東洋の宗教的価値を称揚した岡倉天心は、慈悲・寛容の精神とともに調和の精神を重視した。そんな天心は、神道・日本精神についてどう語っていたのか。
天心の著作の中の神道・日本精神を紹介しておきたい。まず、『東洋の理想』からである(翻訳は村岡博訳『東邦の理想』 による)。
1
「歴史の曙光と共に大和民族は、戰に勇猛に、平和の文藝に温雅に、天孫降臨と印度神話の傳説を吹き込まれてゐて、詩歌を愛好し、婦人に對して非常な敬虔の念を懷いてゐる、こぢんまりした民族として現れてゐる」
32頁
2
「印度のトーラン[鳥居に似た佛寺の儀式用門]を多分に想起させる鳥居や玉垣のある清淨無垢な祖先崇拜の神聖な社である伊勢の大廟及び出雲の大社はその原型の儘に二十年毎に若さを新たにして、簡素な調和美しく、太古の姿をその儘に保存せられてゐる」
34頁
3
「我が民族的誇と有機的統一體といふ盤石は、亞細亞文明の二大極地より打寄する強大な波涛を物ともせず千古搖ぎなきものである。國民精神は未だ甞て壓倒せられたることなく、模倣が自由な創作力に取つて代つたことも決してなかつたのである。我々の蒙つた影響が如何に強大なものであつても、常に之を受入れて再び適用するに十分有り餘る程の精氣を備えてゐた」
35頁 続きを読む 岡倉天心の日本精神① 『東洋の理想』 →
持続するタゴールへの関心
詩人としてのタゴールのみならず、思想家としてのタゴールについての関心は、世界的に持続している。1941年8月にタゴールが死去してから、すでに60年の歳月が経っているが、このインドを代表する思想家に学ぼうという態度は衰えてはいない。
アジア人として初めてノーベル文学賞を受賞してまもなくの1916年にタゴールは初来日しているが、その前後には多数の関連書が刊行されている。戦後は、高良とみ、山室静らの詩集の翻訳、森本達雄先生、我妻和男先生、奈良毅先生らの意欲的な研究が展開されてきたほか、なお幾多の学者・研究者の手によって研究が続行されている。 続きを読む タゴール関連文献 →
ギタンジャリから
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[英文]
The same stream of life that runs through my veins night and day runs through the world and dances in rhythmic measures.
It is the same life that shoots in joy through the dust of the earth in numberless blades of grass and breaks into tumultuous waves of leaves and flowers.
It is the same life that is rocked in the ocean-cradle of birth and of death, in ebb and in flow.
I feel my limbs are made glorious by the touch of this world of life. And my pride is from the life-throb of ages dancing in my blood this moment. 続きを読む ギタンジャリから─タゴールの詩 →
藤原岩市は、『留魂録』 (振学出版、1986年)で、次のように書いている。
「日露戦争の直前、明治の大先覚者岡倉天心は東洋の真実を究めんとしてインドに渡っている。マドラスでヴィベカナンダという聖者に遇い、彼に導かれて、ノーベル賞の詩聖タゴール(アジアで最初の受賞者)と相識り、詩聖の宅に寄偶、東洋文明の真髄を語り合い、肝胆相照らしている。津波のように次々と押し寄せる回教徒やキリスト教徒の侵略破壊と物質本位、商業主義の搾取と圧制によって、数千年前に発祥し、燦然とインドと中国に開き輝いた東洋文明とそれが産んだ真善美の宗教と道義の文化と芸術は、徹底的に破壊され、瓦礫の遺跡と化し果てたことを嘆いている。天心はインドの青年に檄して、東洋精神に目覚め、隷属を脱却して東洋文化を振興せんことを激励している。
天心とタゴールはインドと中国に発祥した文化が幸いに日本に伝わり、日本伝承の文化に融合し、開花して信託されており、これをインドを初めアジアの国々に還元止揚して東洋精神を恢興しようと誓い合っている。その直後に日露戦争の大勝を見てインドを初めアジア隷属民衆は狂喜したのである。天心は弟子の横山大観、菱田春草をもインドに派遣し、彼の志を探究させている。
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書籍
著者
書名
出版社
出版年
田崎仁義著
社會史經濟史遺穂
田崎仁義
1972年
田崎仁義著
一般經濟史 ; 1
文雅堂書店
1954年
田崎仁義著
孔子と王道の政治經濟
三省堂
1944年
田崎仁義著
皇道原理と絶對臣道
甲文堂書店
1943年
田崎仁義著
皇道國體及び皇道原理
神祇院教務局指導課
1942年 続きを読む 田崎仁義関連文献 →
宋学によるアジア思想統一の歴史
近年、アジアの多様性を強調することによって「アジアは一つではない」と説いたり、日本文化の独自性を強調することによって「日本はアジアではない」と説いたりする傾向が目につく。こうした中で、大川周明が「大東亜圏の内容及び範囲」(『大東亜秩序建設』第二篇、昭和18年6月、同様の主張が『新東洋精神』昭和20年4月でも繰り返されている)や、「アジア及びアジア人の道」(『復興アジア論叢』昭和19年6月)で試みたアジア統一論の意義を、再評価する必要がある。
彼は、「大東亜圏の内容及び範囲」で、アジア各地で地方的色彩が豊かであることを認めた上で、「亜細亜文化の此の濃厚なる地方色と、亜細亜諸国の現前の分裂状態とに心奪われ、その表面の千差万別にのみ嘱目して、日本の学者のうちには東洋又は東洋文化の存在を否定する者がある」と指摘する。 続きを読む 大川周明のアジア統一論 →
マハティール首相の発案
自然環境を活かした観光、「エコ・ツーリズム」を推進するマレーシアならではのレストランが、ランカウイにはある。マングローブの中に存在するタイ料理レストラン「バーンタイ」(Barn Thai)である。
熱帯・亜熱帯地域で、海水と淡水の交じり合うエリアを汽水域という。この汽水域に広く分布するヒルギ種やハマザクロなどの植物が、マングローブである。そこは魚やエビ・カニ、水鳥や小動物の豊かな生息域となっており、地球の生態系を維持する上で重要な役割を果している。またマングローブの森は、台風や洪水などから人々を守る防波堤の役割も果している。 続きを読む マングローブの中のレストラン バーン・タイ →
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『維新と興亜』編集長・坪内隆彦の「維新と興亜」実践へのノート