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国家戦略特区に関する記事①

 以下、国家戦略特区に関する「神州の泉」の記事(2013年11月15日)を転載させていただきます。

国家戦略特区とは、アメリカ多国籍企業の暴力的収奪活動を可能にするための『アリの一穴』政策である

副題:米国多国籍企業と安倍政権はなぜ規制を親の敵にするのか!?

前大田区議会議員の奈須りえ氏が、第二次安倍政権が躍起になっている「国家戦略特区」の危険性について国民に訴えている。国家戦略特区は、今年2013年4月に「産業競争力会議」で、竹中平蔵氏が中核にいて旗を振っていたことは間違いない。

表面上は総務大臣の新藤義孝氏がこれを取り仕切っているように見えているが、実際は竹中平蔵氏がこの特区構想のボス格になっている。
慶応大学教授、産業競争力会議議員・竹中平蔵氏は2013年の6月に「ポスト骨太」ととして、「成長戦略の隠し玉としての戦略特区の枠組みで、規制改革と法人減税の大玉を実現する。」と言っている。

政府による国家戦略特区の大理念は、「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」(H25.6.14 閣議決定)で、「国家戦略特区」の創設が位置づけられた。
この国家戦略特区は、日本経済社会の大胆な規制・制度改革を実行していくための方法論として、

○「居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成」、
○「医療等の国際的イノベーション拠点整備」といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じ、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出することを目的とする。

なぜ日本を医療などの国政イノベーションの拠点にするために“特例的な措置”にする必要があるのか。
いつ国民や東京都民がそんなことを望んだというのか。
11月13日国家戦略特区法案は衆院内閣委員会で審議が始まったが、新藤義孝総務相は地域限定で規制緩和する国家戦略特区について「市町村や県を“またぐ”場合もある」と述べた。
「またぐ」とは人を食った言い方だ。
新藤さん、そんなわけの分らないごまかしを言わずに“全国展開する”と言ったらどうなんだ!?
政府は来年初めにも東京都などの首都圏高層を含め、全国で3〜5カ所の特区を指定する方針らしい。
奈須りえ氏が何度も警鐘しているように、米国企業の要請に従った、この暴力的な規制緩和に特化した特区は、都市部や限定エリアだけにゲットーのように散在的に置かれるのもではない。
ゲットーとは元来ユダヤ教徒を強制隔離した一定の居住区をいうが、今では何らかの意図を持って、同じ仲間がある場所に排他的に集うようなエリアにも使われることがある。

普通は世間から特殊扱いされた人間が、逃亡不能な狭い場所に押し込められるイメージがあるが、この国家戦略特区はアンチ・ゲットーの考え方が底意にあり、ゲットー内の試行的な規制緩和のシミレーションが行われた場合、これを先行モデルとして、全国に展開することを最終目標としている。
グローバル資本の中核を成す、多国籍企業とアメリカ政府中核が一体化した人類のクズたちが対日戦略を練り、その結果としてTPPや国家戦略特区構想が出てきた。
国家戦略特区構想はすでに構想の段階すぎて、一気に本格稼働を始めている。

外国のクズたちが発想し国内の日本人のクズたちが実践に手を染めているので、この国家戦略特区構想の実現には徹底的な秘密主義を採り、国民の目からその実践様態を覆い隠している。
理由は、国民の生活や安全、社会の秩序を守るための諸規制を片っ端から取り外すことが最大の目的だからだ。

多国籍企業の投資を阻害要因なしに自由にやらせることが目的なのである。最もビジネスのしやすいエリアとは、最も外国企業が日本人の生活を犠牲にして儲けを得やすい環境にすることである。
だから、国民の生活権や安全、社会の秩序を維持するためのありとあらゆるものが外され、国民は塗炭の地獄に放り出される。
大企業や外資の独壇場と経済エリアは、一括展開法案により日本全土に適用されることになる。

これによる日本経済の破壊、日本全土の社会構造の破壊は、かつての大店法改正の比ではない。
竹中平蔵氏のように外国のエージェントに成り下がって国内で買弁作業を行う連中は、ドメスティック・アライズ(domestic allies=国内の同盟者)と呼ぶことができる。
池波正太郎原作の“鬼平犯科帳”に出てくる盗賊のための『引き込み役』である。
彼らは別名、亡国のコンプラドール(売国買弁屋)と言い換えても同じだ。

彼らの得意技は、米国コーポラティズムの意を受けた米国民間シンクタンクのCSIS(米戦略国際問題研究所)の指令に基づいて創り上げた政策をごまかすことに腐心する。
例えば今回のような国家戦略特区を実行する際、それがどういう経緯や目的を持って出来上がったのかをいっさい国民に知らせないことを最大の仕事としている。
加えて、そういう国民に加害を及ぼす政策を、政治学的にも経済学的にもあり得ない大嘘をついて国民をごまかすことに血道を上げている。
安倍政権の悪質な大嘘は、海外から投資を呼び込んで世界で最もビジネスをやりやすい環境を創ることは日本全体にもよい効果をもたらすというレトリックであろう。

日本人を雇用し、日本の企業と相互互恵方式で、日本全体の経済を賦活して行こうというように聞こえるが、ドチンピラが寄り集まって作ったようなヨタモノの海外資本が、日本や日本国益のために営利活動をやることは絶対にありえない。
リーマンショックを招来したような米国のペテン金融企業が登場するところは、戦火の焼け野原のような結果しか残さない。

