グローバル企業による世界支配の動きが強まっている。TPPや国家戦略特区もその手段である。
いまこそ、各国の主権、伝統文化の維持という視点から、あるべき国際経済秩序を考えるときではないか。その際極めて示唆に富むのが、新国際経済秩序(NIEO) である。もともとNIEOは、先進国とグローバル企業の横暴に憤った途上国が結束を強め、国際経済システムの変革を求めてまとめた考え方。
1974年4月、「資源と開発に関する国連特別総会」(第6回特別総会)が開催され、「新国際経済秩序樹立に関する宣言」(Declaration on the Establishment of a New International Economic Order)と行動計画が採択された。
「新国際経済秩序樹立に関する宣言」
1、諸国家の主権の平等、全人民の自決、力による領土獲得の不承認、領土の不可分および他国の内政不干渉
2、公平を基礎とする国際共同体の全構成国の広範な協力
3、全国家が共通の関心を持っている世界的な経済問題を解決するにあたって、全国家間の平等の基礎の上に立った完全かつ効果的な参加
4、いかなる国も自国の発展のために最も妥当と考えられる経済社会体制を採用し、その結果いかなる種類の差別に服することのない権利
5、全ての国の天然資源と全ての経済活動に対する完全な恒久主権、その天然資源を保護するため、いずれの国も国有化および所有権を自国民に移転する権利を含む天然資源に対する効果的な管理、および自国の状況にふさわしい手段により、その開発を行う権利
6、外国政府による植民地支配、およびアパルトヘイトのもとにある全ての国家、領域およびその人民は、それらの国家、領域および人民の天然資源およびその他の資源の搾取、枯渇および損傷の回復、さらに完全な補償を受ける権利
7、多国籍企業が受入れ国の完全な主権のもとに活動するため、受入れ国の国民経済の利益となる措置をとることによる多国籍企業活動の規制および監視
8、植民地的、人種主義的支配および外国の占領下にある発展途上国、領域の人民の解放実現と、その天然資源および経済活動の効果的な管理を行う権利
9、植民地支配、外国の占領、人種差別、アパルトヘイトのもとにある発展途上国、人民および領域に対する援助の拡大
10、発展途上国によって輸出されている原材料、一次産品、半製品の価格と、発展途上国によって輸入されている現材料、一次産品、資本財、その他諸設備の価格との間の公正かつ平等な関係の確立
11、全国際共同体による、いかなる政治的、軍事的条件もつかない発展途上国に対する積極的な援助の拡大
12、改革された国際通貨機構の主な目的の一つは、発展途上国の開発促進と発展途上国に対する資金の適切な流入であることの保証
13、合成代替品との競合に直面している天然資源の競争力の改善
14、可能な場合には、国際経済協力の全分野における発展途上国のための特恵的かつ非互恵的待遇
15、発展途上国に対して資金の移転のための有利な条件を与えることの保証
16、発展途上国の経済にとってふさわしい形態と手続きによって、途上国の利益となるような技術移転と土着の技術の創出のいずれをも促進するため、途上国に近代的な科学、技術の成果に対するアクセスを与えること
17、あらゆる国が食料品を含む天然資源の乱用をやめることの必要性
18、発展途上国にとって、開発のためにその全資源を集中させることの必要性
19、主として特恵的なベースに基づく個別的、集団的活動を通じての発展途上国の相互的な経済上、貿易上、財政上および技術上の協力の強化
20、生産国連合が、国際協力のワクの中で、その目的を追求しつつ、中でも世界経済の持続的な成長と発展途上国の開発促進という目的に沿って、同連合の果たす役割の助長
「新国際経済秩序樹立に関する行動計画」
1、発展途上国から輸出される一次産品の交易条件が持続的に悪化する傾向を逆転させるため、先進国から輸入される工業製品との価格リンク制を含む総合的計画を推進する
2、発展途上国の債務負担を軽減するための緊急措置を講じる
3、インフレや為替レートの変更によって、発展途上国が不利な影響を受けるのを防止するため、国際通貨金融機関の決定過程に途上国を参加させる
4、多国籍企業の活動を規制するための国際的行動規範をつくる
5、発展途上国における一般的な必要性および条件に見合った技術移転に関する国際的行動規範をつくる
6、発展途上国間の協力促進と地域的な経済統合の推進および強化
7、国際経済協力面における国際システムの役割を強化する
(奥野保男『非同盟─新しい世界への展望』泰流社、1980年、193~197頁)。