを読む G15(途上国15カ国グループ)

新国際経済秩序(NIEO)

グローバル企業による世界支配の動きが強まっている。TPPや国家戦略特区もその手段である。
いまこそ、各国の主権、伝統文化の維持という視点から、あるべき国際経済秩序を考えるときではないか。その際極めて示唆に富むのが、新国際経済秩序(NIEO) である。もともとNIEOは、先進国とグローバル企業の横暴に憤った途上国が結束を強め、国際経済システムの変革を求めてまとめた考え方。
1974年4月、「資源と開発に関する国連特別総会」(第6回特別総会)が開催され、「新国際経済秩序樹立に関する宣言」(Declaration on the Establishment of a New International Economic Order)と行動計画が採択された。

「新国際経済秩序樹立に関する宣言」
1、諸国家の主権の平等、全人民の自決、力による領土獲得の不承認、領土の不可分および他国の内政不干渉
2、公平を基礎とする国際共同体の全構成国の広範な協力
3、全国家が共通の関心を持っている世界的な経済問題を解決するにあたって、全国家間の平等の基礎の上に立った完全かつ効果的な参加 続きを読む 新国際経済秩序(NIEO)

佐々木実氏「国家戦略特区は『1%が99%を支配するための政治装置』だ」

『日刊ゲンダイ』(2014年1月21日付)「構造改革派が支配 竹中平蔵が牛耳る『国家戦略特区』の実態」に、佐々木実氏のコメントが載っている。以下、『月刊日本』2月号に掲載された佐々木氏インタビュー記事の一部を転載する。

〈いよいよ今年から国家戦略特区が動き出します。『市場と権力』(講談社)で竹中平蔵氏の実像に迫ったは、特区法の成立と特区諮問会議の設置によって構造改革派が政策決定を牛耳る仕組みができあがってしまったと警鐘を鳴らしています。特区の危険性について、佐々木氏に聞きました。

竹中平蔵氏の復活が意味するもの
── 国家戦略特区諮問会議の民間議員に竹中平蔵氏が就任しました。
佐々木 特区を実質的に主導してきたのが竹中氏であることは明白です。特区構想は、2013年5月10日に開催された「第1回国家戦略特区ワーキンググループ」から本格的に動き始めましたが、その1カ月ほど前の4月17日の産業競争力会議で、竹中氏が「立地競争力の強化に向けて」と題するペーパーを用意しました。そこには、「経済成長に直結する『アベノミクス戦略特区』(仮称)の推進」が打ち出されていたのです。
新藤義孝・地域活性化担当大臣が5月10日の会合のために用意した「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」というペーパーは、まさに竹中氏の主張に基づくものだったのです。新藤氏は、これまでとは次元の違う特区を創設し、総理主導の下、強力な実行体制を構築すると明記し、総理を長とし、民間有識者が参画する諮問会議の設置などを提案したのです。しかも、新藤氏が用意した資料には、参考として竹中氏の「アベノミクス戦略特区」構想がわざわざ添付されていたのです。 続きを読む 佐々木実氏「国家戦略特区は『1%が99%を支配するための政治装置』だ」

電力自由化がもたらす悲劇

 脱原発を掲げて都知事選に立候補した細川護熙氏と、それを支援する小泉純一郎氏が話題になっているが、細川陣営の田中秀征氏は「電力自由化・原発ゼロ」を掲げるみんなの党を支持してきた人物。
 いま、電力自由化に向けた動きが着実に進められていることに注意すべきなのだ。2014年1月15日、茂木経済産業大臣は、政府が進める電力システム改革について、「限られた供給の中で効率的な電力消費が行われる社会を作りたい」と述べ、政府として新規参入を促し、電力小売りの全面自由化を推し進める考えを示した。
 電力自由化がいかなる状況を招くかはすでに先進国で実証済みだ。英米の電力自由化の問題点を取材したシャロン・ビーダー氏は『電力自由化という壮大な詐欺─誰が規制緩和を望んだか』(草思社、2006年)で次のように指摘している。
 
