「労働者派遣法」カテゴリーアーカイブ

「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の暴挙


小泉・竹中の新自由主義路線は、労働分野にも強引に持ち込まれ、格差の拡大に拍車をかけ、わが国の社稷を破壊していった。この流れに終止符を打ったのが、2009年の政権交代であった。同年9月9日、民主党、社会党、国民新党の連立与党は、次のように合意した。「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。これらは、小泉時代の新自由主義を正し、大御宝である労働者を守るための当然の規制である。
三党合意に基づいて、2010年4月には労働者派遣法改正案が提出されたが、成立しないまま時間だけが過ぎていった。この間、改正案成立を強く主張していた社民党が連立政権を離脱した。
そして、2011年11月に異常事態が起こったのだ。驚くことに、民主党は、自民党、公明党との間で「製造業派遣の原則禁止」を削除した改正案に合意し、法案を骨抜きにしてしまった。民主党に対する人材ビジネス業界からの働きかけがあったのか。
そして、2013年8月20日に、厚生労働省の有識者研究会「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が、とんでもない報告書をまとめた。座長を務めているのは、鎌田耕一東洋大学法学部教授。
そこには、「企業が一つの業務に派遣労働者を使用できる期間を最長3年に制限する現行ルールを撤廃し、労働組合の同意を条件に人を入れ替えれば派遣を使い続けられるようにすべきだ」と謳われている。
安倍政権は、社稷を破壊する小泉時代の新自由主義路線に戻ろうというのか。

「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告書(2013年8月20日)

佐々木実「竹中平蔵氏の正体」英訳

 以下は、『月刊日本』2013年7月号に掲載された佐々木実氏のインタビュー記事「竹中平蔵氏の正体」の全文英訳です。

A True Picture of Heizo Takenaka

 Minoru Sasaki, journalist

Heizo Takenaka as Seeker of Regulatory Reform in the Field of Labor

NIPPON: In your book Shijo to kenryoku [Markets and Power] (Kodansha), you focus on depicting the real Heizo Takenaka. The book is full of suggestions for people who wonder just how it was that neoliberalism came to be introduced to Japan.

SASAKI: Takenaka said at the first meeting of the Industrial Competitiveness Council (ICC) on January 23, 2013, that “there is no magic wand for growth strategy; regulatory reform that gives corporations freedom and makes them more muscular is the first element of growth strategy.” The following day, Prime Minister Shinzo Abe proclaimed the necessity of regulatory reform using a manner of speaking that followed Takenaka’s statement almost to the letter. It was a scene that was symbolic of the closeness between Prime Minister Abe and Takenaka.

Takenaka had played a major role during the years of the Koizumi administrations. He was subsequently the subject of various criticisms, and during the years of the Democratic Party of Japan administration it seemed for a moment that he might have become a has-been. However, he survived, was picked up by Prime Minister Abe, and is now the leading neoliberal ideologist.

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安倍政権で高まる「首切り自由化」論議

本来「大御宝」であるはずの労働者を、まるで自由に使い捨てできる道具にしようとする論議が活発になってきている。小泉政権時代に労働分野への新自由主義導入が加速したが、再び安倍政権はそれを再現しようとしているのか。
特に問題なのは、社員の首切り自由化論議だ。これは、一君万民を理想とする国体を踏みにじる暴挙ではないのか。以下、『愛媛新聞』社説(2013年03月19日)を紹介する。

解雇規制の緩和  「使い捨て論理」容認できない
金さえ払えば正社員を簡単に解雇できる―そんな規制緩和の議論が始まった。
安倍晋三首相が設置した産業競争力会議で、業績悪化など「合理的な理由」がなければ正社員を解雇できないと定めた労働契約法について、民間議員が「解雇しやすいルール」への変更を提言した。 続きを読む 安倍政権で高まる「首切り自由化」論議

日本維新の会は「小泉・竹中路線(新自由主義)の全面展開」だ!


