〈家康が天下人となった幕初の頃、勢いをかって、徳川家のなかで、「なぜ天皇を徳川幕府は必要とするのか」という議論になったことがあった。なかには家康の側近・天海のように、「『メイド・イン・徳川』の官位をつくれば、天皇は必要ない。伊勢神宮の神主にして押し込めてしまえ。そうすれば天皇をおかしなことに利用される危険もなくなる」という意見も出ます。
これに対し、伊勢の藤堂高虎が、いやそれではいけない。やはり「天朝(天皇)の御羽翼(補佐)となってこそ、諸大名も屈服し、万民も将軍を仰ぐ」といって諌めたといいます。この話は江戸後期の藤堂藩の史料に出てくるので、真偽ははっきりしませんが、ありえることです〉