以下、国家戦略特区に関する「神州の泉」の記事(2013年11月19日)を転載させていただきます。
国家戦略特区は第二次安倍政権になって急に出てきたものだ。
2013年の6月に、アベノミクス「第3の矢」成長戦略の要として創設が閣議決定されている。
日本における特区は大まかに3つの形として出てきている。
最初は2002年、小泉構造改革の一環としての「構造改革特区」、次いで2010年の菅政権時に出た総合特区(「国際戦略総合特区」と「地域活性化総合特区」の2種類がある。)、そして、現在の安倍政権下で出てきた『国家戦略特区』である。
小泉政権時代から“特区”は、怪しげな新自由主義政策の一環だとは感づいていたが、このごく小規模で地域囲い込み的な政策実験区画は、全体にとってさほど大きな影響はないと思い込んでいた。
ところが、アメリカに陰険な指図を受けて新自由主義政策に舵を切った小泉政権をはじめとし、菅政権、野田政権になるにしたがって、この特区構想は想像以上に大きな広がりを持っていたようである。
そして決定的なのは、現今の安倍政権がこの特区構想をアベノミクス第3の矢の主要経済成長路線と位置付け、国家主導による強力な規制緩和や法人の税制優遇に乗り出したことにある。
問題はいろいろと考えられるが、結論を先に言ってしまえば、上記3種類の特区とも、明らかに年次改革要望書の別バージョンであるということである。
関岡英之氏が小泉政権時代から警告していた“対日改造プログラム”の具現化政策が、我が国における“特区”なのである。
すでに全国各地で様々な種類の特区が実現している。(それはまた別記事で。)
国民がその悪影響になかなか気づいていないのは、マスコミが特区構想(特区制度)を、戦後日本がたどった経済路線の中で、あたかも自然発生的に出てきた好ましい政策であるかのように“化かし”(イリュージョン)をやっているからである。
構造改革特区、総合特区、国家戦略特区、これらはアメリカ・コーポラティズムによるかなり強い外圧によって出てきていることを多くの国民は気付いていない。
神州の泉は小泉時代から気づいてはいたが、さしたる影響はないものとたかをくくっていた。
だが、つい最近になって、前大田区議会議員の奈須りえ氏が、「国家戦略特区」の危険性について動画やHPなどでなどで訴えていることを聞くと、実はとんでもないことになっていることを知った。
今次安倍政権は、6月に国家戦略特区法案を閣議決定し、7月の参院選で事実上独裁の立場を固めてから、特定秘密保護法や日本版NSC法とともに、俄然として先鋭化した特区法案に本腰を入れた。
突然だが、竹中平蔵氏と言えばアメリカのポチ、日本新自由主義の第一の担い手、売国奴、論文盗用疑惑の人、住民税脱税疑惑の人、日本に底知れぬ怨嗟(えんさ)を持つ人物だなど、いろいろと言われる。
彼の属性は一筋縄ではいかない多面性があるが、その中でも、彼は小泉構造改革の大番頭であり、新自由主義(フリードマン主義)を決定的に日本にもたらした売国買弁の代表格とは言えるだろう。
その竹中氏は、今年2013年4月に「産業競争力会議」で、国家戦略特区法案の具現化を強く示唆したことは間違いない。
このことからも、特区構想がアメリカの意図で他律的に行われていることがよく分かる。
11月15日、この事実を、日本共産党の佐々木憲昭議員衆院内閣委員会で暴露している。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-19/2013111904_04_1.html
この日、佐々木議員は、東京都が国家戦略特区として、外国企業にだけ法人実効税率を20・2%以下に引き下げる提案をしていることを告発し、「同じ場所に建つ、同じ工場でも税率が違う。こんな不平等なやり方を認めるのか」と糾弾した。
この際、佐々木議員は2002年からアメリカ政府が一貫して特区制度の創設と充実を求めてきたと直球で指摘している。
安倍内閣が決定した「日本再興戦略」は、国家戦略特区を活用して外資の呼びこみを「倍にする」とうたっていることをあげ、企業を優遇する特区設立政策はやめるよう主張したようである。
神州の泉もその通りだと思っている。
特区という“特別な囲い込みの区域”とは、米国多国籍企業が営利活動(収奪活動)を支障なくできるように、日本のシステムを改変する作業によって特徴づけられていると断言できる。
その改変要素が多国籍企業の税制優遇と、多国籍企業のための規制緩和なのである。
何度も書いているが、大企業のための税制優遇と外資のための規制緩和は、相対的に国民生活を窮乏に陥(おとしい)れ、社会の安定性をぶち壊すのである。
その理由は明白であり、外資が国民に回るべきゲイン(利益)を還元せず、それのみか、儲けのために日本社会を守っている規制や諸制度を変えてしまうからである。
だからこそ、安倍政権が推し進める国家戦略特区は売国なのである。
この事実から、安倍晋三首相が岩盤規制をドリルで粉砕すると言っていることが、どれほど恐ろしいことかよく分かるだろう。
日本における特区とは、外資による外資のための日本社会の構造改変なのである。
全国民に波及する労働者の生活権や、社会の秩序・安全にかかわるルールを、特定の区域で怪しげな連中が先行的に導入し、その地区の法制度や規制を外資のために作り替えるのである。
そればかりか、安倍政権の考えを読むまでもなく、特区という“先行囲い込み政策”は、一気に全国展開を狙うという、最終ステージを間近に控えている。
国家戦略特区とは『国家戦略“新自由主義”特区』なのである。
つまり、これはほとんど実質的なTPP(環太平洋経済連携協定)と言える法制度に他ならない。
今の日本が砲艦外交官ペリーの時と決定的に違うのは、日本人側から率先して海賊に門戸を開いていることにある。