日本維新の会「骨太 2013-2016」(平成24年11月29日)は、「経済・財政を賢く強くする」の中で、基本方針として次のような項目を並べている。

・公共工事を拡大するのでなく、日本の競争力を高める徹底した競争政策を実施する
・政府・自治体の予算事業を徹底して民間に開放・新規参入を促す
・保育の成長産業化
・医療・福祉の成長産業化
・自由貿易圏を拡大する=TPP交渉参加
★労働市場を流動化させる
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「大御宝」の生活を破壊する労働分野の新自由主義①─「政商とその御用学者」 vs 厚生労働省

 小泉・竹中の新自由主義路線は、「平成の政商」と呼ばれる宮内義彦氏が旗を振り、労働分野にも強引に持ち込まれていった。この流れに終止符を打ったのが、2009年の政権交代であった。同年9月9日、民主党、社会党、国民新党の連立与党は、次のように合意した。
「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。
だが、ここに来て政商たちは新自由主義路線の本格的復活を目論んでいるように見える。2012年1月、橋下徹氏は宮内義彦氏やソフトバンクの孫正義社長らと会談したという。また、人材派遣パソナの南部靖之社長は橋下氏が大阪府知事選に出馬した際に応援したという(『週刊ポスト』2012年9月7日号)。
橋下氏の「維新八策」には、「雇用政策」として次のように書かれている。
【理念、基本方針】
・民民、官民人材流動化の強化
・徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)
・ニーズのない雇用を税で無理やり創出しない
・社会保障のバウチャー化を通じた新規事業・雇用の創出(再掲)
・国内サービス産業の拡大(=ボリュームゾーンの雇用拡大)
・正規雇用、非正規雇用の格差是正(=同一労働同一賃金の実現)
・グローバル人材の育成
・外国人人材、女性労働力(→保育政策の充実へ)の活用

橋下氏の登場は小泉路線の再来と期待されているのか。
労働分野における新自由主義路線(効率・競争万能)をめぐる路線対立を、政党間の対立として捉えるべきではない。規制改革会議などを通じて政商たちは常に国の政策を動かそうとしてきたのだ。労働者派遣法を骨抜きにした民主党の変節もまた、そうした視点からとらえると判りやすい。
2006年9月26日の小泉内閣総辞職以来、一部政商による労働法制改悪の流れは転換しつつあった。同年12月13日には、自民党「雇用・生活調査会」の初会合が開かれた。これに関して、後藤田正純衆議院議員は、『週刊エコノミスト』(2007年1月2・9日迎春合併号)で「これまで、労働法制は規制緩和の一点張りだったが、これからは党が責任を持って、規律ある労働市場の創設を働きかけていく」と述べていた。
法政大学教授の五十嵐仁氏は『労働再規制』(ちくま新書)において、自民党「雇用・生活調査会」発足に象徴される動きを、「政の逆襲」の始まりと表現し、さらに「官の逆襲」として厚生労働省の動きについて分析している。 続きを読む 「大御宝」の生活を破壊する労働分野の新自由主義①─「政商とその御用学者」 vs 厚生労働省

派遣法を「許しがたい悪法」と糾弾した副島隆彦氏

労働分野における新自由主義の導入は、格差拡大のみならず、日本社会崩壊につながる重大な問題をはらんでいる。
小泉政権以来の派遣労働自由化の流れは、2009年の政権交代によって、ようやく変わるかに見えた。同年9月9日、民主党、社会党、国民新党の連立与党が、次のように合意したからだ。

