坪内隆彦 のすべての投稿

山鹿素行『中朝事実』2011年12月11日③

山鹿素行は『中朝事実』「神教章」で「天地の開け初めから神徳が行はれ、明らかな教戒が備は」っていたと主張した。この見解には反論もあった。
「或疑」において、素行は次のように書いている。
「『日本に漢学・漢籍が輸入されたのは神代から遥か後の事で、神代に学問があったとする証拠は文献中にない。それにも関らず、天神の教戒などと学教を云々するのは少し妙に思はれる』と問ふ人がある。
右の質問者は学の本質を見誤まつてゐる。学とは聖人の言行を受け伝へ実行することで、神に就いても同じ事が言へる。だから、この世に人物が存在すれば、その言行を受け伝え実行出来る筈であり、従つて学問は存在することになるのだ。我が上古にこの事実が果して皆無だつただろうか」
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山鹿素行『中朝事実』2011年12月11日②

素行が『中朝事実』において訴えようとしたのは、日本国体の自立性であった。
同書「或疑」において、素行は神武天皇の御先祖が呉の泰伯だと考える説を一笑にふしている。
この部分を解説した高須芳次郎は、江戸初期から中期にかけて、支那崇拝の漢学者などは、往々、これを真実の如く考えたと指摘し、次のように書いている。
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山鹿素行『中朝事実』2011年12月11日①

山鹿素行は『中朝事実』「神教章」で次のように書いている。
「我神の道は何も支那・朝鮮との交通が開けた後に存在するやうになつたのではない。天地の開け初めから神徳が行はれ、明らかな教戒が備はり、支那聖人の書物を知らなくとも、別に不足を感ずる点は毫もなかつた。折柄、他国との交通が開けたのを利用して、その長所を採リ、皇威の進展の一助としたのは、全く皇室の御心が広く、万物を受入れられる大御心の結果に外ならない。……我国が支那の道を一助として用ひ、国威を盛大にした事実は、広く日本の無比な地位を物語るものである」

アメリカに物申した男─ウゴ・チャベス


アメリカの石油産業とベネズエラ財界
アメリカは、ベネズエラから日量150万バレルの石油を輸入し、南米屈指の油田地帯ともいわれる同国北西部マラカイボ油田の開発にも関わってきた。この石油の利権に近い2大政党(キリスト教社会党と民主行動党)による政治支配が1958年以来のこの国の歴史である。そして、石油産業を支配する一握りの富裕層が富を握り、国民の8割が貧困に喘ぐといういびつな状況が続いていた。1990年代には、市場万能主義のアメリカ型資本主義が浸透し、貧富の格差はさらに広がった。
カラカス東部の小中高一貫校の教頭、ソニア・グラテドルさんは「世界第5位の原油輸出国なのに、なぜ私たちは貧しいのか。国民の多くは国営ベネズエラ石油(PDVSA)の幹部とその顧客、米国が富を奪ってきたからと考えている」と語る(『毎日新聞』2003年2月6日付朝刊)。
この利権構造の打破による貧困層の救済を目指して登場したのが、元中佐のウーゴ・チャベス(Hugo Chavez)である。 続きを読む アメリカに物申した男─ウゴ・チャベス

『維新と興亜に駆けた日本人』の書評(2011年12月1日)─「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

坪内隆彦『維新と興亜に駆けた日本人』(展転社)を読んで
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書評 玉川博己

本書は坪内隆彦氏自身が編集長をつとめる『月刊日本』に連載してきた「日本文明の先駆者」の中から抜粋されたものを中心にまとめられたものである。私もこの連載はずっと愛読しており、以前からその出版を待ち望んでいただけに期待に違わぬ内容である。
坪内氏は3年前にやはり『月刊日本』誌に連載した「アジアの英雄たち」をまとめた『アジア英雄伝-日本人なら知っておきたい25人の志士たち』を出版しており、大変好評であったが、今回の著書はその姉妹作ともいうべきものである。
さて本書は西郷南洲、杉浦重剛、頭山満、内田良平ら明治維新以来20人の先駆的思想家の列伝となっている。筆者によれば「本書で取り上げる人物の多くは、肇国の理想を現代において実現しようとした先駆者である」という基準でその思想と行動を簡潔明瞭にまとめている。 続きを読む 『維新と興亜に駆けた日本人』の書評(2011年12月1日)─「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

