古来、東南アジアの基層文化には、他の地域同様に、万物に精霊を見るアニミズム(Animism)があった。しかし、やがてアニミズムは、多くの場合に仏教、イスラーム、キリスト教などの普遍宗教の背後に隠れてしまった。そして、アニミズムは普遍宗教へと発展する以前の未開、野蛮な信仰だという考え方が浸透してしまった。だが、アニミズムには、行き過ぎた人間中心主義を修正し、自然との共生を確立する上で、重要な思想的可能性が秘められているのではなかろうか。 続きを読む 「アニミズムと先端科学 明日のアジア望見 第59回」(『月刊マレーシア』477号、2005年1月1日)
坪内隆彦 のすべての投稿
佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート③
原理的な西洋政治学批判を展開した佐藤清勝は、①「国家観からの批判」に続いて、②「法律説の観点」から西洋の政治の在り方を批判した。彼は、神法説、自然法説、歴史法説、功利法則説など、法律に関する学説の変遷を見た上で、次のように述べる。
「法治は法律によりて政治を施行することである、即ち、法治国は統治権により法律を発布し、この法律を実行せしめて、人民を治むる国家である。即ち、法律は統治の権力をその泉源として、人民をこの権力に服従せしむるのである。……法律はその背後にある主権者の権力によつて施行せらるゝのであるから、法治は即ち権力政治である力を万能とする政治である」(十四、十五頁)
佐藤は、このような法治に対して、わが国古来の政治は道徳を根底とする政治であったと主張し、概要次のように説いた。
わが国でも、多少の法令規則はあったが、それは政治の補助手段であって、その実質は道徳政治であった。道徳政治は、為政者がまず道徳を実践し、模範を示し、これを実行させる政治である。この点で全く法律政治とは異なる。わが国上古、中古の歴代天皇は、道徳を実践されただけではなく、よく人民を愛撫し、人民に恩恵を施し、刑罰を寛大にされ、仁慈の政治を行われたのである。
このように説いた上で、以下のように結論づけている。
「欧米国家の政治は、その法律思想に於て権力主義である。是に反し、我国古来の政治思想は道徳主義であつた。権力主義の思想は道徳主義の思想と相容れざる思想である」(十六、十七頁)
ディナール構想の展開
マレーシアのクランタン州が金貨ディナールを発行
信州国民党
「全人類の皇化」を目指す
信州国民党は、昭和4年5月26日、八幡博堂、鈴木善一によって、松本市に組織的政党として設立された。総理に野田喜代志、顧問に頭山満、内田良平、執行委員長に寺田稲次郎、書記長に八幡博堂、書記次長に鈴木善一、統制委員長に西田税、中央委員に長野朗、津田光造が就いた。宣言は、次のように謳った。
「我等の敵は独り是等国内に跳梁跋扈する非日本的、非国民的徒輩のみではない、侵略的白色人種閥勢力に依って有色人種に加えられつつある生存権の事実上の否定を見よ。更に又世界各国の共産主義化と彼等の所謂「日本爆破」を計画実践しつつあるソヴエット、ロシヤの暴状を見よ。
彼等は国際的共存共栄の公道を破壊し、人類生存の理義を蹂躙する世界の公敵である。道義的世界建設の歴史的使命を有する我等は、今や有色人種の尖端に立ち、この幾世紀の永きに亘る巨弾と鉄鎖の悲惨なる苦難と試練とを突破して、人類の解放戦に勇敢に戦うべきである。然り、この世界を横行闊歩する強敵を屠って全人類を完全に皇化する日まで、我等の決死的戦闘は継続されねばならなぬ」
信州国民党は、昭和4年11月に日本国民党と改称し、翌昭和5年2月の第2回普通選挙には八幡博堂が信州から立候補して、既成政党に対して大いに気を吐いた(荒原朴水『大右翼史 増補版』大日本一誠会出版局、1974年、100頁)。
昭和6年11月に大日本生産党に合流した。
マレーシアのプロトンが日本進出、まず「サトリアネオ」を販売
佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート②
佐藤清勝著『世界に比類なき天皇政治』の特徴は、単に天皇政治を称揚するだけではなく、西洋政治学の問題点を具体的に指摘した点にある。
戦後わが国においても、「政党政治の行き詰まり」論をはじめとして、民主主義批判はあるが、佐藤は西洋政治を、より原理的に批判しようとした。
同書第一編「西洋政治の論評」第一章「西洋政治学に対する批判」において、佐藤は西洋政治学の展開を概要次のように説明する。