「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。

ところが、この合意に基づいて提出された派遣法改正案が、いま骨抜きにされようとしている。以下、副島隆彦氏のブログから引用する(2009年8月1日、ルビは割愛)。
《労働者派遣法は、許しがたい悪法であった。以下でその成立の経緯は、概略説明する。
企業が、正社員を雇う必要がなくして、非正規雇用の、アルバイト労働者ばかりの会社にしていい、と、小泉政権が、音頭を取って、労働法を、どんどんなし崩しで改悪していった。
そのために卑しい企業経営者たちが、調子に乗って、自分の従業員を、徹底的に痛めつけるために、どんどん非正規雇用、派遣社員にしていった。「企業経営は甘くはないのだ。正社員なんか、そんなに抱えられない。人件費がかかりすぎて利益が出ない 」という、間違った考えで会社経営をやる者たちが、世の中の前面に躍り出た。
小泉政権の中の、各種の審議会で、「労働(力)市場の流動化」を推進して、「活力ある企業は、高すぎる労働賃金を見直す」というスローガンの下で、おかしなことをやりつくした。
ジ・アールかの奥谷禮子や、ICU(アイ・シー・ユー、国際基督教大学、実質は日本ロックフェラー大学)教授の八代某や、その他、多くの、「労働市場の流動化」の旗振りをやった、人間たちを、今こそ、糾弾しなければならない。  続きを読む 派遣法を「許しがたい悪法」と糾弾した副島隆彦氏

「骨抜き派遣法改正案」=小泉・竹中路線への回帰

厚生労働委員会(平成23年12月7日)の会議録

出席委員
委員長 池田 元久君
理事 岡本 充功君 理事 中根 康浩君
理事 長妻  昭君 理事 柚木 道義君
理事 和田 隆志君 理事 加藤 勝信君
理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君
石森 久嗣君    石山 敬貴君
稲富 修二君    大西 健介君
工藤 仁美君    斉藤  進君
白石 洋一君    田中美絵子君
竹田 光明君    玉木 朝子君
長尾  敬君    仁木 博文君
橋本  勉君    初鹿 明博君
樋口 俊一君    福田衣里子君
藤田 一枝君    牧  義夫君
三宅 雪子君    水野 智彦君
宮崎 岳志君    山口 和之君
山崎 摩耶君    吉田 統彦君
あべ 俊子君    鴨下 一郎君
菅原 一秀君    棚橋 泰文君
谷畑  孝君    永岡 桂子君
長勢 甚遠君    松浪 健太君
松本  純君    坂口  力君
高橋千鶴子君    阿部 知子君
柿澤 未途君

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厚生労働大臣       小宮山洋子君
厚生労働副大臣      牧  義夫君
厚生労働大臣政務官    藤田 一枝君
厚生労働大臣政務官    津田弥太郎君
会計検査院事務総局第二局長            川滝  豊君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       今別府敏雄君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  生田 正之君
参考人
(労働政策審議会会長)  諏訪 康雄君
厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

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○池田委員長 これより会議を開きます。 続きを読む 「骨抜き派遣法改正案」=小泉・竹中路線への回帰

民主党の裏切り─労働者派遣法改正案を骨抜きに

宮内義彦氏と人材業界トップが推進した労働分野の規制改革
労働分野の規制改革は、新自由主義政策を推進する小泉政権下で一気に加速されたが、その際そのアクセルを踏んだのが、オリックス代表取締役会長兼グループCEOの宮内義彦氏を議長とする総合規制改革会議である。
問題は、労働分野の規制改革が、関係業界の利益を拡大するために進められてきたことである。驚くことに、総合規制改革会議の委員には派遣会社など人材関連企業のトップが三人入っていた。株式会社ザ・アール代表取締役社長の奥谷禮子氏、株式会社リクルート代表取締役社長の河野栄子氏、株式会社イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをり氏である。
総合規制改革会議の人材(労働)ワーキンググループ主査を務めたのは、慶應義塾大学商学部教授の清家篤氏である。
総合規制改革会議は、平成13年7月24日に発表した「重点6分野に関する中間とりまとめ」の中で、次のように主張していた。 続きを読む 民主党の裏切り─労働者派遣法改正案を骨抜きに