この本質が暴露されないように、自民党や経団連、売国マスコミは国家戦略特区について語るとき、決まりきったようにトリクルダウン・セオリー一色でこの特区を語るのである。
曰く、企業を税制優遇し、彼らのために規制緩和すればエリアが活性化し、地域住民は素晴らしい恩恵に預かると臆面もなく大嘘を言う。
特区の思想が国民の生存権を破壊し、外国資本に優良資産が押さえられ、結局は日本の国富が海外移転して戻ってこないことになる。
その結果、国民生活は破綻し、生活苦による自殺者が激増、あちこちにおもらいさんが立ち尽くすことになる。

これを売国政策の当然の帰着という。
こういう現実を国民に知らせずに、イリュージョンによって甘い夢を見せる作業が彼らの最大の業務なのである。
騙しで金をもらったり、然るべき地位を得ている彼らはクズである。
最近彼らがやっている騙し、その明白な証左がパブリックコメントの無視である。

特定秘密保護法案でさえ、パブコメの召集期間が通常の一か月を半分の15日に縮めていたが、国家戦略特区はパブコメそのものが最初からない。
パブコメを行って、少しでも本質が暴かれ、それが世論化することを徹底的に回避しているのだ。
この事実に国家戦略特区が、どれほど危険かがよく表れている。
国民を徹底的に害する政策が大手を振って実行されている。
規制緩和を外した特区をモデル化して、一括法案で全国に一気に展開するという方針である。

特区とはごまかし用語であり、表現を変えればこれは昔から言われている“アリの一穴”のことに他ならない。
1989年の「日米構造協議」は、関岡英之氏が喝破したように、対等な協議とはかけ離れた完全に片務的な不平等条約である。
「日米構造協議という無難な名称は、おそらく外務省あたりが命名した間違った日本語であるが、関岡氏が言うように、米国側の認識はStructural Impediments Initiative 、つまり構造(Structural)、障壁 (Impediments)、イニシャティブ( Initiative)の 言葉から成り立っている。

協調的な協議とか会話ではないのである。

東京裁判史観が、明治から大東亜戦争終結までの時代を悪だと斬り捨てる愚劣極まりない善悪史観であると同様に、1989年のStructural Impediments Initiativeは、日本のStructural Impediments(構造的な障壁)といきなり決めつけているように、日本型の社会構造、社会慣習、商習慣などが先天的な“悪”だと決めつけているのである。
これは他国対する暴力そのものである。

自分たちよりもはるかに古い歴史時間による社会構造を持ち、それなりの精神構造を有した民族を、その存在自体が“悪”だと言っているのである。十字軍がイスラム教徒を悪魔だと言ったこととどこが違うのか。

ところが、「この日本の障壁構造排除のためのアメリカ主導による是正勧告」なる宗主国の暴力的な命令を、日本人のドメスティック・アライズやコンプラドールたちは嬉々として、対等な日米協議として偽装したのである。これは国政偽装(こくせいぎそう)の走りである。

こういう本質をごまかす言葉の使い方は、として、主に日米関係に多用されている。
前にも言ったが、こいつらが“国家戦略特区”で使う戦略(ストラテジー)という言葉は、何を対象とした戦略なのであろうか。
まちがいなく自国民を戦略の対象としている。

彼らは口舌の徒と化して、いかに国民を上手く騙すかにそのエネルギーを費やしている。特定秘密保全法と同じ思想なのである。
第二次安倍政権打ち立てる政策はことごとくがCSISの指令の基づいていて、その構図が見破られないように、国政偽装(こくせいぎそう)に血道をあげて創意工夫を凝らすのである。

いかに壮大で美しいペテン説明を組み立て、国民を煙に巻くかが、官僚、政治家、財界人、御用評論家たちの大切なお仕事なのである。
亡国の政府要人たちがやっていることは、経済の賦活化を大いに阻害している旧弊な諸規制を外すことで、あらゆる投資や企業参入が盛んになり、抵抗勢力が“足を引っ張らない”自由経済が賦活化されることによって全体の経済が活況を呈するという、悪質な欺瞞に基づいている。

この特区構想は先鋭的な新自由主義政策であり、アメリカ企業を招聘(しょうへい=招くこと、引き入れること)するための規制こわしなのである。
この政策を進める人々は、国民生活を破壊する大規制緩和を“治外法権エリアで”のびのびと邪魔されずに行いたい。
特区の変遷は、自民党の小泉政権で始まった「構造改革特区」から、民主党の菅政権の「総合特区」、そしてこの「国家戦略特区」である。

この国家戦略特区を今次臨時国会で、一括展開法案としてナタでざっくりと叩き斬るように全国一括展開するような極悪な法案が決まってしまえば、これは実質的なTPP体制に日本が変革されることになり、グローバル資本と日本の心失った国賊経済人たちの牙城となる。国体破壊である。

国家戦略特区を限定エリアのパイロット的なシュミレーションだと思っている人々はすぐに考えを変えたほうがいい。
これは日本を一気に国際金融資本の大略奪に導く大悪法である。
これを放置すると、アリの一穴からという諺があるように、日本守っていた諸々の有効な大防壁が一気に決壊する。
イメージとしては巨大ダムに仕掛けられた爆破物が爆発して、膨大な水を堰き止めている構造物が一気に決壊し、下流の里はあっという間に激流に押し流されて壊滅する。

国家戦略特区は経済の穏やかな試みなどではない。
日本経済が一気に崩壊しかねない“アリの一穴”なのである。

坪内隆彦