【書評】「キリスト教原理主義のアメリカ」 坪内隆彦著『産経新聞』1997年4月20日付朝刊、14ページ

 アメリカが先端工業国、大量消費国のよそおいの一方で、強固な宗教国家であることは、つとに多くの識者の指摘するところだ。
 本書は、キリスト教原理主義といわれるものの動きを、主として政治とのかかわりの中で、具体的に跡づけてゆく。キリスト教原理主義とはキリスト教の一つの宗派ではない。南部バプテスト(洗礼派)にも、エヴァンジェリカル(福音派)、ペンテコスタルにも宗派横断的に見られる信仰態度(運動)で、一言でいうなら、聖書の教えを文言どおりに信じ込んで、たとえば神の天地創造をそのまま疑おうとせず、人間はサルから進化してきたという進化論を決して認めまいとする態度である。
 フリーセックスやサブカルチャー運動の六〇年代リベラリズムへの反動として現れたということもあって、家族の重視などアメリカ的諸価値の復権、エリート主義に対するポピュリズム(大衆主義)、政治的には保守、白人中心主義に傾きやすい一種のレイシズム(人種主義)……と位置づけられる彼らは「宗教右翼」とも呼ばれる。その動きを無視して、現代アメリカ政治は語れないといわれるほどだ。特にレーガン政権は、彼らを取り込み、彼らの主張とパラレルだったといわれる。
 その後、さしもの原理主義も下火になったかに見えたが、じつはソフト路線への転換にすぎず、大衆への影響力はむしろ増しているというのが著者の見方で、そのことを「キリスト教徒連合」などの動きに即しながら論証する。「リベラル対保守、民主党対共和党」などとは異なる新たな視線が、アメリカ政治を分析するのに必要となってきたようだ。
 (亜紀書房・一六〇〇円)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください