アメリカは自主核武装阻止へ動くか─エネルギー基本計画で現行施策維持

 毎日新聞の報道で、政府が近く閣議決定するエネルギー基本計画で、プルトニウムの増殖と放射性廃棄物の減容化を目指す現行の施策を維持する案をまとめたことが、平成26年2月21日に分かった。
 アメリカはどう反応するだろうか。日本の自主核武装阻止のために圧力を強めるだろうか。平成26年1月27日のノート「安倍政権は、自主核武装の選択肢を放棄するのか」で書いた通り、アメリカが日本政府に対し、冷戦時代にアメリカなどが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが、共同通信の報道で1月26日に判明した。これは、アメリカの対日政策の転換である。藤野光太郎氏は、「PRESIDENT Online」(2014年2月20日)で次のように指摘している。
 〈これまで米側は日本側の「表向きは原発、裏は核兵器準備」という擬装を黙認してきた。だが、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を謳って米国から独立した軍備増強と右傾化に邁進するのであれば、米国としては日米関係を見直すことになる、というのが今回の通告であろう。もはや「偽装」は“公然の秘密”であり、米側は公認できないぞ、ということだ〉
 安倍政権は、アメリカからの圧力に屈することなく、自主核武装の選択肢を維持することができるだろうか。

今岡十一郎の「ツラン・アジアの道義的文化圏建設」構想

 戦前の興亜思想台頭期には、「トゥラン主義」が盛んに提唱されていたが、戦後は封印されてしまった。コトバンクは「トゥラン主義」を次のように定義している。
 「トルコ・ナショナリズムの一潮流。トゥランとは、ユーラシア大陸に広がるトルコ系諸民族の総称であり、トゥラン主義は、それら諸民族の一体性を追求しようとする立場である。そこでは、一体たるべきものの中に、マジャール、フィン、モンゴル、ツングース等、広義のウラル・アルタイ系諸言語を話す人々をも含めようとする場合もあり、トゥラン概念は大きな振幅をもっている。ツァーリズム支配を脱する目的で、19世紀後半、ロシア治下のトルコ系住民の間に生まれたトゥラン主義は、〈青年トルコ〉革命後、オスマン帝国内にもちこまれた」
 昭和17年に今岡十一郎が著した『ツラン民族圏』は、結論部分で次のように指摘している。 「……元来、ヨーロッパはアジアの一半島に過ぎない。民族的にも、精神的にも、フジヤマからカールパート山脈までの間、すなはち、ユーラシアを貫く『ツランは一体である』のである。このユーラシア大陸の黒土帯をつらぬく一つの血、一つの大陸における枢軸国家群の中枢こそ、ツラン民族の郷土であり、内陸アジアであり、乾燥アジアであり、中央アジアであり、トルキスタンであるのである。… 続きを読む 今岡十一郎の「ツラン・アジアの道義的文化圏建設」構想

蒲生君平の師鈴木石橋の私塾「麗澤之舎」─蔵書の『保建大記』と『靖献遺言』

『月刊日本』平成26年3月号掲載の「明日のサムライたちへ 山陵志② 君平と藤田幽谷を結んだ『保建大記』」の取材のため、2月上旬に栃木県鹿沼市を訪れた。 鹿沼は、蒲生君平と後期水戸学の祖藤田幽谷の出会いを用意した、君平の師鈴木石橋の出身地である。石橋は二十四歳のときに江戸に出て昌平坂で学び、同校の講壇にも上るほどその将来を嘱望されていたが、天明元(一七八一)年に郷里に戻り、私塾「麗澤之舎」を開いて地元の子弟を教育した。彼は天明(一七八一~一七八九年)の大飢饉のときには、私財を投じて窮民の救済に全力で取り組んでいる。 鈴木家に伝わった「麗澤之舎」の蔵書五千余冊は、鹿沼市民文化センターにある同市教育委員会文化課で管理されることとなり、現在その移行作業中である。同課の協力を頂き、「麗澤之舎」の栗山潜鋒『保建大記』と浅見絅斎『靖献遺言』を閲覧させていただいた。 『保建大記』には、各頁の上部に詳細な書き込みがあり、石橋が講義に活用した跡が窺われる。

麗澤之舎蔵書 『保建大記』と『靖献遺言』

『月刊日本』平成26年3月号掲載の「明日のサムライたちへ 山陵志② 君平と藤田幽谷を結んだ『保建大記』」の取材のため、2月上旬に栃木県鹿沼市を訪れた。
鹿沼は、蒲生君平と後期水戸学の祖藤田幽谷の出会いを用意した、君平の師鈴木石橋の出身地である。石橋は二十四歳のときに江戸に出て昌平坂で学び、同校の講壇にも上るほどその将来を嘱望されていたが、天明元(一七八一)年に郷里に戻り、私塾「麗澤之舎」を開いて地元の子弟を教育した。彼は天明(一七八一~一七八九年)の大飢饉のときには、私財を投じて窮民の救済に全力で取り組んでいる。
鈴木家に伝わった「麗澤之舎」の蔵書五千余冊は、鹿沼市民文化センターにある同市教育委員会文化課で管理されることとなり、現在その移行作業中である。同課の協力を頂き、「麗澤之舎」の栗山潜鋒『保建大記』と浅見絅斎『靖献遺言』を閲覧させていただいた。
『保建大記』には、各頁の上部に詳細な書き込みがあり、石橋が講義に活用した跡が窺われる。