 「電力自由化が実施された地域の大半では、家庭用、小企業用の電気料金が上がり、それも劇的な値上げとなることもしばしばあった。なかでも、取引市場が整備され、有力な大手電力会社が多数存在する地域で市場操作がおこなわれており、日本でも、ひとたび取引市場が始動すれば、こうした現象が起こらないと考える理由はない。…自由化され、民営化された電カシステムのなかでは、世界的に見ても、サービスと信頼性が低下してきた。というのも、規制下にあった電力会社の負っていたサービス責任が、短期的な営利目標に取って代わられたからである。…競合する民間企業が達成できると思われた効率向上は、多くの場合、短期のコスト削減によってもたらされた。それには、サービスの質やレベルを落とすことも含まれており、より安い費用で同一レベルのサービスを提供するわけではなかった。サービスの料金を値上げすることで投資収益率を上げることもあった。しばしばコスト削減は、従業員にたいする報酬と労働条件の切り下げによって達成され、何千という電気労働者が解雇された。…コスト削減のもうひとつの安易な方法は、近視眼的ではあるものの、安全、保守管理、トレーニング、開発研究などにかかる費用を切りつめることである。古くなった設備でも、定期整備したり、故障が起こるまえに交換したりしない。その結果、事故や設備に関連した停電が増加したし、配送電網の保守点検と開発の計画立案と責任は市場優位性を与えられなかった」

岩月浩二「グローバル企業が国家を解体する」英訳 Global Corporations Will Dismantle the State

以下に『月刊日本』2014年1月号に掲載した岩月浩二先生の「グローバル企業が国家を解体する」の英訳を掲載します。
グローバル企業のための特定秘密保護法の正体を世界に発信すべきだと思います。

Global Corporations Will Dismantle the State

Koji Iwatsuki

Lawyer

The lawyer Koji Iwatsuki describes the Trans-Pacific Partnership (TPP) as an agreement that will bring about a state of investor sovereignty and a tool for global corporations to establish world dominance. He asserts that the unnatural provisions of the Act Relating to the Protection of Specific State Secrets (State Secrets Protection Act) also should be seen as part of this strategy of the United States and global corporations. Gekkan Nippon asked Iwatsuki about the horrifying designs lurking within this legislation.

A Law for the United States and Global Corporations

GN: What is the real purpose of the State Secrets Protection Act?

Koji Iwatsuki: I believe that this legislation really is a means of establishing remote control by the United States and global corporations. Japan is being hijacked by the United States and global corporations. The law is a tool by which they will have efficient control over decision making in Japan and plunder as much profit as they can from Japan’s resources. 続きを読む 岩月浩二「グローバル企業が国家を解体する」英訳 Global Corporations Will Dismantle the State

ローマ法王にも否定された新自由主義者たちの屁理屈「トリクルダウン理論」

 大企業の横暴を擁護するときの新自由主義者たちの屁理屈が「トリクルダウン(trickle-down)理論」。富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)するのだと言う。しかし実際にはそんなことは起こらない。
 ローマ法王フランシスコが2013年11月に発表した初の「使徒的勧告」も、「トリクルダウン理論は立証されておらず、経済的に大きな力を持つ者の善に対するあまりに単純な期待だ」と述べている。

グローバル企業の利益のために、法律もアメリカ化していくのか!

 『司法占領』で、わが国司法主権の喪失を指摘した鈴木仁志氏は、『民法改正の真実─自壊する日本の法と社会』(講談社)において、民法改正によって次のような事態に陥ると警告する。
 「日本企業は、予測可能性の欠如を補うため、改正法のモデルである英米法の判例や国際モデル法の実例を調査して援用することも検討せざるをえなくなろう(そうなれば、わが国のビジネスは、いよいよ米国等の外資系企業の側に有利な土俵の上で勝負せざるをえないこととなる)」