『維新と興亜に駆けた日本人』の書評(2011年11月26日)─山崎行太郎氏の政治ブログ『毒蛇山荘日記』

「月刊日本」編集長・坪内隆彦『維新と興亜に駆けた日本人』(展転社)を読む。本書は、『アジア英雄伝』に続く「反植民地・アジア独立論」の第二弾である。我々が忘れさせられたホンモノの思想家、革命家たちが、ここにいる。本書は、最近、珍しい危険な書、つまり革命的熱情を喚起する書である。
僕は、自分の優柔不断な、市民主義的な不甲斐なさを顧みもせず、いたずらに歴史に残る英雄豪傑を賛美し、その破天荒な生き方に酔い痴れるのは好きではない。昨日も「憂国忌」に出席してきたが、その種の話が少なくなかった。三島由紀夫や吉田松陰、西郷隆盛、あるいは大塩平八郎・・・を賛美することは容易なことである。ただ賛美すればいいのだから。自分は、それこそ小市民的なみみっちい生活を満喫しながら、理想や義に生き、若くして命を捨てたり、獄中に二、三十年を過ごさざるをえなかったような偉大な革命家や思想家たちを褒め称えるだけなら、炬燵で蜜柑を貪りながら韓流ドラマに酔い痴れるご婦人達とたいして違いはない。坪内隆彦の新著『維新とと興亜に駆けた日本人』も、「アジア独立」に命懸けて取り組んだ日本の英雄豪傑たちを取り上げている。一見すると、この本も、「高見の見物」的な視点からの凡庸、且つ無責任な「英雄豪傑賛美論」に見える。しかし、僕は、坪内隆彦が、どういう人物かということを知っている。 続きを読む 『維新と興亜に駆けた日本人』の書評(2011年11月26日)─山崎行太郎氏の政治ブログ『毒蛇山荘日記』

大日社の思想

杉浦重剛と頭山満を師として

『大日』第7号、昭和6年5月15日発行
 大日社設立は昭和5年と考えられ、雑誌『大日』は翌6年から昭和20年まで14年間に亘り発行された。
同誌発刊の辞には次のようにある。「明治21年乾坤社を興して、雜誌『日本人』を創めたるは吾人の師長天台道士杉浦重剛先生なり。其の翌年新聞『日本』を興して國體主義を高調したるは羯南陸實先生なり。爾來40年濟々たる多士は苦節に死し、吾人の先輩は曉天の星の如くなれり。吾人の魯鈍なる、再躓三躓今や讒かに彈丸黒子の地を守るに過ぎず。茲に頭山立雲先生を社師として、廣く天下同志の贊襄を仰ぎ、新たに『大日社』を興し、雜誌『大日』を創刊して名節を砥礪し大義に終始し、毅然筆致に任じて操觚の天職を全うせんとするは先輩師長の先蹤を追うものなり」 続きを読む 大日社の思想

『大日』社説「皇道大理想實現」(昭和9年)

皇道大理想實現
日本は神ながらの道によつて國を立つ。神ながらの道は、天地の公道である。大自然の大道である。原則である。秩序である。生命である。活動である。神ながらの道に隨つて動く所、茲に眞の自由がある。完全なる獨立がある。此の自由、此の獨立は、天地の公道に合體し、大自然の秩序と生命と活動とに合體せる自由であり獨立である。此間の自由獨立の眞髓を體得して、茲に、始めて、完全なる道徳宗教哲學藝術の極到に逹し、人類最高文化の原則を完現するに至る。孟子が、浩然の氣を唱へ、至大至剛、天地の間に塞ると説いたのは、聊か我が神ながらの道に基づく自由の境地を説かんと試みたものに近い。而かも、此の自由なるものゝ眞意を一歩誤る時は、恐るべき大害を及ぼす。 続きを読む 『大日』社説「皇道大理想實現」(昭和9年)