欧州における政治学はギリシア時代から登達し、ソクラテス、プラトン、アリストテレスのような哲学者は、いずれも道徳を論ずるとともに政治を論じた。彼らは政治の理想を道徳に置いていた。 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート②
佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート①
佐藤清勝は『世界に比類なき天皇政治』緒言冒頭で、西洋人の不幸な歴史は、彼らが理智ばかりを重視し、感情を軽視してきた結果だと断じる(二頁)。
西洋人の歴史は、佐藤によれば、苦難の連続だった。まず、教権全盛時代には法皇僧侶などの人情なき抑圧に苦んだ。そして、君権全盛時代には、君主貴族などの愛情なき虐政に苦んだ。民権全盛となってからも、政党者や金権者の恩恵なき強圧に苦しんできた。
西洋人は「理智的反抗心」により、信仰の自由を叫んで僧侶の暴圧を絶呼し、天賦の人権を叫んで君主権の非理を主張し、階級争闘を叫んで資本家の専横を怒号するというように、絶えず現状を打破して、新しい境遇を得ようとして、大声で激しく叫んできた。佐藤は、それこそが西洋の政治思想だと説き、次のように書く。
「彼等は常に現状を打破し、現社会を改造して新正面を開かんとする努力は、益々彼等を躯つて奈落の底に沈淪せしむるものである、而して、今や彼等は国家を否認し、民族を忘却し、政治を嫌悪し、而して、世界主義に傾きつつあることは、即ち、彼等民族自滅の深渕に向つて急ぎつつあるのである」(四頁) 続きを読む 佐藤清勝『世界に比類なき天皇政治』(昭和十八年六月)読書ノート①
ある書棚から
書籍
著者 | 書籍写真 | 書名 | 出版社 | 出版年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
片岡鉄哉 | “黒船待ち”の日本―ゴーリズム国家をめざして | 日本教文社 | 1982年1月 | ||
田中正明 | アジア独立への道 | 展転社 | 1991年7月 | ||
竹内好 | 日本とアジア | 筑摩書房 | 1993年11月 | ||
ムハンマド・バーキルッ=サドル著、黒田寿郎訳 | イスラーム経済論 | 未知谷 | 1993年12月 | ||
マハティール、石原慎太郎 | 「NO」と言えるアジア―対欧米への方策 | 光文社 | 1994年10月 | 続きを読む ある書棚から |
ドキュメンタリーDVD(歴史・戦争)
写真 | タイトル | 価格(円) | 枚数 | 時間(分) | 販売元 | 発売日 | 内容 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 DVD-BOX | 8,777 | 3 | 251 | NHKエンタープライズ | 2012/03 | 日本海軍のエリートたちによる告白とは――1980(昭和55)年から11年、130回余りにわたり、かつての日本海軍の参謀たちが密かに集い、議論を重ねていた。「海軍反省会」 | |
NHKスペシャル 映像の世紀 SPECIAL BOX | 64,328 | 12 | 873 | NHKエンタープライズ | 2005/11 | 激動の20世紀を映像で記録したロングセラー作品が、豪華解説書とDVD別巻を加えてリニューアル! | |
東京裁判 | 3,135 | 2 | 277 | キングレコード | 2004/08 | 小林正樹監督。昭和23年、東京都市ヶ谷の旧陸軍省参謀本部において開かれた「陸軍国際軍事裁判」の模様を収めた米国防総省の記録フィルムを基にしたドキュメンタリー映画 続きを読む ドキュメンタリーDVD(歴史・戦争) |
祖国自己確認の歴史における『中朝事実』
わが国の歴史は、国体論の確立を目指した持続的な営みであった。その中で、国際情勢の変化、特に対外的危機意識の高まりは、常に祖国日本の自己確認を促してきた。
永安幸正は、「何れの国民でも同じであるが、国民集団としてある種の危機が迫っていると感づく秋には、祖国あるいは民族を世界の中に位置付け、他国と比べて祖国自民族の歴史、実力、可能性を確かめなければならぬものである」と指摘する。
山鹿素行の『中朝事実』もまた、繰り返されてきたわが国の自己確認の歴史の一時代として位置づけられる。永安は、『中朝事実』執筆の目的を、①国家創設及び創設後の政治における要点の解明、②国際関係において、日本列島上のわが国こそが中朝・中華・中国(なかつくに)であることの主張──に整理した上で、次のように『中朝事実』を、繰り返されてきた祖国自己確認の試みの歴史の中に位置づける。 続きを読む 祖国自己確認の歴史における『中朝事実』