アショーカ王─友愛の精神による統治

「正義の法」による勝利

 寛容の精神を備えた指導者アショーカ王の精神は、インドの平和主義の理想として継承されてきた。
 例えば、インディラ・ガンジーは、著書『私の真実』において、次のように述べている。
 「私たちの目標は、力の均衡を権力のためにではなく平和のために役立てることなのです。友愛の精神は、陰謀を挫折させる力です。印度の歴史を見れば、仏陀の、またアショーカ王の時代から、マハトマ・ガンジーの、および、ジャワハルラル・ネルーの時代まで、これこそが常にわが国の政策であったことがわかります」  続きを読む アショーカ王─友愛の精神による統治

ムクリズ・ウォッチ

 現在マレーシアのクダ州首相を務めるムクリズ(Mukhriz)氏は、マハティール前首相が下院議員に初当選した1964年に三男として生まれた。
マハティール元首相がルック・イースト政策を打ち出した1981年に、同政策を実践する形でムクリズ氏は日本に留学している。上智大学で経営管理を専攻、1987年まで在籍していた。1989年にはボストン大学で国際マーケティングの学位を取得、東京銀行(現東京三菱銀行)のクアラルンプール支店勤務を経て、実業家として独立した。Opcom Holding会長を務めてきた。 続きを読む ムクリズ・ウォッチ

『夜明け前』と平田国学

国学派ネットワークの情報拠点・中津川
 明治維新に至る尊皇攘夷運動における国学の影響を考える上で、島崎藤村晩年の大作『夜明け前』は重要な資料となる。二部からなる同書は、ペリー来航の嘉永六(一八五三)年前後から明治十九(一八八六)年に至る激動の時代を、中山道の宿場町であった信州木曾谷の馬籠宿(現在の岐阜県中津川市馬篭)を舞台に、主人公青山半蔵の生涯を描いた作品である。半蔵のモデルとなったのが、藤村の父正樹だ。
 馬籠で本陣・問屋・庄屋を代々の家業としてきた家に生まれ、その家業を継いだ半蔵は、平田派の国学に傾倒して王政復古を願った。しかし、明治維新は彼が描いたものとは別のものとなっていく。絶望した半蔵はついに狂い、座敷牢に生涯を終えた。 続きを読む 『夜明け前』と平田国学

皇紀2674年紀元節奉祝式典

平成25年2月11日、皇紀2674年紀元節奉祝式典に参加した。厳かな雰囲気の中で執り行われた紀元節祭に続いて、國學院大学准教授の菅浩二先生による記念講演「建国をしのぶ」を拝聴、大変勉強になった。採択された決議に基づいて、政治にはたらきかけていく必要を痛感する。

皇紀2674年紀元節奉祝式典

平成25年2月11日、皇紀2674年紀元節奉祝式典に参加した。厳かな雰囲気の中で執り行われた紀元節祭に続いて、國學院大学准教授の菅浩二先生による記念講演「建国をしのぶ」を拝聴、大変勉強になった。
採択された決議に基づいて、政治にはたらきかけていく必要を痛感する。

肇国の理想を現代において実現しようとした先駆者

 筆者が『維新と興亜に駆けた日本人』で取り上げた人物は、(ちょう)(こく)の理想を現代において実現しようとした先駆者である。彼らは、幕末から明治・大正期を中心に活躍した。わが国が西洋列強に対峙したこの時代、肇国の理想に添って生きるとは、維新の続行・貫徹と興亜に尽くすことを意味したのではないか。彼らは欧米型の外交路線に抗い、藩閥支配、有司専制に対して民権を唱え、国権、自主独立の立場から列強との不平等条約に異を唱えた。興亜の立場から列強の帝国主義路線とは異なるアジア合邦を模索する一方、列強の植民地支配から脱しようとするアジアの民族独立運動を支援した。より具体的に言えば、朝鮮開化派のリーダー金玉均、辛亥革命を成功させた孫文、インドの志士ビハリ・ボースらを支援した。
 彼らの中には、国体に合致した経済のあり方を模索し、大化の改新以来の王土王民論・奉還論によって資本主義の克服を目指した者も少なくなかった。 続きを読む 肇国の理想を現代において実現しようとした先駆者

近藤啓吾先生に見る崎門の学風①

 山崎闇斎─浅見絅斎─若林強斎と伝わる崎門学正統派の直系である近藤啓吾先生は、松本丘氏の『尚仁親王と栗山潜鋒』を評して次のように書いている。
 〈余は今日の学風、みな考証考古の精密を求め、歴史を作り上げた「人」の心への沈潜をせず、その上、新しき資料の発見や新しき解釈の樹立のみを競ひ、古人の人間たりしことを忘却してゐる風潮を慨してゐたが、松本氏はこの世風を追はず、そのどの論考を見ても、その対象としてゐる先人の心に沈潜し、それによつて得たところを率直に筆せんとしてゐる〉(『紹宇文稿』165頁)
 ここには崎門の学風を明確に表されている。

TPPは憲法違反?愛知県弁護士会が意見書

 TPPに関する愛知県弁護士会の意見書が2014年2月7日に公表された。これまで、TPPに関しては、長野県弁護士会、栃木県弁護士会の会長声明があったが、弁護士会としての意見書はこれが初めて。
 意見書は、「ISDS条項は、憲法76条1項に違反する疑いが強いとともに、国会の立法活動をも大きく制約する可能性が高く、国民主権原理を侵害するおそれがあるとともに、基本的人権尊重主義に深刻な混乱をもたらすものである」と主張している。