国際経済システム改革の挑戦
アメリカ主導の国際秩序に対する、もう一つのイスラームの挑戦が静かに進行している。それは決してテロといった暴力的な手段ではなく、イスラームの普遍的な理念と構想力によって国際経済システムを変革していこうという平和的な試みである。その第一弾が、貿易取引において金貨を使用しようという構想である。金貨の名称は「ディナール」。すでに、イランがマレーシアとの貿易決済でディナールを使用することを提案したとも報じられている。ディナール普及のための事務局をマレーシアに設置する準備も進行している。 続きを読む イスラーム金貨「ディナール」
「アジア的価値観」カテゴリーアーカイブ
アジア・アフリカ会議最終コミュニケ
1955年4月にインドネシアのバンドンで開催されたアジア・アフリカ会議の最終コミュニケ抜粋
「アジア・アフリカは偉大な宗教と文明の揺籃の地であった。この宗教と文明は自らの発展過程をたどりながら他の宗教や文明を豊かなものにしてきた。したがってアジア、アフリカの文明は精神的、世界的基盤の上になりたっている。不運にもアジア、アフリカ諸国間の接触は過去数世紀にわたってさまたげられてきた。 続きを読む アジア・アフリカ会議最終コミュニケ
井筒俊彦の精神的東洋
天心の着想と共時的構造化の試み
1982年、井筒俊彦は『意識と本質―精神的東洋を索めて』の後記において、次のように書いた。
「東洋哲学─その根は深く、歴史は長く、それの地域的拡がりは大きい。様々な民族の様々な思想、あるいは思想可能体、が入り組み入り乱れて、そこにある。西暦紀元前はるか遡る長い歴史。わずか数世紀の短い歴史。現代にまで生命を保って活動し続けているもの。既に死滅してしまったもの。このような状態にある多くの思想潮流を、『東洋哲学』の名に値する有機的統一体にまで纏め上げ、さらにそれを、世界の現在的状況のなかで、過去志向的でなく未来志向的に、哲学的思惟の創造的原点となり得るような形に展開させるためには、そこに何らかの、西洋哲学の場合には必要のない、人為的、理論的操作を加えることが必要になってくる。 続きを読む 井筒俊彦の精神的東洋
折口信夫のアジア統一論
産霊とマナによる統一
安藤礼二氏は、折口信夫が北一輝・大川周明・石原莞爾ら「超国家主義者」たちがアジアの統一・協同させる政治的・経済的な革命を志向したのに呼応するかのように、信仰上の、精神的な革命を断行しようとしたと捉えた(安藤礼二『神々の闘争 折口信夫論』講談社、2004年、111頁)。そうした折口の試みは、日本の古道を普遍宗教として提示し、イスラームを含めた他の宗教との融合を模索した田中逸平の試みとも通じている。安藤氏は、次のように折口の信仰上の革命をまとめる。 続きを読む 折口信夫のアジア統一論
イスラーム先駆者 田中逸平
イスラーム先駆者
中野常太郎と亜細亜義会
明治42年にトルコ系タタール人、アブデュルレシト・イブラヒムが来日すると、中野は大原武慶とともにムスリムと興亜陣営の連携を推進する。 続きを読む 中野常太郎と亜細亜義会 |
アジア的価値観関連文献
雑誌
著者 | タイトル | 雑誌名 | 巻・号 | 発行日 |
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石井 知章 | 橘樸の「東洋的共同社会」論 | 明治大学教養論集 | (493) | 2013.3. |
高藤英樹、安田英土 | 自由民主主義と”アジア的価値”の本質 : 東南アジアにおける西欧的価値規範としての自由民主主義の制度化にみるその漸進性の意味についての試論的考察(改訂版) | 江戸川大学紀要 | 23 | 2013.3. |
池田 謙一 | 独立論文 アジア的価値を考慮した制度信頼と政治参加の国際比較研究 : アジアンバロメータ第2波調査データをもとに | 選挙研究 | 28(1) | 2012 |
荒川 善廣 | 「場所」と「東洋的無」 | 天理大学おやさと研究所年報 | 18 | 2011 |
高藤英樹、安田英土 | 自由民主主義と”アジア的価値”の本質–東南アジアにおける西欧的価値規範としての自由民主主義の制度化にみるその漸進性の意味についての試論的考察 | 情報と社会 | 21 | 2011年3月 |
田口佳史、山口哲史 | 東洋思想への経営転換を図れ | 先見経済 | 57(2) (通号 691) | 2011年1月15日 |
岡田真美子 | 生命へのまなざし–実験動物供養にみる東アジア的宗教感性 (特集 感性のまなざし) | 感性哲学 | 10 | 2010年9月 続きを読む アジア的価値観関連文献 |
アジア的価値観
「全体の調和」と「万物の連動」
アジア的価値観は、欧米の普遍的価値とも調和する。決してアジアにしか存在しない価値観ではない。キリスト教徒が多数を占める社会も含め、宗教が生活の中に生きていた時代には、ことさらにアジア的と名づけて意味のある独自の価値観は成立しなかったさえいえるだろう。ただし、アジア的価値観は、近代以降の欧米社会の根底にある価値観とは異なる部分が多い。 続きを読む アジア的価値観
高倉健の「単騎、千里を走る。」─アジア合作の時代
2005年10月に開催された第18回東京国際映画祭は、アジア映画の躍進のみならず、アジア合作の時代を印象づけた。ハリウッド映画を押しのけて、日中合作「単騎、千里を走る。」がオープニングを飾り、クロージングには「力道山」が選ばれたからである。
文化大革命後、中国で初めて上映された日本映画が高倉健主演「君よ憤怒の河を渉れ」(1976年、監督・佐藤純彌)であった。中国全土で大ヒットし、多くの中国人に感銘を与えた。若き日の張芸謀(チヤンイーモウ)監督もその一人であった。一方、高倉はチャン監督の「初恋のきた道」(1999年)を称賛、これに感激したチャン監督が2000年に高倉主演の映画制作を決意し、「単騎、千里を走る。」に結実した。 続きを読む 高倉健の「単騎、千里を走る。」─アジア合作の時代